なぜバルサは”214億円”の大型補強を行ったのか?シャビのプランとサイドバックの問題。
マーケットの最終日まで、動き続けた。
スペインでは、9月1日に移籍市場がクローズした。この夏、話題を振りまいたクラブの一つが、バルセロナである。
■バルセロナと目玉の補強
「目玉の補強」となったのは、ロベルト・レヴァンドフスキだ。
シャビ・エルナンデス監督の強い要望があり、バルセロナは移籍金4500万ユーロ(約63億円)でレヴァンドフスキを獲得。ゴールスコアラーを確保した。
加えて、ラフィーニャ(前所属リーズ/移籍金5800万ユーロ)、ジュール・クンデ(セビージャ/移籍金5000万ユーロ)、フランク・ケシエ(ミラン/フリートランスファー)、アンドレアス・クリステンセン(チェルシー/フリートランスファー)らを獲得して、陣容を整えた。
移籍市場最終日には、エクトル・ベジェリンとマルコス・アロンソの獲得に動いた。両者は所属クラブと契約解除を行い、フリーでバルセロナ加入を決めている。
サイドバックの補強、選手起用というのは、シャビ監督の悩みの種だった。
シャビ監督は当初、セサル・アスピリクエタ(チェルシー)の獲得を熱望していた。だがアスピリクエタはチェルシーと2024年夏まで契約延長を行い、残留を決断した。
シャビ監督はセルジ・ロベルト、ロナウド・アラウホ、セルジーニョ・デスト、クンデを右サイドバックで試してきた。その実、「外側に張る」タイプの選手と対人に強いプレーヤーを好む傾向がある。デストに至っては、構想外となり、ミランにレンタル放出された。
また、バルセロナはジョルディ・アルバを移籍させる選択肢を検討していた。インテルへのレンタル移籍の話が進んでいた。
M・アロンソの獲得と、カンテラーノのアレックス・バルデの台頭で、アルバが不要になるという判断があったのかもしれない。あるいは、アルバの高年俸がネックだったのかもしれない。いずれにせよ、アルバが不信感を抱いてもおかしくない出来事だった。
■大物獲得と一貫性
バルセロナは今夏、1億5300万ユーロ(約214億円)を補強に投じている。
だがバルセロナは財政が潤っていたわけではない。そのため、テレビ放映権の25%の25年間分の譲渡と『バルサ・スタディオ』の49%の売却で、資金を捻出した。
「第四のレバー」まで動かして、お金をつくった。ただ、資産を切り売りした、という側面は否定できない。これを先行投資として回収できるかどうかは結果次第で、そういう意味で非常にリスクを伴った決断だった。
「私に名前を言わせないで欲しい。だが、我々は各ポジションに2人ずつ、トップレベルの選手を求めている。可能な範囲で補強をするつもりだ」
「我々は資産を売却したくなかった。しかし、我々は決定的な状況に置かれていた。いま、我々は病院から出て、アクションを起こすモチベーションに満ちている。この資産売却で、法に触れるようなリスクは冒していない」
これはジョアン・ラポルタ会長のコメントだ。
大型補強は素晴らしい。だがひとつ、触れておきたいことがある。
セルヒオ・アグエロ、エメルソン・ロヤル、ユスフ・デミル、エリック・ガルシア、メンフィス・デパイ、ルーク・デ・ヨング、アダマ・トラオレ、ダニ・アウベス、ピエール・エメリク・オーバメヤン、フェラン・トーレス。この選手たちは2021−22シーズンにバルセロナが獲得したプレーヤーだ。
そのうち、現在残っているのはエリック、フェラン、メンフィスの3選手である。なお、メンフィスに関しては、ユヴェントス移籍が目前だった。
一貫性のない補強を行っていては、中長期スパンでジリ貧になるのは自明だ。その成果を測るのがまた「結果」だというのが、心許ない気がするのである。