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「ファイナンシャルアカデミー」アンバサダー就任の川島永嗣に15年ぶりに聞いた理想のキーパーへの現在地

河治良幸スポーツジャーナリスト
(タイトル&本文写真:記者撮影)

2019年12月25日のクリスマスに日本代表GK川島永嗣の「ファイナンシャルアカデミー」公式アンバサダー就任が発表されました。

「お金の教養が身につく総合マネースクール」を掲げ、これまで50万人が受講しているという総合マネースクールで、金融商品の紹介や販売を行わない中立的な学校運営をモットーとするアカデミーで川島はJリーグ在籍時代の2007年に「お金の教養講座」、2012年に「不動産投資スクール」を受講し、その後の投資に役立てているそうです。

プロ契約を結んだ時から将来の期待と不安がある中で、20代の前半から興味を持って学び始めたという川島。「学び始めた時には何が自分に合っていて、合ってないのかの基準がなかった」と振り返る川島ですが、やりながら学び、自分に合った投資の形を探して行ったと言います。

それでも実際の投資に踏み出すまでさらに時間がかかったようですが「実際に一歩自分が踏み出すことで見える世界が変わった。新聞を読んでいても自分の立ち位置が客観的に見えてくる、ものの見方が変わった」と語ります。

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「スポーツ選手って特別な職業なので普通の生活感と違う中で、そこに偏ると足元が見えなくなる。社会の中でどういう立ち位置にいるのか、どう行きているかを学ぶ機会になりました」

所属クラブの選手などとも練習場や食事などで投資に関する話が良く出るそうですが、具体的にどこに投資したらいいと言った具体的なアドバイスはせず、自分に合ったものを探すべきという川島はサッカーの練習や試合では100%サッカーに集中するものの、お金に限らず普段のものの考え方に変化が出てきたと言います。情熱はサッカーに注ぎ込みながら、その中で時間をどう投資するかを考えながら楽しんでおり、お金の投資もその1つと語ります。

「自分が勉強しなかったら10年後の自分、10年前の自分が同じだったかもしれない。10年前から勉強しているからこそ、また10年後に何をしているかを考えて投資して行きたいです。自分は10年経って、やっておいてよかったと思う。この1年でも自分が勉強していなかったら今の考えはない」

この言葉を聞いて15年前に聞いたことが思い浮かびました。これまで川崎フロンターレや日本代表で取材してきましたが、初めて話を聞いたのは名古屋グランパスに在籍していた2004年のシーズンが終わったオフだったと記憶しています。その時に聞いた話に関して質問してみました。

ーー今回の話を聞いて思い出したのですが、15年前に話を聞かせてもらった時に川島選手は”40歳になった時にどういうキーパーになっているかをイメージしている”と当時の川島選手は語っていました。そのイメージから現在地と40歳の自分をどう思い描いていますか?

「名古屋の時に比べたらイメージしている自分に近づいているとは思いますけど、ただ、まだそこに自分がたどり着けているとも思ってない」

大宮アルディージャで若くしてレギュラーをつかみながら、さらなる挑戦を求めて、日本を代表するGKとして名の通っていた楢崎正剛が守護神を担う名古屋グランパスに移籍した川島は周囲から”無謀”とも見られる厳しい環境で、本人も「練習から良い意味でピリピリしていた」と語るトレーニングでGKのスキルを研ぎ澄ませて、川崎での飛躍、南アフリカW杯、欧州挑戦とキャリアを重ねて行きました。

結果として三度のW杯で正GKを務める偉業を成し遂げた川島ですが、時に欧州で所属クラブが無い境遇も経験しながら、ここまで折れること無く積み上げてきたのは常に未来を描きながらも現在の自分に向かい、チャレンジや発見を楽しむということです。

「自分がそこを目指している中で、今の自分が試行錯誤していることに対していつもワクワクしてやっていますし、正直、僕は僕はその目標に捉われているわけではない。ただ、そういう自分がワクワクして挑戦している中で、また新しい自分のスタイルやどういうキーパーになって行くかは自分でも楽しみにしています」

川島永嗣のキーパーとしての挑戦がいつ終幕を迎えるのかは現時点で分からないですし、本人も決めていない様子です。しかしながら15年に聞いた”40歳になった時にどういうキーパーになっているか”の答え合わせができる4年後を楽しみにしながら、これからも見届けて行きたいと思います。

そして、その時にどういう答えが返って来るのか。案外「まだそこに自分がたどり着けているとも思ってない」という答えをまた聞くことになるのかもしれません。

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スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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