教員による教員に対するいじめは、副大臣を派遣して解決する問題ではない
神戸市立東須磨小学校で教員が4人の教員からいじめを受けていた問題で、10月11日の閣議後の会見で萩生田光一文科相が「言語道断」を批判した。そして、亀岡偉民文科副大臣と佐々木さやか政務官を連休明けの15日に神戸市教育委員会に派遣することも明らかにした。
両氏を派遣して、「聞き取りや必要な指導・助言するとした」(『教育新聞』10月11日付)という。厳しく叱責することによって、「東須磨小だけの問題」で済ませてしまうのではないかと気がかりである。
東須磨小学校のケースは「やり過ぎ」には違いないが、大なり小なり、教員に対する教員のいじめや嫌がらせは行われている。「東須磨小だけのことだから」と済ませておくわけにはいかない問題なのだ。
9日に記者会見した東須磨小の校長は、激辛カレーを無理やり食べさせられた教員のほかにも、いじめを受けていた教員がいたことも明らかにしている。いじめは横行し、放置されていたのだ。
さらに大臣発言があった翌日の12日には、鹿児島市の公立小学校で、20代の男性教員に対して同校の50代校長による不適切な指導があったとして市教育委員会(市教委)から改善を求める指導を受けていたことが発覚している。
20代男性教員は市教委からの聞き取りに対して、校長からパワハラ行為があったと訴えたそうだ。そして、退職している。退職するほどのパワハラがあったことになる。しかし、その校長はMBC南日本放送に次のように話した。
「他の教員にも同じように指導を行っていた。育てたいという一心で、いじめる気持ちはなかった。今後、改めるべきところは改め個々に応じた指導をしていきたい」
本人には「いじめ」の意識はなかったというわけだ。それでも、受けていた側は退職を決意するほど悩んでいたことになる。典型的なパワハラのパターンである。
ともかく、東須磨小での事件が特別ではなく、鹿児島での件も特殊なのではない。学校現場は、教員同士によるいじめ、嫌がらせ、パワハラが容易に起こりうる状況にある。その大きな要因は、忙しすぎることによるストレスだとおもわれる。
そうした要因を解消しないことには、神戸だけに副大臣を派遣してみても、鹿児島市教委が問題のあった校長だけを指導しても、問題は解消しない。根本的な要因を探り、そこを解決していく姿勢と実践こそが必要とされている。
にもかかわらず、萩生田大臣は「怒り」を表明しただけで、根本的な解決策にのりだす姿勢はみせていない。「東須磨小だけのこと」「鹿児島の小学校だけのこと」で済ませてしまえば、教員による教員のいじめは次々に発覚してくることになるだろう。問われているのは、萩生田大臣と文科省の姿勢そのものなのだ。