「天井の無い監獄」ガザの子ども達を救え!日本のNGOが奮闘―コロナ禍で支援の必要性高まる
新型コロナウイルスの世界的な流行に、医療や社会保障のリソースが大きく割かれる中で、苦境にあるのが紛争地の人々だ。パレスチナ自治区ガザも元々、厳しい状況であったが、コロナ禍により状況はますます悪化。とりわけ、子ども達は慢性的な栄養失調に苦しんでいる。こうした中、現地への支援に動いているのが、日本のNGOだ。クラウドファンディングなどネット上での募金集めを行い、栄養価の高い食料や医療物資の調達、通院が必要な子ども達への支援に使うという。
○「天井の無い監獄」パレスチナ自治区ガザ
イスラエルとエジプトに周囲を囲まれた飛び地、ガザは「天井の無い監獄」と呼ばれる。東京23区の半分程度の土地に暮らす約200万人の住民達は、ガザ外部にはほとんど出ることが出来ず、物資の搬入・搬出も極端に制限され、住民の8割は国連による援助によって生活している。既に10年以上続く、イスラエルによる封鎖でガザの経済は崩壊し、度々行われるイスラエル軍の攻撃によって、人々の住宅や、発電所や下水処理場などのインフラも破壊されている。これは重大な国際法違反であるが、国際社会はガザ封鎖を放置し続けている。
【動画】凄惨を極めたイスラエル軍によるガザ攻撃(2014年) 筆者撮影
○8割の家庭が援助に依存、深刻な栄養失調
厳しい環境の中で、子ども達も困難に直面している。ガザへの支援活動をしている日本のNGO「日本国際ボランティアセンター」(JVC)のパレスチナ現地代表の山村順子さんは「貧困が深刻なガザでは子ども達の栄養失調が深刻です」と語る。「ガザ地区では、貧困率が5割を超えます。そのため、栄養のある食材を購入することが難しい家庭が多く、68%の世帯が食糧不足に陥っています。また、80%の家庭が食料を国際援助に頼っています」(山村さん)。
栄養についての基本的な知識の欠如も問題だ。「一見健康そうでも、実は栄養不足になっている子どもが多いのです。医療体制も整っておらず、ガザの子どもの3割が、貧血やくる病*など、長期的な栄養失調からくる疾患を抱えています。これらの疾患は、子ども達のその後の人生にも影響してしまいます」(山村さん)。
*ビタミンD不足による骨の異常が生じる病気
○コロナ禍で状況はさらに深刻に
JVCは、これまでも、鉄分・ビタミン剤配布や、子どもの健診、栄養不良の子どもの医療機関への紹介を含むフォローアップ、保護者への栄養や発達・発育の講習、子育てのカウンセリングなどの支援を行ってきたが、元々、厳しかったガザの状況は、コロナ禍でさらに輪をかけて悪化している。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染予防のための外出規制で工場や建設現場で働く日雇い労働者など約1万2000人が職を失いました。また、国際支援の予算の多くは直接的なCOVID-19 対策に割かれています。そのため、その他の通常のガザ支援のための資金調達が難しい状況なのです」(山村さん)。
○ガザの子ども達を救おう!
そこで、JVCはクラウドファンディングでガザ支援のための資金調達を行うことにしたのだという*。今回、JVCが計画している支援計画は以下のようなものだという。
- 地域保健促進員(ボランティア)40名の育成
- 子どもの健診や子育て相談等のための保健師と地域保健促進員による家庭訪問
- 補助栄養剤や食料の配布
- 地域での栄養や健康等の前向き子育て講習
- 正しい感染予防行動の啓発活動
山村さんはガザ支援継続の必要性を訴える。
「活動を中断すれば、健康状態が支援以前の状態に戻ってしまう恐れもあります。また、栄養状態が悪いと免疫力が低下し、感染リスクも高まります。今このコロナ禍を乗り切るためにも、そしてその先の子どもたちの未来にとっても、感染予防啓発と並行して現在の活動を続けていくことがとても重要です」(山村さん)。
政府による支援に比べると、NGOの支援は小規模ではあるが迅速で確実に現地に届き、スタッフや支援を受け取る人々の顔の見える良さがある。国際支援も報道もコロナ禍に集中しがちだが、だからこそ、それ以外にも大切な支援があること、その支援を必要としている人々がいることを忘れないようにしたい。
(了)
*JVCのパレスチナでの活動については、同団体の公式ウェブサイトを参照。