柳楽優弥と「ガンニバル」は、世界に「Jドラマ」の風を吹かせることができる
日本の実写ドラマは、世界で高い評価を受けることができるのか。
そんな疑問に対して1つの方向性を示してくれているのが、今回ディズニープラスでシーズン2の配信が発表されたドラマ「ガンニバル」でしょう。
「ガンニバル」は、累計発行部数370万部を超える二宮正明氏のサスペンスコミックを、2022年の12月にディズニープラスが日本発のオリジナルシリーズとして実写ドラマ化したものです。
シーズン1も公開後から国内外で高い評価を受け、主演の柳楽優弥さんの「アジアエクセレンスアワード」受賞にもつながりました。
参考:「ガンニバル」柳楽優弥がアジアエクセレンスアワードを受賞
そのシーズン2の配信開始が、いよいよ2025年3月に決定しファンを中心に期待の声が高まっているようです。
世界中を席巻する韓国ドラマ
ここで改めて注目したいのは、世界における日本の実写ドラマの位置づけです。
昨今は、NetflixやAmazonプライム・ビデオも様々な日本の実写ドラマを制作するようになり、着実に世界からの注目度は高まり始めています。
一方で、その日本よりも先に世界に認められた韓国ドラマに比べると、まだその盛り上がりは小さいとも言えるでしょう。
イカゲームなどのヒットの影響で盛り上がった韓国ドラマブームは、あまりにその盛り上がりが大きかったため、逆に2024年はドラマの制作本数が半減するなど、韓国ドラマの市場崩壊とも報道されましたが、その世界における存在感はまだまだ日本ドラマを大きく上回っています。
参考:「韓国ドラマ」市場が崩壊寸前…! 制作本数が1年で半分以下に
象徴的なのは、今回「ガンニバル」シーズン2の配信日も発表された「Disney Content Showcase APAC 2024」というシンガポールで開催されたイベントにおいて発表された、ディズニーのアジア発のコンテンツの内訳です。
筆者もディズニーからご招待いただき、シンガポールの会場で発表を見守らせていただきましたが、やはり最も印象的だったのは、次々に発表される韓国ドラマと、その出演者の方々の多様さでした。
当日発表された作品の内、8作品が日本の作品、10作品が韓国の作品と、作品数自体はほぼ同数ではありましたが、韓国は10作品が全て実写ドラマだったのに対して、日本はアニメやバラエティ番組の発表が中心で、実は実写ドラマの発表は「ガンニバル」1作品のみだったのです。
「Disney Content Showcase APAC 2024」の最後の集合写真において、壇上の23人のうち、ほとんどは韓国ドラマの出演者や関係者で、日本人は3人だけだったというのが象徴的なシーンだったと言えます。
なにしろ、ディズニープラスでは韓国ドラマの「ムービング」が世界的ヒットを記録し、世界のローカルオリジナル作品で1位を獲得、10以上の賞を受賞するなど高い評価を受けたほか、昨年の米国外の地域で制作された独占配信作品のトップ15のうち9作品を韓国ドラマが占めているとのこと。
すでにディズニープラスにおいて、韓国ドラマは非常に重要な役割を果たし始めているのです。
「Jドラマ」の新しい時代が来ようとしている
ただ一方で、その日本唯一の実写ドラマである「ガンニバル」のインタビューにおいて心強い発言をしてくれたのが、主演を務める柳楽優弥さんでした。
司会者から「ファンの皆さまへのメッセージを」と投げかけられた柳楽優弥さんは、「ディズニープラスから、新たな『Jドラマ』の新しい時代が来ようとしている」「先陣切ってSHOGUNさんとかのパワーをもらったりしながら、『Jドラマ』を盛り上げていきたい」と宣言されたのです。
「Jドラマ」とは、日本ではあまり聞きなじみがないかもしれませんが、海外の日本ドラマファンが中心に使っている日本ドラマの呼称です。
柳楽優弥さんとしても、海外メディアが多く参加しているイベントということもあり、あえて「日本のドラマ」と言わずに「Jドラマ」というフレーズを選択したようです。
ハリウッド制作ではありますが、日本語の台詞が7割を占める「SHOGUN 将軍」がエミー賞の歴史を塗りかえる最多18部門受賞を成し遂げたことを考えると、「Jドラマ」の波はそこまで来ているとも言えます。
参考:真田広之と「SHOGUN 将軍」の快挙は、日本発で世界に広がる作品の布石になるか
「ガンニバル」は、この「SHOGUN 将軍」と同じディズニープラスで世界に配信されており、その波に一番近い位置にあるドラマとも言えるわけです。
ディズニープラスの歴史を作る作品に
実は「ガンニバル」も企画当初は、「カニバリズム(人食い)」をテーマにした作品をディズニーで扱って良いのかという議論があったようです。
しかし、アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』のプロデューサーでもある山本晃久さんと脚本家の大江崇允さんを筆頭に、監督の片山慎三さんや柳楽優弥さん、笠松将さんなど、日本映画界の才能が結集。
事前の懸念を吹き飛ばすかのように「ガンニバル」は世界で高い評価を受けます。
参考:不可能と言われた「ガンニバル」映像化を実現! 『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞受賞の山本晃久プロデューサーの勝算
その結果、ディズニーのAPAC地域のオリジナル作品として初めてシーズン2が制作された作品となっており、ある意味で既にディズニープラスの歴史を作る作品の1つなっているとも言えるわけです。
今回、「ガンニバル」シーズン2がさらなる世界でのヒットを記録すれば、ディズニープラスにもさらなる「Jドラマ」制作の機運が高まることは間違いないはず。
来年3月から配信が開始される「ガンニバル」シーズン2が、世界にどのように広がるのか、今から楽しみにしたいと思います。