タタリを起こした樹齢700年のタブノキと建て替え予定の木造駅舎 土讃線 讃岐財田駅(香川県三豊市)
香川県の多度津から、徳島県阿波池田を経て高知県に入り、高知を経て窪川に達する土讃線。起点の多度津から6駅目、香川県最後の駅となるのが讃岐財田(さぬきさいだ)駅だ。
平成18(2006)年1月1日の合併で三豊市となった旧:三豊郡財田(さいた)町にある唯一の駅だが、財田町の中心からは大きく離れている。香川・徳島県境を控えた山間の駅で、隣駅は秘境駅として有名な坪尻駅だ。列車の本数は極めて少なく、一日六往復しかない。
この駅の特徴は駅舎に寄り添って立つ巨大なタブノキだ。高さ13メートル、幹回り5.5メートルで、東西21メートル、南北21.3メートルに渡って枝ぶりを広げている。樹齢は700年と言われているが、あまりの古さに詳しいことはわかってないようだ。香川県の保存木に指定されている。
このタブノキにはこんな話が残っている。讃岐財田駅は100年前の大正12(1923)年5月21日に開業。駅の建設にあたりタブノキは切り倒されることになったが、当時はここに祠があって御神木となっていたことから、地元住民は「御神木を切り倒すとタタリがある」と切り倒しに懸念を示していた。駅の建設はそんな懸念をよそに進められたものの、不慮の事故で工事関係者に負傷者が相次いだことから、「タタリに違いない」としてタブノキは切り倒されずに残されることになったという。以来、100年に渡ってタブノキは駅の歴史を見守ってきた。
讃岐財田駅の駅舎は開業時のもので、JRになってから改装されている。タブノキに隠されるようにひっそりと存在しているため、その全貌は掴みづらい。まるでタブノキに守られるような格好だ。今年で築百年を迎えたものの、「広報みとよ」によれば年内に解体される方針だという。
駅舎の建て替えについて詳細は不明だが、他駅の事例から考えると小さな駅舎になるだろう。トイレはJRではなく三豊市が整備する予定だ。築100年の駅舎も見納めとなるが、樹齢700年のタブノキに比べればその歴史は短い。駅舎が建て替わっても、タブノキはこれまでと変わらず、これからも永きに渡って讃岐財田駅を見守り続けるのだろう。