Yahoo!ニュース

新番組「旅するSnow Man」は、日本におけるディズニープラス成長のきっかけとなるか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:ディズニープラス公式YouTube)

今週シンガポールで開催されたディズニーのイベントにおいて、驚きのコラボ企画が発表されました。

「旅するSnow Man」と仮のタイトルがつけられたこの企画では、ウォルト・ディズニー・ジャパンと日本テレビの戦略的協業の一環として、Snow Manによる旅番組が2025年にディズニープラスやHuluで配信されることが発表されたのです。

筆者も、このイベントにご招待頂き、発表の様子を現地で目にすることができましたが、特に日本のメディアの方々が驚いているのが印象的でした。

なにしろ、今回のコラボ企画は、今後の日本における配信サービスの顧客獲得競争に大きな一石を投じる可能性があるのです。

ディズニープラスにおける旅番組実施のインパクト

Snow Manといえば、『オリコン上半期ランキング 2024』アーティスト別セールス部門において、期間内売上84.6億円を記録して1位を獲得していますし、金曜夜8時のゴールデンタイムに冠番組として「それSnow Manにやらせて下さい」を放送しているなど、日本を代表するボーイズグループの一つであることは間違いありません。

そのSnow Manが、ディズニープラスで旅番組を開始することのインパクトは決して小さくないでしょう。

なにしろ、「旅するSnow Man」の企画がシンガポールで発表された11月21日の段階で、多くのファンが歓迎のコメントをSNSに投稿しており、さっそく作品名がXのトレンド入りしているようです。
参考:『旅するSnow Man』トレンド入り 新番組発表に「ありがとうございます!」ファンから喜びの声

また、ディズニープラスにおけるボーイズグループによる旅番組と言えば、世界的に人気のあるBTSの最年少メンバー2人で、仲良しコンビのJIMINさんとJUNG KOOKさんが出演する「Are You Sure ?」という番組が配信されているという実績もあります。

しかも、この「Are You Sure ?」は今回のディズニーのイベントにおいて、アジア太平洋地域で最も多く視聴されたディズニープラスのバラエティー番組であることが発表されていました。

Snow Manにとっても、ディズニープラス経由で海外の視聴者に自分達の番組を届けることができるようになるメリットは大きいと言えるわけです。

Netflixとも様々なプロジェクトを実施

また、今回のSnow Manの番組配信がNetflixではなく、ディズニープラスであるという点も注目点です。

動画配信サービスと日本のボーイズグループのコラボといえば、何と言っても大きなインパクトがあったのが、2019年から配信が開始されたNetflixによる嵐のドキュメンタリーである「ARASHI’s Diary -Voyage-」でしょう。

日本のボーイズグループの頂点にいた彼らが「2020年いっぱいでの活動休止」を発表した背景や、活動休止までの奇跡を描いたこの作品は、ファンを中心に大きな話題となりました。

特に、当時嵐が所属していた旧ジャニーズ事務所が、ドキュメンタリー配信のパートナーとして、日本のテレビ局ではなくNetflixを選んだことは多くの人々から驚きを持って受け止められました。

その後、旧ジャニーズ事務所がSTARTO ENTERTAINMENTになってからも、両者の関係は密接な形で継続しています。

象徴的なのは、新会社STARTO ENTERTAINMENTのお披露目イベントであった「WE ARE!」のライブ映像がNetflixで世界独占配信されたことでしょう。

その後も、Aぇ! groupのデビューの軌跡をおったドキュメンタリーである「BORDERLESS」、そしてtimeleszの新メンバーオーディションである「timelesz project」など、基本的にSTARTO ENTERTAINMENT所属アーティストのドキュメンタリー作品は、Netflix独占での配信となってきたわけです。

ディズニープラスにとっての大きな意義

一方、今回Snow Manの旅番組は、日本テレビとの協業という形を通じてNetflixのライバルであるディズニープラスに配信されることになります。

実は、ディズニープラスの日本における契約者数は、世界市場全体と比較すると苦戦していると言われています。

ディズニーグループは、ディズニープラスとHuluあわせて1億5000万人以上の加入者を誇っており、世界のほとんどの市場で動画配信サービスのシェアで3位までに入っているそうです。

ただ、日本市場においては、Huluブランドを日本テレビが運営していることもあり、直接ディズニーが運営している動画配信サービスはディズニープラスのみで5位という調査結果が出ているのです。

(出典:インプレス総合研究所 【2023年度版】動画配信サービスの市場レポート)
(出典:インプレス総合研究所 【2023年度版】動画配信サービスの市場レポート)

ディズニープラスの加入者数を増やすことは、ディズニーグループとして映画やゲームなど他の市場への波及効果も大きいですから、当然日本市場における加入者獲得は大きなテーマになっているはずです。

今年は「SHOGUN 将軍」がエミー賞18部門受賞したこともあり、大きな話題になっていますから、ディズニープラスにとっても間違いなく攻めの年であることは間違いありません。

そんな中での、Snow Manとの番組制作は、ディズニープラスの日本法人にとって最重要プロジェクトの一つであると考えられるわけです。

加入者数増加のきっかけになるか

時系列で並べてみると興味深いのが、今回のディズニープラスの日本での攻め手が、Netflixの成功の歴史と付合することです。

上記の調査でディズニープラスに3倍近い差をつけているNetflixが日本でサービスを開始したのは2015年9月のこと。

サービス開始から4年後の2019年9月の時点でNetflixの加入者数は300万人と報じられていました。

この2019年から2020年は、Netflixの日本市場にとっては大きな躍進の年になっています。

2019年8月には「全裸監督」が話題となり、2019年の年末から嵐のドキュメンタリーが放送開始され、幅広い層がNetflixに興味を持つ年になるのです。

もちろん最も大きい影響は2020年のコロナ禍であったことは否定できませんが、最終的にサービス開始から5年となる2020年9月には加入者が500万人を突破し、1年で200万人も加入者が増えたことに業界が驚くことになるのです。

参考:ネットフリックス「国内会員500万人」の衝撃度 ライバルの日本勢が埋められない「圧倒的な差」

一方、ディズニープラスが日本でサービスを開始したのは、Netflixからおよそ5年遅れた2020年6月のこと。

サービス開始から4年後である今年時点での加入者数は公式には発表されていませんが、300万人前後ではないかという報道がされており、実は4年間での伸びはNetflixと似たような展開を経ていることになります。

そういう意味で、ディズニープラスにおいても、今年は「SHOGUN 将軍」が大きな話題となった年であり、Snow Manとの旅番組配信を開始することが、幅広い層にディズニープラスの認知が広まるきっかけとなる可能性は十分あるように感じます。

なにしろSnow ManはYouTubeのロケ企画でも、数百万再生を叩き出している動画があるような人気グループ。

そんなSnow Manが日本テレビとディズニープラスと一緒に、どんな旅番組を生み出してくれるのか。

今から、楽しみにしたいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

徳力基彦の最近の記事