【知ってる?】「笑い上戸」「泣き上戸」…お酒に関する「上戸・下戸」って何?【由来】
お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。
みなさんは、お酒が飲めない人が「わたし下戸なので、お酒は…」と言っていたり、お酒を飲んで泣いたり笑ったりしている人が「泣き上戸」「笑い上戸」なんて呼ばれていたりするのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
わたしは以前、日本酒用の酒器を探していたときに「上戸グラス」「下戸グラス」なんていうセットも見たことがあります。
日本語ではよく、お酒が飲めない人を「下戸」、お酒がたくさん飲める人を「上戸」と呼ぶのですが、それがどうしてなのか、みなさんは知っていますか?
今回は、「上戸/下戸」からお酒が飲める・飲めないに関する日本語の由来をご紹介します!
まずは「上戸/下戸」とは?
体質や好みでお酒が飲めない、苦手な人のことを「下戸(げこ)」と言います。その反対に、お酒に強くたくさん飲める人やお酒が好きな人のことを「上戸(じょうご)」と呼びます。
また、お酒を飲んで酔ったときによく笑うようになるタイプの人のことは「笑い上戸」と呼んだり、酔うと泣いてしまうタイプの人のことを「泣き上戸」と呼んだりします。
どれもお酒にまつわる属性としての表現ですが、なぜこのような呼び方をするのかという由来には複数の説があるようです。
「上戸/下戸」の語源・説1:大宝律令
701年・文武天皇の時代に、現代でいう刑法、民法、行政法、訴訟法などが包括された「大宝律令」という法典が制定されました。日本史の勉強で知っている人も多いかもしれません。
この法典に「上戸/下戸」という言葉が登場しています。世帯の階級を、労働に服す義務を持つ者の人数や資産により分類し、上から「大戸(たいこ)」「上戸」「中戸(ちゅうこ)」「下戸」と呼称していたそうです。
この階級により、なんと婚礼の際に飲めるお酒の量も決められていたそうで、それが現在の「上戸/下戸」の語源となっているという説があります。(上戸は8瓶、下戸は2瓶と定められていたようですね)
「上戸/下戸」の語源・説2:万里の長城の城門
「上戸/下戸」の語源とされる説は「大宝律令」以外にもあり、そのひとつが中国にあるとも言われています。
秦の時代。万里の長城には、山の上に位置し寒さの厳しい「上戸」という城門と、平地にあって人の往来の多い「下戸」という城門があったそうです。始皇帝がそれぞれの門番に士気を保つための配給品として、「上戸」には体の温まるお酒を、「下戸」には饅頭を支給していたと言われることが由来となり、「上戸/下戸」の語源となったとも考えられています。
「上戸/下戸」以外のお酒に関する日本語
「右党/左党」
「上戸/下戸」と類似の表現で、お酒に弱く飲めない人を「右党」と言い、酒好きな人を「左党」と言う呼び方もあります。
これは江戸時代の大工が、右手に槌(つち:叩く道具)を持ち、左手にノミ(削る道具)を持っていたことに由来するそうです。ノミを持つほうの左手を「ノミ手」と呼んでいたことから、同じ発音の「ノミ手」=「飲み手」に転じ、お酒が好きな人を「左」と表すようになり「左党」「左利き」などと表現するようになりました。
「ザル」
お酒がたくさん飲める人のことを「ザル」と呼ぶことがありますが、これは水を切るための「笊(ざる)」に由来します。網目を通り抜けてしまうので「溜まることがなく底がない」という意味になります。
「うわばみ」
こちらも、お酒がたくさん飲める人を表す表現。「星の王子さま」でも知られていますが、大きな蛇のことを「うわばみ」と呼びます。大蛇は獲物を丸ごと飲み込んでしまうことから、その様子をお酒を大量に飲む様子に見立てて「うわばみ」と表現しているのです。
飲んでも語源が説明できるぐらい、よい飲み方を!
今回は「上戸/下戸」をはじめとした、お酒に関する日本語の表現と由来をご紹介しました。飲まない人も豆知識に、飲む人はぜひ、お酒の席で話題にしてみてください。
その際は、きちんと説明できる程度の「よい飲み方」の心がけをお願いします!