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中国で武力による政府転覆計画が明らかに

宮崎紀秀ジャーナリスト
中国で武力による反政府計画はまれ(写真は2019年10月1日北京)(写真:ロイター/アフロ)

 中国の国家安全省は、2016年に国内で武力によって政府転覆を企てた事件があったことを明らかにした。中国で武力による反体制闘争の試みが明るみに出ることはまれ。当局があえて事件の存在を公開したのは、体制維持を重視する姿勢を改めて強調する狙いがあるとみられる。

 国家安全省が8月15日、中国版SNSウエイシンの公式アカウントで事件を明らかにした。それによれば、治安維持に当たる国家安全機関が2016年、雲南省の学校を退職した元幹部が長期間に亘ってネット上で反体制的な言論を発表していたのを発見した。元幹部は、外国の敵対組織の幹部と連絡を取って武器の購入を計画。国内で言わば「決死隊」を募って暴力行動を起こすことを目指し、国家政権の転覆を企てたという。

 だがこの企ては国家安全機関によって計画段階で摘発され、全ての関係者が検挙されたという。

 また、国営中央テレビは、この元幹部と見られる男の映像とともに、男が軍の弾薬庫を襲撃しようとしていたなどとも報じた。

 中国西南部に位置する雲南省は、ミャンマー、ラオス、ベトナムと国境を接しており、地元の人々は日常的に陸路で国境を往来している。きちんとした出入国の手続きをせずとも人や物の往来ができてしまう地方も存在し、中国当局が麻薬の流入などに目を光らせている土地でもある。

 国家安全省は、「政治の安全は国家の安全の基本」という発表の中で、この事件について触れており、中国が直面する政治の安全における敵の状況の一側面を反映していると位置付けている。また、2019年に香港で起きた大規模なデモも、政治安全を脅かす例として触れており、国民に対し、政治の安定と体制維持を堅持する姿勢を改めて強調する狙いがありそうだ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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