食べログ「ワンコインランチ」は「ランチパスポート」に勝てるのか?
ワンコインクーポンが熱い
世間では「ワンコインクーポン」(それらしい名称がないので、私が勝手に命名した言葉です。後で説明します)がブームとなっています。これまでは書籍だけの展開でしたが、「食べログ「ベストレストラン2014」に探り箸」でもご紹介した食べログが参入してきてWebにまで広がってきました。
食べログに勝機はあるのでしょうか。
ランチパスポートの成功
まず簡単に歴史を辿ってみると、「グルメブーム、2014年の振り返りと2015年の展望」でもご紹介した「ランチパスポート」がワンコインクーポンの先駆けとなります。
ランチパスポートはランパスという愛称で親しまれている本で、990円で販売されており、「ランチパスポートを持参すれば、通常700円以上のランチを500円で食べられる」ことが大きな特徴です。
2011年4月に高知で生まれると2013年には全国40地域にも及び、2014年4月には都内1号となる新橋・虎ノ門版、7月には渋谷・原宿・恵比寿版、8月には新宿版が出版され、赤坂版、池袋版など他の地域にも進出していきました。
新橋や赤坂ではランチタイムになるとランチパスポートを片手に持ち歩くサラリーマンを見掛けたり、ランチパスポートの案内を目立つ場所に掲げている店があったりと、もはやランチパスポートはランチタイムの風景に溶け込んでいます。
後発が続く
後発には、1000円で販売されている「ワンコインランチ」があります。池袋や巣鴨など豊島区を中心に展開しており、「この本を持っているだけで通常680円以上で提供されているランチを500円で食べることができるという魔法のような本!」と謳われています。
このようにワンコインクーポンはブームとなっており、宣伝したい店と得したい客と儲けたい出版社の誰もがWin-Win-Winな関係を築けているとあって、とても嬉しい感じで普及しています。
食べログが参入
ワンコインクーポンがここまで話題となり、よい結果も残せているとあれば、ランチパスポートやワンコインランチの成功をただ黙って眺めているだけではなく、他から参入してくることも容易に考えられるでしょう。
そして遂に、2015年3月10日にグルメサイトの巨人である食べログがワンコインランチを始めたのです。
サービス概要は以下の通り説明されています。
ワンコインクーポンの特徴
ワンコインクーポンの特徴についてまとめます。
- ワンコイン
定額でキリのよい500円
- 全店対象
掲載されている全店が対象に
- 期間限定
利用期間が設けられている
- 回数上限
利用回数の上限があり、本にスタンプしたり、Webで記録したりするなどして管理
- 利用人数
ランチパスポートと食べログのワンコインランチは1人、ワンコインランチでは最大3人まで
- 販売数
該当メニューが品切れとなることがある
食べログのワンコインランチは紙ではなくWeb、買い切りではなく月額、割引きはなしと、既存のワンコインクーポンとはいくつか違っていますが、ほとんどは同じといってよいでしょう。
期間、回数、利用人数、販売数に制限があるところは、店側の負担を軽減する措置であると言えます。
二重価格問題
私がワンコインクーポンで最も気になっているのは二重価格問題です。
ワンコインクーポンの核を成しているのは、掲載されている全ての店で、500円を超えるメニューが500円で食べられるところです。それこそが単なるカタログ本との差別化となり、ここまで流行した最大の理由となっています。
ランチパスポートでは通常700円以上、ワンコインランチでは通常680円以上のメニューと記載されているので、値引き率は30%程度となります。中には通常1000円を超えるメニューもあり、この場合には値引き率が50%以上となるので、店側の負担は小さくないでしょう。値引き率が大きいだけに、販売実績があるかどうかは重要ですが、詳しく明示されているわけではないので、真実は神のみぞ知るといった感じです。
ワンコインクーポンのためだけに新しくメニューを作った場合も判断が難しいでしょう。通常であれば1000円で販売していると言われても、販売実績がなければ釈然としないものがあるからです。
また、販売実績があったとしても、途中から質や量を落とす場合も考えられるでしょう。その場合には、以前を知っている人にしか値引き後の状態が適切であるかどうかを判断できないので、不正であるかどうか決めるのは難しいです。
これまでに起きた事件
これまでに起きた二重価格問題を振り返ってみましょう。
2011年に日本を席巻したフラッシュマーケティングのサイトで起きた事件が最も印象的だったのではないでしょうか。通常価格はおろか、50%値引きした後の価格とさえも明らかに質と量が釣り合っていないおせちを販売したことで社会問題になりました。
続いて、2013年に大手ショッピングサイトの店子が販売実績のない価格に対して値引き率77%と謳った商品を販売したことも記憶に新しいところです。
ワンコインクーポンの場合はこういった物販とは違って、店内で提供されてその場で食べてなくなってしまうだけに、不正がより発覚されにくいといった面があります。
レストランウィークでは
定額の食事イベントでは、「ジャパン・レストラン・ウィーク」、「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」や「イタリアン レストランウィーク」があり、どれも毎年開催されて成功していますが、ワンコインクーポンとは事情を異にします。
というのも、開催期間中にだけイベントに合わせた手頃な値段のメニューを提供しているからです。ワンコインクーポンとは違って、通常いくらのメニューを割引きして販売しているわけではないので、二重価格とは関係がありません。
単なる500円メニュー
ランチパスポートやワンコインランチは割引きが目玉となっているだけに二重価格問題がつきまとってしまいますが、食べログのワンコインランチは通常価格から値引きされているわけではなく、提供されたメニューを500円(税抜き)で食べられるというだけなので二重価格問題から解き放たれています。
よく考えてみると、ランチパスポートもワンコインランチも、食べログのワンコインランチも500円(食べログのワンコインランチは税別)で食べられることに違いはありません。
食べログは、あえて値引きにこだわらず<単なる500円メニュー>とだけ打ち出したり、<ワンコインランチ>と謳いつつもちゃっかり税別で売り出したりしていますが、今回のワンコインクーポン戦争でも、不正レビューの防止に努めるなどしてレビューサイトとして不動の地位を築いてきた時と同じように、ユーザと店との間で絶妙なバランス感覚をとり、大きな風穴を開けそうな気がします。
元記事
レストラン図鑑に元記事が掲載されています。