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ノルウェーで銃乱射、性の多様性を祝う行進中止へ

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
銃乱射のあったナイトクラブ周辺で花を手向ける市民 撮影:あぶみあさき

25日(土)午前 1時15分頃、首都オスロのナイトクラブ「ロンドン・パブ」で銃乱射があり、50代と60代の2人の男性が死亡、21人が負傷した(10人は重傷)。

警察は容疑者とみられる男を殺人・殺人未遂とテロの疑いで逮捕した。

写真:ロイター/アフロ

銃撃でパニックが起きたのは隣接する「ロンドン・パブ」「ヘッル・ニルセン」「ペール・ポ・ヨルネ」のナイトクラブ3店舗。

現地では多様なセクシュアリティの人を歓迎する「クィア・コミュニティ」地域としても知られていた。

オスロでは性の多様性を祝うプライド月間が開催中で、最終日の25日には多くの市民が参加する行進「プライド・パレード」が開催予定だった。

コロナ禍で中止が続き、3年ぶりのパレードを楽しみにしている人は大勢いた。

パレード前日の深夜は、プライド月間を祝福する市民が大勢集まっていた特別な夜だったために、事件はノルウェーの人々に大きなショックを与えている。

警察は容疑者とみられる男性を逮捕。最初は「イラン出身で、家族と難民としてノルウェーにやってきた。現在はノルウェー国籍の男性」と報じられていた。

現在は名前と顔写真も公表され、銃撃をしたのはZaniar Matapour (42) 。警察によるとノルウェー現地のイスラム過激派のネットワークを出入りしており、過去に麻薬所持や暴力で何度か逮捕歴もある。

動機は不明だが、警察当局は、政治的暴力もしくは憎悪犯罪が動機かどうか調べている。

パレードだけではなく、プライド月間中に設置されるプライド広場のイベントも中止となった。入口のフェンスに花を手向ける市民もいた 撮影:あぶみあさき
パレードだけではなく、プライド月間中に設置されるプライド広場のイベントも中止となった。入口のフェンスに花を手向ける市民もいた 撮影:あぶみあさき

オスロ・プライドの主催者は、警察と話し合った結果、この日のパレードを中止することを発表。

人気行事のために、この決定は現地の人々にとっては衝撃的だった。

私もこれまで何度もパレードを取材してきたが、1年の中で特に自分も幸せに感じるほど、愛や寛容に溢れた行事だと感じている。まさか中止になるとは思わなかったので、個人的にもショックだった。

銃乱射のあったナイトクラブ周辺に市民は続々と訪れ、花を手向けていた 撮影:あぶみあさき
銃乱射のあったナイトクラブ周辺に市民は続々と訪れ、花を手向けていた 撮影:あぶみあさき

突発的に自分たちの意思で行進を始める市民もいた 撮影:あぶみあさき
突発的に自分たちの意思で行進を始める市民もいた 撮影:あぶみあさき

ノルウェー王大使夫妻や首相なども現場を訪れ、市民と抱擁をして事件が起きたことを悲しんだ
ノルウェー王大使夫妻や首相なども現場を訪れ、市民と抱擁をして事件が起きたことを悲しんだ写真:ロイター/アフロ

実際にみんなでパレードができない代わりに、SNS・自宅・近所などでプライドを祝うことが全国各地で推奨された。

私もフェイスブックやインスタグラムを見ると、愛・悲しみ・怒り・心配など、正直な感情を表現する知人たちの投稿で溢れていた。

今回のパレードは「中止」というよりは「延期」という解釈がされており、いずれ市民みんなで行進をして、団結しようという空気が流れている。

容疑者の標的がLGBTQI+コミュニティだったのかは明らかになっていないが、いずれにせよ攻撃を受けたことには間違いないとして、「性の多様性のために闘い続けることを私たちは止めない」という論調はさらに強くなっている。

ノルウェー語で「愛」と書かれた色紙も手向けられていた 撮影:あぶみあさき
ノルウェー語で「愛」と書かれた色紙も手向けられていた 撮影:あぶみあさき

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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