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寒さが厳しくなるとされる大寒だが、今年は大寒以降暖かい日が続く

饒村曜気象予報士
日本を覆う冬の移動性高気圧(1月20日15時)

大寒

 1月20日は暦の上では大寒です。

 この日から立春(2月4日頃、今年は2月3日)の前日までの間、一年中で最も寒い時期に入ります。

 1月6日頃の小寒から大寒をはさんで立春までの約30日間を「寒」といい、耐寒のためのいろいろな行事、例えば寒稽古が行われます。

 また、酒や味噌など、寒気を利用した食べ物を仕込むのに最もよい時期とされ、「寒仕込み」という言葉もあります。

 ただ、令和3年(2021年)の寒い期間は、いつもとチョット違っています。

 令和2から3年(2020から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、寒冬というより厳冬になっています。

 日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しているからで、これまで3回強い寒気が南下しています。

 1回目は12月14日頃から南下したもので、日本海側を中心に記録的な大雪となり、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で2000台以上の車が立ち往生しています。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気がおりてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となりました。

 3回目の強い寒気の南下は、1月7日から8日で、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側のみならず、普段は雪の少ない九州でも雪が降りました。

 特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

 そして、1月8日は、冬日(最低気温が0度未満)、真冬日(最高気温が0度未満)とも、今冬最多を観測しています(図1)。

図1 冬日と真冬日の観測地点数の推移
図1 冬日と真冬日の観測地点数の推移

 冬日は気温を観測している919地点のうち862地点(全体の94パーセント)、真冬日は509地点(55パーセント)にも達しました。

 4回目の強い寒気の南下は、大学入試の制度が変わって初めての大学入学共通テスト(第一日程)が行われた1月16日頃から南下してきたもので、北海道稚内市では、雪による悪天候のため、16日に予定した大学入学共通テストが中止(1月30日に再試験)となっています。

 大学入学共通テストの前身である「センター試験」、さらにその前身である「共通一次試験」を通して、初めて1日まるごと再試験となっています。

 「共通一次試験」が始まったのは、昭和54年(1979年)ですから、42年間で初めてのできごとです。

温かい大寒翌日以後

 4回目の強い寒気の南下も一段落し、大寒翌日の1月21日は、日本付近は大きな移動性高気圧に覆われました(タイトル画像参照)。

 この移動性高気圧の通過後、東シナ海に停滞前線が出現する見込みです(図2)。

図2 予想天気図(1月21日9時の予想)
図2 予想天気図(1月21日9時の予想)

 この停滞前線は、次第に東へ伸びてくる見込みです。

 そして、その後の週末には、日本の南海上を低気圧が発達しながら東進しそうです。

 このため、前線や低気圧によってほぼ全国的に雨が降りやすくなり、暖気が北上してきます(図3)。

図3 各地の天気予報(上は1月23日、下は1月24日の予報)
図3 各地の天気予報(上は1月23日、下は1月24日の予報)

 しばらくは、西高東低の冬型の気圧配置となって強い寒気が南下することはなさそうです。

 令和3年(2021年)の冬は、大寒までが寒く、大寒後は暖かい日が続きそうです。

 東京の最高気温と最低気温の推移をみると、1月16日の最高気温が突出して高いのですが、その直後から3回目の寒気南下によって最高気温や最低気温が低くなります(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温(1月21日から27日は気象庁、1月28日から2月5日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温(1月21日から27日は気象庁、1月28日から2月5日はウェザーマップの予報)

 ただ、気温が低くなったといっても、ほぼ平年値です。

 東京では、1回目、2回目、3回目の寒気南下のときには最低気温が氷点下となりましたが、4回目の寒気南下のときはギリギリ氷点下にはなりませんでした。

 そして、2月前半までの最高気温は、平年並みか平年より高い日が続く予報です。

 また、最低気温は平年より高い日が続く予報です。

 令和3年(2021年)の寒気の底は、大寒前の1月7日から8日(3回目の寒気南下)になりそうです。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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