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見られるか?全天で2番目に明るい恒星「カノープス」

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
全天で2番目に明るい恒星カノープスを国内から見るチャンスは今! 提供:国立天文台

冬の星座を楽しもう

 冬の時期、国内では晴れると空気が澄んでいますので、夜空を見上げると普段より星々がたくさん見えています。その中でもっとも目立つ星は、おおいぬ座のシリウスです。シリウスはマイナス1.5等星。地球から8.6光年離れた位置にある近い距離の星でもあり、夜空の中で、金星や木星などの惑星を除くと、ずば抜けて明るく輝くもっとも明るい恒星です。シリウスから時計回りにこいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲルを結ぶと冬のダイヤモンドとも称される大きな六角形が出来ます。さらに、その六角形の中にオリオン座のベテルギウスがオレンジ色の光を放っています。

 人々にもっともよく知られた星の並びは、北天の北斗七星と並んで、冬のオリオン座だそうです。1等星2つと2等星5つで構成された鼓(つづみ)の形は覚えやすい特徴的な星の並びです。勇者オリオンのベルトの位置にあたる「三ツ星」は、東の地平線からは縦に3つ並んで登場し、南天高くをほぼ横に並んだ形で通過していきます。つまり、星座は東の空、南の空、西の空と移動とともに、見える角度が変わっていきます。時刻が変わると傾きが変わる勇者の姿を確認してみましょう。

 地上から眺める夜空で月と惑星を除くと、星座を形作っている星、すなわち恒星の中で、明るい順に1位=マイナス1.5等のおおいぬ座のシリウス(8.6光年)、2位=マイナス0.7等のりゅうこつ座のカノープスという順になります。

豪華な冬の星空 提供:国立天文台
豪華な冬の星空 提供:国立天文台

カノープスを探してみよう

 シリウスは、「冬の大三角」をオリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオンと形作っていて、とても見つけやすい星です。一方、全天で恒星としては2番目に明るいカノープスを見たことがある人は少ないのでは? カノープスは、日本国内からは、南天の低いところ、地平線からわずかに顔をのぞかせるか、のぞかせないかという星です。このため、古くからこの星を眺めると縁起が良いという伝承が各地にあるようです。おとなりの国・中国では、この星を南極老人星と呼び、「この星は戦乱の際には隠れ、天下泰平の時にしか姿を見せない」という信仰があったそうです。

 場所は、ほぼシリウスの真南(若干、東より)。シリウスからこぶし3つ半分(35度)も南に下がったところなので、シリウスが真南に来る時刻の少し前の時間が見つけるチャンスです。南の地平線・水平線が見えているような開けた場所でないと無理です。残念ながら緯度で福島県以北だとほぼ無理かと思います(カノープスの赤緯は-52.7度のため、幾何学的に観測可能な北限は北緯37.3度、福島県いわき市あたり。ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるので、実際の位置より浮き上がって見えます。これを「大気差」と呼びますが、大気差も考慮に入れると、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたりが北限のようです)。今の時期は、空が澄んで乾燥している日が多いので、東京など関東以南からは、カノープスを見ることが比較的容易です。ただし、今年は積雪も多く危険ですので、無理をして冬山等から見えるか挑戦することのないようお願いします。

 地平線低いところなので、大気に光が吸収されて、1等星のように明るく輝かないかもしれません。また、色も本来は白っぽい星ですが、夕日と同じ原理で赤っぽく感じるかもしれません。カノープスが真南にやってくる時刻は東京では、2月17日では午後8時17分頃になります。その時の高度は僅か1.9度。2月中はチャンスがありますので、是非、地平線または水平線まで見渡せる場所で、澄み切った晩にチャレンジしてみてください。

カノープスの探し方 提供:国立天文台
カノープスの探し方 提供:国立天文台

詳しい情報は、国立天文台のホームページの「ほしぞら情報2018年2月」、カノープスをみつけよう(2018年2月) をご覧ください。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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