「安い外材」の嘘に騙されるな
近頃、日本の林業を取り上げるテレビ番組や新聞・雑誌記事が目立つようになった。たいていは「長年不振だった林業に新たな動き。林業は成長産業になる!」といったものだ。内容に関しては多少異論もあるのだが、少なくても林業に目が向けられることは歓迎したい。
ただ、日本の林業を紹介する中でどうしても納得のいかない点がある。
それはほとんどの番組・記事で「安い外材におされて日本の林業は長く低迷してきた」、という前フリがつくことだ。つまり日本林業の不振は、国産材より安い外材が大量に入ってきたためとしているのだ。
これはまったくの間違い。私は、こんな言い訳が今も出回るのは林野庁の陰謀ではないか、と思っている(笑)。
というのは、この「安い外材」に林業不振の理由を押しつければ、林野行政の失敗を覆い隠せるからだ。林業家も自らの経営判断ミスを追求されずに済んだ。
具体的な流れを見ると、戦後は戦災復興と経済成長の中で木材消費量がうなぎのぼりになる中、国産材では供給が間に合わなくなり、1950年代に各国からの外材輸入を順次解禁した。ところが、その頃の外材の価格は、国産材よりずっと高かったのである。ときに2倍3倍したという。それでも売れたのは木材不足だったからだ。また大径木が多く使い勝手がよかったこともある。
その後、為替が変動相場制となり円高が進行すると、外材の方が安くなる時期はあった。しかし国産材が売れなくなると、国産材価格も下がりだす。1992年に丸太価格で、1998年に製材価格で国産材は外材より安くなった。再逆転したのである。その後も変動しているが、おおむね国産材は外材より安いと言えるだろう。
つまり、国産材は外材より安いのに売れない、のが実情だ。
20年以上前から外材は国産材より高くなっている。にもかかわらず「安い外材におされて」という言葉だけが今も拡散しているのはなぜか。やっぱり林野庁の陰謀だろう(笑)。もっとも、木材価格の推移は林野庁の白書などにちゃんと示されているのだから、番組や記事づくりの際にちょっとチェックすれば気づくはず。
ちなみに木材価格は、個々の材質や使用目的によって大きく変わる。だから木材価格の平均値で比較するのは本来無理がある。また仮に原木が安くても、それを加工流通する過程で値が上がり、住宅建築の現場では外材より高くなった国産材商品が多いのも事実だ。
だが、少なくても「安い外材」とは言わない方がよい。
では、なぜ安くなっても国産材は売れないのか。安い国産材を加工すると外材商品より高くなるのか。その理由を説明すると長くなるので止めておくが、つきつめれば流通と商品開発の問題になるだろう。そして個々の業者の経営努力にも眼を向けるべきだ。高くても売れる外材はあるのだから。
そして今の日本林業の最大の悩みは、木材価格が安すぎることだ。そのためいくら木を伐っても山主や林業従事者に十分に還元されない。それが山を荒らし、山村経済を衰退させる。「安い国産材」が問題なのだ。国産材を大量に消費すれば解決するのではないのである。
日本林業の新たな動きを紹介する前に、基本的な問題点を理解しておいてほしい。