ノート(131) 拘置所から裁判所へ いよいよ裁判が始まる
~裁判編(4)
勾留174日目
初公判の始まり
この日は3月14日でホワイトデーだったが、チョコレート菓子が支給されるバレンタインデーと異なり、拘置所では特に何のイベントもなかった。
むしろ個人的には、いよいよ初公判ということで、前日の夜から静かな緊張感に包まれていた。現職検事時代に公判を担当していたときは何度となく裁判所まで足を運んだことがあったが、さすがに自らの裁判に被告人の立場で出廷するとなると、まったく趣が違った。
ただ、独房の窓越しに空を眺めると、午後から雨になりそうな曇天であり、幸先が悪そうに感じた。
「午前9時15分ころに出発するから、それまでに用意しておくように」
朝食後、刑務官からそう伝えられた。2時間近くの余裕があったことから、あらかじめ出廷用として準備していた黒タートルネックシャツ、黒上下のフォーマルスーツ、黒靴下という喪服姿に着替えたあと、独房で正座し、精神統一を図った。
出房のとき
そうするうち、時間になったのか、警備隊の職員3名が迎えにやってきた。僕の舎房を担当していた刑務官のほか、面接などの機会に何かと気遣いをしてくれていた幹部らの顔も見えた。
「裁判所に行こか」
鉄扉が開き、そう促されたことから、青色のサンダルを履いて独房を出た。結局、黒色の革靴を履くことが許されなかったからだ。一方、メガネは置いていくことにした。
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