いくら不祥事を起こしても政権崩壊につながらない不思議
フーテン老人世直し録(473)
霜月某日
先月の25日に菅原経産大臣、31日に河井法務大臣が共に公選法違反容疑のスキャンダル報道を受け辞任したことから、野党が要求した予算委員会の集中審議が衆議院で6日に行われた。
内閣改造後1か月ちょっとで2人の閣僚が相次いで辞任したのだから政権には打撃のはずである。野党としては安倍総理の任命責任を追及し、また萩生田文科大臣の「身の丈」発言によって英語民間試験が延期された問題を追及して政権に打撃を与えようとした。
ところが安倍総理は「自分に任命責任がある」と責任は認めながら、「行政を前に進めていくことに全力を尽くすことで国民への責任を果たしたい」と紙に書かれた言葉を繰り返し読み上げ、神妙な顔はするがフーテンには打撃も痛痒も感じていないように見えた。
なぜなら安倍総理は質問する野党議員に自席からヤジを飛ばし、野党議員を怒らせて一時質疑が紛糾するという緊張感を欠く集中審議になったからである。攻める野党が非力すぎるのか、それとも安倍政権の驕りが勝っているのか、いくら不祥事を起こしても政権崩壊にはつながらないとの信念を見せつけられた思いがした。
これは何だと思う。「自分に任命責任がある」と言って国民に謝ってみせるが、実は自分に任命責任などないと思っているのではないか。つまり菅原経産大臣も河井法務大臣も自分が任命したというより菅官房長官が主導した人事だから、責任は官房長官にあると心の中では思っている。
そして2人が辞任したことは菅官房長官の力を削ぐが、自分の力が削がれることにはならない。むしろ週刊誌報道は力を増してきた菅官房長官より優位に立つきっかけを作ってくれた。だから余裕を持って「任命責任は自分にある」と言っていられる。
もう少し想像を巡らせば、週刊誌に情報をリークしたのは安倍総理のサイドかもしれない。菅官房長官の側近だけが狙い撃ちのように辞任したのを見ると、フーテンはそういう想像に駆り立てられる。
そして菅官房長官のスタンスから言えば、ここで安倍政権を崩壊させようと考えている訳ではない。安倍政権を存続させ、その間にさらに力を増して、ポスト安倍のキングメーカーになろうと菅官房長官は考えている。それがフーテンの見立てである。
しかしポスト安倍のキングメーカーの座を最も狙っているのは安倍総理自身で、安倍総理は自分の息のかかった者に後継の座を与えたい。だからその時が来ればこの2人は相争うことになる。今回の相次ぐ辞任劇はその前哨戦のように見える。だから今のところはいくら不祥事が起きても政権崩壊にはつながらないのである。
そしてもう一つ考えられるのは、安倍政権の本質が官邸官僚に操られた「二人羽織」であることだ。安倍総理は官邸官僚が書いたセリフを国会で読み上げるだけで良いのである。そうでないと困ると官邸官僚は考えている。
この記事は有料です。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバーをお申し込みください。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバー 2019年11月
税込550円(記事6本)
※すでに購入済みの方はログインしてください。