ノート(129) 初公判前の激震
~裁判編(2)
勾留171日目
公判に向けて
この日は金曜日であり、週明けの月曜日が初公判だということで、打ち合わせのため、午前の早い時間帯から弁護人の接見が立て続けにあった。
もっとも、第1回公判は検察・弁護双方の冒頭陳述やお互いが取調べを請求している供述調書などの朗読のほか、情状証人の証人尋問までであり、山場となる被告人質問はその3日後である第2回公判に行われることとなっていた。
そこで、主任弁護人とは、被告人質問における具体的なやり取りを細部にわたって詰めたほか、弁護側の弁論に何を盛り込むべきか検討した。
また、次に接見した弁護団長の弁護人からは、公判での基本的なスタンスなどについて、詳細なアドバイスがあった。一つは、初公判における冒頭手続の対応についてだ。
冒頭手続は、まず最初に裁判所が法廷に出頭している者に対してその氏名や生年月日、本籍、住居、職業を尋ね、起訴状の記載と照らし合わせたうえで、起訴されている被告人本人に間違いないか確認するという人定質問がある。
次に、検察官が起訴状のうち「公訴事実」と「罪名及び罰条」の欄を読み上げ、裁判所が被告人に黙秘権の告知をする。これを受け、被告人が罪状に関する認否などを述べることになるわけだが、もちろん黙秘をしても構わない。
傍聴席のマスコミが最初に注目するのは、罪状認否における被告人の発言内容、特に本人の口から謝罪の言葉が出るのかという点だ。報道で世間の印象も決まるから、弁護人と具体的な内容や文言を詰めておく必要がある。
この点、弁護人からは、シンプルに「事実はそのとおり間違いありません」とだけ答え、細かい点は被告人質問に委ねたほうがよいだろう、と助言された。
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