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仙台育英と慶応の決勝対決はあるか? 東日本勢優勢の夏の甲子園準決勝を占う

森本栄浩毎日放送アナウンサー
甲子園は4強が決まり、慶応と仙台育英も勝ち進んだ。決勝で対決はあるか(筆者撮影)

 夏の甲子園は大詰めを迎え、4強が決まった。内訳は、東北1校、関東2校、九州1校で、東日本勢が優勢だ。連覇を狙う仙台育英(宮城)は、花巻東(岩手)との東北対決を制し、慶応(神奈川)は沖縄尚学を逆転で破った。21日の準決勝は、仙台育英が神村学園(鹿児島)と、慶応は土浦日大(茨城)と当たり、23日の決勝進出を狙う。準決勝の展望は?

仙台育英-神村学園

右腕2枚が好調の仙台育英

 連覇を狙う仙台育英は、看板の投手陣の状態がハッキリし、ここから2試合をいかに乗り切るか、須江航監督(40)の腕の見せ所でもある。4試合中、3試合で先発した右腕の湯田統真(3年)は、花巻東戦で今大会の全投手最速の151キロをマークするなど絶好調で、安定感も際立っている。この試合は4回を1安打無失点の8奪三振。余力十分で後続にマウンドを譲った。昨夏、最も安定感があった高橋煌稀(3年)は、浦和学院(埼玉)との初戦で不安を露呈したが、履正社(大阪)との3回戦では復調し、本来の投球を見せた。左腕の仁田陽翔(3年)は制球難が克服されず、大事な場面での起用は難しい。花巻東戦は中盤で大差がついたため、高橋以外の投手をつないだが、初登板の左腕・武藤陽世(2年)以外は須江監督の期待に応えられなかった。ただ高橋が休養十分で残り試合に臨めるのは大きい。

必勝リレーを確立させた神村学園

 神村学園は打線が好調で、立命館宇治(京都)、市和歌山の近畿勢相手に2ケタ得点で圧勝。北海(南北海道)戦でも10得点し、強打の印象を受けるが、緊迫したおかやま山陽との準々決勝は、投手の頑張りが勝利を呼び込んだ。これで、エース右腕の松永優斗(3年)が先発し、左腕の黒木陽琉(くろぎ はる=3年)がロング救援する必勝パターンが確立したと言っていい。特に黒木はスライダーのキレが抜群で、4試合通算で16回1/3を投げて被安打6の19奪三振で防御率は驚異の0.55。投手陣の好投に応えるかのように、4試合のチーム失策わずか1つと堅守も見逃せない。攻撃陣では1番の今岡歩夢(3年=主将)が勢いをつけ、いずれも2年生の正林輝大岩下吏玖上川床勇希ら、中軸の左打者が勝負強さを発揮している。小田大介監督(40)は「粘り強く守れたのが、いい攻撃につながっている。黒木はずっとナイスピッチング」と、会心の試合が続いていることに手応えを感じているようだった。甲子園初出場だった18年前のセンバツで準優勝したが、夏はこれまで1勝が最高で、投打に大きな成長が見られる今大会は、一気に頂点を狙う。

中盤まで互角に渡り合いたい神村学園

 経験値で上回る仙台育英は、先手を取ると投手が楽になるので、今大会の打率.625で足も使える1番・橋本航河(3年)の出塁に期待。2本塁打で小技もうまい尾形樹人(3年)が調子を上げていて、鈴木拓斗(2年)は思い切りのいいスイングをする。神村学園は、先発が予想される松永の踏ん張りに期待し、互角の展開で黒木にバトンを渡したい。仙台育英投手陣は高橋が休養十分で、先発でも救援でも力を発揮するだろう。今大会は、お互いにビッグイニングが目立つだけに、ピンチを最少失点で切り抜けることも重要になってくる。

