〈希望の党〉仲間選びのハードルは排外主義的、表向きの公約では差別反対――問われる有権者
■日本に包摂しないというスタンス
公認候補に承諾を求める「政策協定書」に「外国人の地方参政権付与に反対」という項目があったことが、排外主義的な性格を露わにしたと指摘されていた希望の党が6日、衆院選の公約・政策集を発表した。
公約・政策集にはこれについての項目は盛り込まれなかった。批判を受けて取り下げたという見方もあるが、筆者はそうは思わない。現在の争点ではない象徴的なものであるだけに、あれはむしろ純粋に思想チェック、正しく踏み絵だったのだろうと思う。
これを踏まえると、いわゆる限定された差別に反対するのはやぶさかではないが、外国人(そしてとくにそれはおそらく永住外国人たる在日コリアンなどの過去の歴史的経緯のあるオールドカマー)には現在以上の権利は絶対に与えない、理念にかかげた「国民ファースト」である以上、日本に包摂はしない、というのが希望の党のスタンスなのだろう。
■希望の党そのものがわかりにくい踏み絵
「政策協定書」の「外国人地方参政権に反対」という項目は、この問題の利害関係者の両極(さしあたり永住外国人と排外主義的な層としておく)に対しては明確なメッセージとなった。ただそれはその両極の間にいる多くの国民、これにサインした公認候補も含む少なくない有権者にとっては、おそらくどうでもいいことなのだと思われたのではないか。今回、公約では人種も含めた「ダイバーシティ」をうたっているわけで、表向きには何の問題もない。
要は、「あれは仲間になってもらうためのハードルだったけど、国民には何の関係もないから。私たち差別には反対だし」と言っているようなものだ。思想チェックのネタとして使われた永住外国人だけでなく、公約を差し出された有権者をも愚弄するような行為だと思う(前者のひとりである筆者としては、レイシストに「私には在日の友だちもいる」と言われたときのような気持ちだ)。
だから、サインした人たちに続き、問われているのは「普通の有権者」だろう。今回の衆院選は結果として、「ダイバーシティ=多様性」が裏テーマとでもいうべき争点的なキーワードになった初めての選挙なのではないだろうか。今回、政策協定書にサインせず希望の党への踏み絵を踏まなかった民進党議員らによって生まれた立憲民主党も公約で、「人種や性などによる違いを尊重し、社会を彩る多様性こそが、その社会を豊かで、活力のあるものにするのです。多様性は、強さです。あらゆる差別に反対し、社会の分断を許しません」とうたっている(なお、与党自民党の公約にはそもそもこのような文言はない)。
こうしたなか、有権者にとっては希望の党そのものがわかりにくく難しい踏み絵になっているとも言える。投票日まであと2週間。選択する際には、いわば「外から見えない公約」として「政策協定書」が存在したことを、忘れないでいてほしい。