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雨警戒の夏近し 奄美・沖縄の梅雨入りに続いて台風1号の発生

饒村曜気象予報士
沖縄のはるか南海上の熱帯低気圧の雲(令和2年(2020年)5月12日17時)

南西諸島は梅雨の季節

 令和2年(2020年)は、5月10日に沖縄県奄美地方が梅雨入りをし、翌11日には沖縄地方も梅雨入りをしました

 地上天気図では、沖縄近海に梅雨前線が停滞し、南西諸島では雨や曇りの梅雨空となっています(図1)。

図1 地上天気図(令和2年(2020年)5月12日21時)
図1 地上天気図(令和2年(2020年)5月12日21時)

 南西諸島が梅雨入りしてから約3週間後、その他の地方も梅雨入りし、全国的に梅雨のシーズンに入ります。

 

台風1号の発生

 梅雨に入った沖縄のはるか南毎上、フィリピンの東海上で5月12日21時に台風1号が発生しました。

 台風の統計が行われている昭和26年(1951年)以降で、台風1号が一番早く発生したのは1月1日(平成31年(2019年))となっています。

 また、一番遅く発生したのは7月9日(平成10年(1998年))となっています(図2)。

図2 月別の台風1号の発生
図2 月別の台風1号の発生

 しかし、これは、あまり意味をなさない統計です。

 というのは、台風は熱帯の暖かい海で発生・発達しますので、前年の暖かさが残っていると1月にも台風が発生するからです。

 つまり、資料が集まれば、一番早い台風発生は自動的に1月1日になってしまいます。

 台風の新年度を、一年で一番寒くなったところからスタートとすると、3月スタートとなります。

 台風の新年度を3月とした場合、台風1号の発生は、3月が32%、4月が36%で、多くの年は、4月までに台風1号が発生しています(図3)。

図3 台風の新年度から見た台風1号の発生
図3 台風の新年度から見た台風1号の発生

 令和2年(2020年)は、台風1号の発生が5月12日ですので、台風発生が遅い年となっています。

台風1号の進路予報

 台風1号は、発達しながら進路を西よりに変え、フィリピンに上陸する見込みです(図4)。

図4 台風1号の進路予報(令和2年(2020年)5月13日3時)
図4 台風1号の進路予報(令和2年(2020年)5月13日3時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

 台風1号は、フィリピン上陸の直前から暴風域を持つようになりますが、上陸後は少し衰えながら北上する見込みです。

 そして、台風1号が予報円の北よりを進んだ場合、5月17日の日曜日には、沖縄県の先島諸島にかなり接近する見込みです。

 しかも、先島諸島の南海上の海面水温は、台風が発達するとされる27度以上であり、フィリピン上陸で少し衰えたとしても、再発達して接近する可能性もあります。

 また、梅雨入りしている奄美・沖縄地方付近には梅雨前線があり、台風1号がこの梅雨前線を刺激して大雨の可能性があります。

 最新の台風情報等の入手に努めてください。

 図5は、筆者が昔調査した5月の平均的な台風経路図です。

図5 5月の平均的な台風経路図
図5 5月の平均的な台風経路図

 これによると、フィリピンを北上した台風が北東に向きを変え、沖縄の南海上を進む台風はめずらしくありません。

 まれですが、さらに北上して東海地方から九州南部に接近するものもあります。

 5月といっても、台風に対して油断することはできません。

 梅雨に台風と、夏近しで、大雨の季節が近づいています。

 外出自粛等で早く新型コロナウイルスの流行をとめないと、防災活動に支障がでるおそれがあります。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図5の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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