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【ペットの高齢化の悲劇】鳴き続ける愛犬をどうしますか? 飼い主に残された3つの選択

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
老犬のイメージ写真(写真:イメージマート)

現在の日本では、犬705万頭、猫883万頭、合計で約1588万頭(一般社団法人 ペットフード協会より)の犬と猫が飼育されています。そのうち犬が54.3%、猫は43.5%がシニア犬/猫と言われていますと、PHPオンライン衆知が伝えています。

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イメージ写真写真:イメージマート

犬や猫は、一般的に7歳を過ぎるとシニアです。シニア期になると、人と同様に、犬や猫もがんや腎不全や認知症などになったりします。つまり、治療費も世話する時間もかかるのです。

「それは、覚悟している」と飼い主さんは言うかもしれません。実際問題、愛犬がシニア期に病気になり介護することは、簡単なものではありません。そのなかで、一番困るのは「夜鳴き」です。今日はシニア犬(猫はまれ)の夜鳴きについて話します。

なぜ、夜鳴きが困るか?

愛犬が認知症になり、家の中を徘徊している姿を見ると、飼い主ならなんとかしてあげたいと思います。

これらの病気や正常ではない行動は、家庭の中でなんとかすればおさまります。その一方で、鳴き声はそういうわけにはいかないのです。防音がしっかりしているところで、犬を飼っている人はほとんどいません。

鳴き声は、近所に響き渡ります。たとえ、ペット可のマンションや一戸建ての家で飼っていても、近所に聞こえるのです。ましてや、夜に鳴かれると静かななかに響き渡り、近所の人を起こしてしまうのです。

つまり、夜鳴きは飼い主が我慢すれば解決するという問題ではなく、近所の人を巻き込むことになるのです。

なぜ、シニア犬は夜鳴きするか?

写真:イメージマート

シニア犬の夜鳴きする原因は、多くは認知症と脳腫瘍です。

もっとも多いのが認知症です。急に夜鳴きはしません。だんだんと症状が現れます。たとえば、表情が乏しくなり、初めはいままで教えたことができなくなることもあります。

「マテ」ができなくなったりもします。部屋をぐるぐる回ったり、部屋の隅に頭を突っ込んで出てこられなくなったりします。「若いときと行動が違うよね」と思っていると、鳴き始めるということが多いです。そして、だんだんと鳴く時間が増えて、夜鳴きもします。

一方、脳腫瘍の場合は、シニア犬が急に発作を起こしたりします。昨日までは、何もなかったのに、バタンと倒れて四肢を激しく動かしてオシッコとウンチを漏らすこともあります。

このような症状が出れば、脳腫瘍のことが多いです。もちろん、確定診断をするためには、MRIなどの画像診断が必要です。外から見てもわかりません。もちろん、血液検査でもほぼわかりません。

脳腫瘍であれば、手術や放射線治療や抗がん剤などで寛解することもあります。

ここで問題になるのが、シニア犬にとってこれらの治療は「低侵襲性」ではないということです。それに加えて、高額な治療費がかかります。具体的には、手術となると、100万円ぐらいになるのは、珍しいことではありません。

腫瘍は、シニア期になってできることが多く、平均寿命が14歳の犬に、シニアになりっているのに、リスクが高く、実際に高額医療を受けさせることができるかを飼い主の悩むところです。

鳴き続ける場合は、どうしたらいいの?

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認知症などで夜鳴きする場合はサプリメントや朝日を浴びることや内服薬などで、改善される子もいます。そういう場合はいいのですが、脳腫瘍の場合は、腫瘍のできる場所によって、性格が変わる、鳴き続ける、けいれん発作が止まらない子もいます。

そのような場合に、飼い主ができる残された対策は以下の3つです。

1、近所の人に事情を説明して内服薬をする

家族は愛犬なので夜鳴きされても辛抱できますが、近所の人はそうはいかないのです。近所の人に、愛犬の症状を説明して、獣医師に鳴かないようにサプリメントや内服薬を処方してもらいましょう(治療費はかかります)。

2、老犬施設に預ける

介護が必要になった犬を飼い主のかわりにお世話してくれる、いわゆる老犬施設があります。

犬の寿命が延びて、飼い主自身も高齢者となり、介護ケアが自身でできなくなってしまった家庭で、ペットの介護施設を利用する人が増えています。一部こういったセンターに愛犬を預けることは「飼い主として無責任」という発言も目にすることがあります。もちろん、無料でなく有料なので、その辺りもよく調べましょう。

3、安楽死

犬の脳腫瘍は初期症状がほとんどなく、症状が現れたころにはすでに末期状態であることも珍しくありません。

末期は余命が短いケースも多く、また、重度のけいれん発作が起こる可能性も高いでしょう。

愛犬が発作を起こしている姿を見るだけでもとてもつらい気持ちになると思います。そんなとき、安楽死を選択する飼い主もいます。

まとめ

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犬は、シニアになって老衰で死亡する子は、最近では少なくなっています。朝、起きたら死んでいたということはあまりありません。獣医療が発達してきたので、長寿になり病気をする子が多いです。

そのなかで特に問題な点、犬がシニアということは、飼い主も高齢ということです。高齢になると、肉体的、精神的、経済的にも若いときと同じというわけではありません。飼い主が年金生活になると、犬の治療費が重くのしかかってきます。

今回ご紹介したように、シニアになると、愛犬が夜鳴きして悩むことがあるので、犬が若いときから、どうしたらいいかを考えて、犬のために貯金をしておくことをおすすめします。

特に、大型犬の場合は、夜鳴きなどの内服薬の治療費は、体重が重いと小型犬より高額になります。内服薬が中心になり、体重が倍になれば、それだけ内服薬が必要になるからです。

愛犬の病気とどのように向き合ってどんな最期をむかえたいかを考え、なるべく後悔が残らないように考えておくことは大切です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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