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イドリブ県でトルコ軍、シリア軍、アル=カーイダ主導の反体制派合わせて70人が死亡、一進一退の攻防続く

青山弘之東京外国語大学 教授
SANA、2020年3月5日

トルコ軍ドローンの爆撃続く

英国に拠点を置く反体制系NGOのシリア人権監視団によると、トルコ軍バイラクタルTB2無人航空機(ドローン)が4日、M5高速道路とM4高速道路が交わる要衝のイドリブ県サラーキブ市、ハーン・スブル村、マアッルディブサ村、タルナバ村、ジャウバース村、カフル・ウワイド村、アレッポ県のヤーキド・アダス村、シャイフ・アキール山一帯、ハマー県のカムハーナ町のシリア軍と「イランの民兵」の拠点を爆撃した。

トルコ軍のドローンはまた、シャフシャブー山麓のカウカバ村でシリア軍の車列を爆撃した。

アル=カーイダ主導の反体制派とシリア軍が一進一退の攻防

またサラーキブ市一帯では、トルコの航空・砲撃支援を受ける「決戦」作戦司令室(シャーム解放機構や国民解放戦線(国民軍)などからなる武装連合体)とシリア軍が激しい戦闘を続けた。

ロシア・シリア両軍の航空支援を受けるシリア軍地上部隊はこの戦闘でアーフィス村の大部分を制圧(奪還)した。

シリア軍はまた、ビンニシュ市、サルミーン市、ナイラブ村、クマイナース村、アーフィス村、マストゥーマ村、ジスル・シュグール市、スフーフン村、ファッティーラ村を爆撃・砲撃、ロシア軍もザーウィヤ山、アリーハー市、サルミーン市一帯を爆撃した。

これに対して、「決戦」作戦司令室は、シャイフ・アキール山麓のシャイフ・アキール村を奪還した。

戦闘でトルコ軍兵士4人を含む70人が死亡

なお、イドリブ県での戦闘で、シリア軍側の兵士35人と「決戦」作戦司令室戦闘員32人が死亡した。

死亡したシリア軍側の兵士35人のうち26人がトルコ軍の砲撃によるもので、「イランの民兵」7人も含まれているという。

一方、トルコ国防省は声明を出し、3日のイドリブ県での戦闘で兵士1人が死亡、9人が負傷したと発表した。

これに対する報復として、トルコ軍はシリア軍兵士299人を無力化、戦車9輌。大砲2門、ミサイル発射台6基、軍用車輌2輌を破壊したという。

トルコ国防省はその後再び声明を出し、トルコ軍兵士2人が死亡、6人が負傷したと発表した。

これに対して、トルコ軍はただちに報復し、シリア軍兵士多数を殺害したという。

トルコ軍はハサカ県の国境地帯でもシリア軍拠点を攻撃

クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHAによると、トルコ軍がハサカ県ダルバースィーヤ市の東4キロに位置するハワーシーヤ村に展開するシリア軍の拠点1カ所を砲撃した。

トルコ軍が同地のシリア軍を狙うのは初めて。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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