慶応-土浦日大

103年ぶりの快進撃に沸く慶応

 激戦の神奈川を勝ち抜き、春夏連続出場を果たした慶応は、本大会に入っても春とは見違えるほどの力強さを発揮している。エースの小宅雅己(2年)は球威が増し、打者の内角に思い切って投げ切れる。左腕の鈴木佳門(2年)も角度のある速球と大きな変化球のコンビネーションが冴えて、両者とも状態は良さそうだ。3回戦の広陵(広島)との大一番は、終盤に追いつかれたが耐え抜き、タイブレークに持ち込んで振り切った。右横手の松井喜一(3年)も、短いイニングなら計算できる。1番の丸田湊斗(3年)は出塁率が高く、5番の延末藍太(3年)が走者を置いて勝負強さを見せる。森林貴彦監督(50)は「成長させてもらっている。結果だけでなく、一瞬を味わいながら、いい顔をしてやりたい」と意欲満々だ。前身の慶応普通部が107年前の第2回大会で優勝し、4年後には準優勝した。世紀を跨いでの活躍には歴史の重みを感じるが、自由な髪形や「エンジョイベースボール」を標榜するなど、時代に合ったスタイルを構築し、老若男女問わず全国のファンから支持されている。

開幕戦をタイブレークで制し、勢いある土浦日大

 土浦日大は、開幕戦で上田西(長野)と大激戦を演じ、タイブレークの10回に6点を奪って、37年ぶりの勝利を挙げた。2回戦は、九州国際大付(福岡)に対し、3投手が完璧なリレーを見せ、3-0で快勝。一時、6点差をつけられた3回戦では、専大松戸(千葉)の投手陣から10点を奪い返して豪快に逆転勝ちするなど、乱戦でも強さを見せている。準々決勝も、6回の一挙5点で八戸学院光星(青森)を圧倒した。投手の起用に課題は残るが、今大会2本塁打の5番・松田陽斗(3年)ら打撃陣の援護が早く、簡単に主導権を渡さない。エース左腕の藤本士生(3年)は、チェンジアップでタイミングを外す技巧派。初戦以外は救援待機になっているが、先発が崩れて長い回を投げる試合もあった。藤本の投球が勝敗の大きなカギを握る。過去6回の甲子園でわずか2勝しかしていなかったが、今大会は投打の歯車がかみ合っての快進撃で、取手二(茨城)で夏の甲子園優勝経験のある小菅勲監督(56)は「全員でつかんだ勝利。心身ともにいい状態で戦えている」と、準決勝を前に手応えを口にした。

慶応の打線を抑えられるか土浦日大投手陣

 慶応は打線好調で、今大会屈指の好投手・沖縄尚学の東恩納蒼(3年)を6回に連打で攻略したように、対応力と集中力は大会随一。ここまで土浦日大は、エース・藤本の負担が大きくなっていて、小森勇凛(3年)、伊藤彩斗(3年)らがどれだけカバーできるか。小菅監督はこれまで同様、藤本を救援待機させることになるだろうが、そのタイミングが早くなると、土浦日大の苦戦は免れない。投手全員が九州国際大付戦のような快投を期待したい。

仙台育英と慶応はセンバツ初戦で激戦

 3回戦で有力校との大激戦を制した仙台育英と慶応は、センバツ初戦(2回戦)で当たり、タイブレークで仙台育英が勝った。準決勝での対戦はなく、今大会で当たるとすれば決勝しかない。

クーリングタイム後の波乱が勝敗を分けるか

 今大会は、5回終了後に取られる10分間のクリーリングタイムが終わった6回に波乱が多かった。これまでもグラウンド整備で5分程度の小休止はあったが、このルールでは、全員が一旦、ベンチの奥に下がって試合から離れるため、「新たな試合が始まる」と解釈、指導する監督もいた。慶応の森林監督は、5回までを第1試合ととらえ、「(0-2だった)第1試合は完敗。第2試合は勝とう」と言って送り出し、6回に6点を奪った。土浦日大の小菅監督も「後半の初回に気持ちが切り替わった」と、6回の大量5得点を振り返った。準決勝でも、クーリングタイムを境に、試合が大きく動くかもしれない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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