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日本語教師が教える!教養のための「漢字の読み方」ルール5選

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

みなさんは、漢字の読み方って意識したことがありますか?例えば「学校」を「がっこう」と読むことに疑問を感じたことはありませんか?

「学」の読み方は「がく」で「校」の読み方は「こう」なのに、「学」+「校」で「がっこう」に変わってしまうこと、ちょっと不思議ではないでしょうか?

ネイティブの大人なら「がくこう」では発音しにくいと感覚でわかると思いますが、これが子どもだったり外国人だったりすると、その感覚は共感できないもの。でもこの漢字の読み方には、実は一定のルールがあるんです!今回はその代表的なものをご紹介。ルールがわかると、教養になる。子どもや外国人にも説明できる。ちょっと便利な知識です!

ルールを知る前に:漢字の不思議

ところで、日本語の漢字の音にはある規則性があります。漢字ひとつの音読みの音が2音で構成されている場合、その2拍目の音は必ず「‐い、‐う、‐き、‐く、‐ち、‐つ、‐ん」のいずれかになります。「ホントに??」と思う人もいるかもしれませんが、いろいろな漢字の音読みを確認してみると「確かに…」と納得できると思います。

ちなみに、音読みの場合音は3つまで。漢字ひとつで4つ以上の音を持つ場合は自動的に訓読みと判断できます。また漢字の最初の音が濁音や、ら行の音だった場合は基本的に音読みです。(「場(ば)」「路(じ)」など一部例外の訓読みはあり)

このように漢字の音にはルールがあって、さらに漢字同士が複合してひとつの語となる際にもルールが生じます。

ルール1:小さい「っ」に変わる「促音化(そくおんか)」

ここからは読み方ルールです。

まずは、2つの漢字を組み合わせた言葉の、ひとつ目の末尾の音が「‐き、‐く、‐ち、‐つ」またはひとつ目の漢字の音が「じゅう」であり、且つ、ふたつ目の漢字の最初の音が「K-、S-、T-、H-」であるという条件を満たした場合、ひとつ目の漢字の末尾の音が小さい「っ」に変化するというルールです。

例:匹+敵(ひき)→ 匹敵(ひてき)
  宅+建(たん)→ 宅建(たけん)
  一+滴(いき)→ 一滴(いてき)
  圧+縮(あゅく)→ 圧縮(あしゅく)

冒頭の「学校」も同じ条件にあてはまるので、「がっこう」という読み方になります。小さい「っ」のことを「促音(そくおん)」というので、このルールは「促音化」と呼ばれます。

ちなみに、「じゅう」+「K-、S-、T-、H」の場合、本来は「じっ」と変化するルールでしたが(十戒→じっかい、など)現在では「じゅっ」という読み方が一般化しつつあります。

ルール2:HがPに変わる「半濁音化」

次のルールは、ひとつ目の漢字の末尾の音が「ん」または小さい「っ」であり、且つ、ふたつ目の最初の音が「H」だった場合に、その「H」が「P」に変わるというものです。

例:反+発(は+はつ)→ 反発(はんつ)
  短+編(たん+へん)→ 短編(たんん)
  達+筆(たつ+ひつ)→ 達筆(たっつ)

また以下のような場合は、まず促音化のルールが適用されるため小さい「っ」に変化し、さらに「H」が「P」に変化する2つの現象が重なった状態になります。

例:活+発(かつ)→ 活発(かっぱつ)
  一+泊(いく)→ 一泊(いっぱく)

このような変化は「半濁音化」と呼ばれます。

ルール3:2つの語を合わせたときに後ろの音が濁る「連濁」

このルールは、意味を持つ2つの語が合成したときに、2番目の語の最初の清音が濁音に変わる、というものです。こちらは漢字に限らず言葉という広い意味で考えることができます。

例:ガス+会社(ガス+会社)→ ガス会社(ガスいしゃ)
  花+盛り(はな+さかり)→ 花盛り(はなかり)

この変化は前の語が後ろの語を修飾する関係のときに現れやすく、並列の語が並んだ場合は変化が起きにくい(好き+嫌い→すききらい)、後ろの語に濁音が含まれていると変化が起きにくい(合+鍵→あいかぎ)、カタカナ語・とりわけ後ろの語がカタカナ語の場合は変化が起きにくい(鈴+カステラ→すずかすてら)など、例外の多いルールではありますが、読み方に悩んだときのひとつの指標になります。

ルール4:M・N・Tが加わる「連声(れんじょう)」

これは、後ろの漢字の最初が母音、や行、わ行で、且つ前の漢字の末尾が「‐m、- n、- t」だった場合、後ろの最初の音がま行、な行、た行に変化するというもの。

例:観+音(かん)→ 観音(かんん)
  三+位(さ)→ 三位(さん
  因+縁(いん)→ 因縁(いんん)

この現象は「連声(れんじょう)」と呼ばれます。ルールの再現性は少し低めで、「原+因→げんいん」など、例外も多くあります。

ルール5:母音が変わる「転音」

2つの語が合成したときに、前の語の最後の音の母音が変わる現象です。

例:酒+屋(さ+や)→ 酒屋(さや)
  木+陰(+かげ)→ 木陰(かげ)
  雨+傘(あさ)→ 雨傘(あまがさ ※同時に連濁も起きている)

これは古くからある日本語に多く、現代に生まれた言葉は基本的には例外です。

「せんたっき」?「おんがっかい」?

ここまで見てみると、なるほど!と思うものが多いと思いますが、よく受ける質問で「じゃあ先生、『洗濯機』や『音楽会』はどうして『せんたっき』『おんがっかい』と書かないんですか?でも日本人はみんな『せんたっき』と発音していると思います」なんていうものがあります。みなさんにも不思議に感じる方がいるかもしれません。確かに、ですよね。

これは実は例外のルールで、前の語の独立性が高いものは促音化しにくい、という法則があるのです。「洗濯」「音楽」という語が独立性を持っているということです。この場合は促音化させずに表記しますが、発音はしにくいので、発音は実質促音化しているのです。

すぐに使える便利な教養!「漢字の読み方」ルール

今回は、漢字の読み方に迷ったらすぐに使える読み方ルールの代表的なもののご紹介でした!これらはすべて例外が存在するので100%とは言えないのですが、特に促音化や半濁音化は確率高めの便利な知識。外国人にも「テストで困ったら思い出せ!」とアドバイスしています。大人から子どもまで知っているとちょっと博識?なネタとして、ぜひ役立ててみてください!

日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

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