数千人が震え上がる…金正恩「女性社長」処刑の生々しい場面
中国の国境に面した北朝鮮の平安北道(ピョンアンプクト)で、外貨稼ぎ機関を対象に大々的な検閲に突入し、雰囲気が凍り付いているという。
デイリーNKの現地情報筋によると、今月4日から道保衛部(秘密警察)が派遣した検閲班が道内の外貨稼ぎ機関に対する検閲に入った。道内には中国との最大の玄関口と言える新義州(シニジュ)があり、外貨稼ぎ機関の関係者は数千人に及ぶと思われる。
今回の検閲は四半期ごとに施行される定期検閲の一環だが、外貨稼ぎ機関の人員すべてを対象に個別面談を行うという、以前よりはるかに厳しいものだ。
検閲班は本格的な検閲に突入する前に「傀儡韓国をはじめとする敵対勢力が我らの対外貿易を妨害し、我ら内部を瓦解させるための不純な目的で繰り広げる工作を防ぐ」と説明。さらに、「私たちの内部に敵対勢力の不純物を入れてはならない」とも強調したという。
これは要するに、「外貨を稼ぐのは大事だが、韓国と関連したモノを扱ったり韓国企業と絡んだりしてはならない」ということだ。
北朝鮮当局も以前は、カネ儲けを優先し、あまり細かいことは言わなかった。それが変わったのは、金正恩総書記が主導して防疫ルールが強化されたコロナ禍の頃からだ。ウイルスの流入を防ぐとして貿易に対する国家の介入を強め、ルールに違反した者は躊躇なく処刑した。
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たとえば平壌に近い西海岸の南浦(ナムポ)で密輸を行い、逮捕された女性社長は大口径の高射銃で銃殺され、遺体が粉々になり跡形もなく吹き飛ばされたという。当局は外貨稼ぎの関係者を1カ所に集め、その生々しい場面をいちいち詳しく説明して聞かせたという。
そんな記憶も新しいだけに、関係者の緊張感はハンパではない。情報筋は「保衛部は外貨をどのように稼いだのか細かく説明しろと言う。小さな問題でスパイに仕立て上げられかねないので、関係者たちは疲弊している」と話す。
また、関係者たちが緊張する理由はほかにもある。
北朝鮮ではどの部門も同様だが、正式な給料だけではとても食べていけない。そのため、機転をきかせて自分の「取り分」を確保する必要がある。だが、これが検閲時に見つかると、「国家の富を横領した」と見なされかねないのだ。
さらに、国際電話をかけるにも煩雑な手続きを踏まねばならないため、電波の届く国境エリアでは中国キャリアの携帯電話を使っている関係者も少なくないというが、これもまた違法で厳罰の対象だ。
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情報筋によると、関係者たちからは「外貨稼ぎのノルマを満たすためには手段を選んではいられず、事前に申告していない貿易活動もしなければならない。それをすべて検閲していたら、どうやって外貨を稼げというのか」との声が上がっているという。