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韓国で「真夏のビキニ論争」 "ソウルのど真ん中"に"渓谷"…そこで着るのはアリ?

ハヌル氏インスタグラム @sekaowa_skyより

暑い。暑さが止まらない。

日本と同じく、8月21日に日中の最高気温が32度に達する酷暑に見舞われる韓国で、ある騒動が起きている。

「ビキニ、そこでは適切なのか」

レジャー中の渓谷で、ソウル市のど真ん中で。夏を楽しむ女性の姿に、ネットから大手メディアまでもがざわついている。

個人の自由か、道徳上の問題か、はたまた軽犯罪か――。

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渓谷でビキニ「家族旅行客もいるのに…」 実際に罪に問われる可能性があるのは…

17日には、韓国語の大型のインターネット掲示板での写真投稿と書き込みからある騒動が始まった。

国内の避暑地にある渓谷で川遊びをする女性がビキニ姿だった。これを写真に撮影して投稿し、こう書き込んだのだ。

「渓谷は家族単位の旅行客も多く訪れる場所。年配者も多いのに眉間にシワを寄せてしまうような服装が多い」

「渓谷で若い女性たちがビキニを着ると迷惑に感じる」

これを同日「ソウル新聞」が記事化したところから一気に広がりを見せた。「活発な議論」という様子を伝え、ユーザーたちのこういった意見を紹介している。

反対意見

「子どもたちがも多いのにビキニが適した服装なのか」

「お父さんたちも来るのにバツが悪い」

「胸が多く露出しているビキニは自制しないと」

「渓谷は子供もいる場所なのに、眼を細めるような服装が多い」

「なぜ子供たちが多い渓谷でビキニを着るのか」

「渓谷は子供だけでなく、お年寄りもよく訪れる休暇地。ビキニは不快」

「恥ずかしい」

「法律で禁止されているわけではないが、不適切」

いっぽう「問題ではない」という意見も寄せられている。

「では、おじさんたちは上半身裸で遊んでもいいのか」

「他にリゾート地があるのか」

「これも性差別」

「全裸ではないのに、なぜ論争が起きるのか理解できない」

韓国でこういった議論が起きたのは初めてではない。「ソウル新聞」は近年、夏になると地方自治体が整備した公演の噴水などでも女性がビキニで過ごす姿が見られ、これについても論争が巻起こった事例を伝えている。

いっぽう、同メディアは「渓谷ビキニ」の件で韓国警察に取材を行い、「渓谷でビキニを着たからといって処罰することはできない」というコメントを掲載した。

また「この写真をオープンな掲示板に掲載し、顔がそのまま写っている場合には(撮影してアップした人が)処罰の対象になりうる」という見解も紹介している。

ソウルではYouTuberが「ビキニで爆走」

8月にはソウル市内でも同じく「ビキニ論争」が巻き起こった。

こちらは「確信犯的」な話だ。

8月12日、YouTuberなどとして活動中のハヌル氏がソウル市内の中心地ホンデをキックボードに乗って走行した。この様子を自身のSNSでアップするや「炎上」に。ネット上などで反対意見が多く集まった。

「場所と時を選ぶべき。子供たちが目にすることは困惑。確実な罰を下して再発防止を」

「注目されたがっている人なの? 着るのが自由なら見たくない自由も考慮すべき」

「全裸ではないし、個人の自由だと思うが、多くの人が不快に感じるなら控えるべき」

本人は「自由」を主張

これを受け14日、ハヌル氏が自身のインスタグラムで「声明」を発表している。

「日常脱出? 目立ちたがり? マーケティング(販促)? 挑発? どこか足りない子? 露出症? 考え方次第。着ることは自由、どう着ても自由、見ることも自由"」

「触るのだけはよして。すれ違う市民の皆様が私のせいで気分を害したのなら申し訳ありません」

「一日中着ていたわけではありません。1~2分の解放感を味わっただけ」

「わいせつとみなす視線と規定がなくなれば後に、(体を覆ってくれている水着に)解放感を感じるのか?」

ハヌル氏はこれ以外にも同様の行為を行っていた。11日にはソウル市内の江南エリアに再びビキニ姿で登場。ともにバイクで走行した3人とともに警察から任意同行を求められている。

国内弁護士は軒並み「厳しい意見」

韓国内では厳しい視線が向けられている。韓国メディア「デイリーアン」は彼女の行為を「ガチ分析」。国内の複数弁護士のコメントを紹介している。

キム・ヒラン弁護士(法務法人「リーダーズ」)

「現行の軽犯罪処罰法上、『過度な露出罪』の成立基準は、多くの具体的な状況を見て判断する。時と場所、露出部位、露出方法と動機、経緯など。多くの人々の目に触れる場所で裸体を過度に露出させたり、臀部など隠すべき場所を露出して他人に不快感を与えた場合、10万ウォン以下の罰金、拘留または過料を課すことができる」

イ・ウニ弁護士(イ・ウニ法律事務所)はそもそも韓国の規制が甘い、との意見だ。

「都心での露出などの行為を現在罰する手段は、事実上、軽犯罪の適用と罰金10万ウォン(約1万円)程度が全て。現行法はこれらを罰する機能と抑制機能を適切に果たしていないと考えられる。古い規定だ」

シン・サンミン弁護士(法務法人エイアンドラボ)も批判的な意見だ。

「通常、海水浴場やプールなどでビキニを着る場合、一部の身体部位が露出しているとしても、社会通念上問題がないと考えられる。しかし、都心、オフィスなどでの露出は一般的な場合に該当するとは考えられないのが一般的な判断である」

韓国各メディアは警察側も法律の適用を検討中、と報じている。

いっぽう、韓国ではビキニの人気は高く、2006年7月5日の時点で「韓国経済」が「国内での売上が600億ウォン(約60億円)に達している」との記事を掲載。当時にして女性用水着の売上のじつに60%だった。2023年に関してはワンピース型もトレンドとなっているが、そのステイタスが揺らぐことはない。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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