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人手不足なのに我が子の将来が不安な現実

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 人手不足が深刻な状況になってきている。「求人難」による今年7月の倒産件数は、東京商工リーサーチによると7件だった。前年同月が1件だったので、急増である。1~7月でも23件と、前年同月比では2.3倍にもなっているという。

 深刻な人手不足は、就職を希望する側にしてみれば「売り手市場」ということになる。日本商工会議所の調査によれば、39.8%もの企業が数年後の人手について「不足感が増す」と答えている。つまり、売り手市場は続く。

 そういう状況だから、若者は就職の心配などしなくてもいいことになる。その親にしても、我が子の将来を心配することはない、といえる。

 ところが(株)イー・ラーニング研究所が8月に発表した「子どもの将来に関するアンケート」の結果によれば、約8割の親が我が子の将来に不安を抱えていると答えている。その不安の最大の理由は、「ロボットの発達により職種が狭まり、希望した職業に就けないかもしれない」というものだった。

 売り手市場でも、希望するような職種に就けない。そこに親は不安を感じているのだ。いくら就職に困らないとはいえ、嫌々でしかない仕事に我が子が就くのは忍びない。親としては、我が子には生き生きと働ける職に就いて欲しいとおもっているのだ。

 言い方を変えれば、売り手市場がつづいても、我が子が生き生きと働けるような仕事は少なくなる、と親は不安を募らせていることになる。そんな仕事しかない社会は、はたして健全なのだろうか。

 そんな親たちは、我が子にどんな職業に就いてほしいとおもっているのだろうか。同じイー・ラーニング研究所の調査結果によれば、第1位が「プログラマー(SE)」で回答者の19.2%を占めている。情報化社会の進展で、SEの需要は増えていくと予想される。先端をいく職業であり、確実に食べていける職業ということになる。

 そして、17.4%で第2位にランキングされているのが「公務員」だった。時代の先端とはいえないが、これまた食いっぱぐれのない職業である。

 親としては、我が子に希望する職業に就いてもらいたい一方で、確実に食べていける安定した職業に就いてほしいともおもっていることになる。売り手市場にもかかわらず、我が子の職種についても、食べていけるかどうかについても、親は不安も抱かざるをえない。この現実は、かなり問題である。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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