子どもが蚊にさされると、すごく腫れます。病気でしょうか?
夏になると、小児科の外来では蚊に刺されたときの相談事が増えてきます。
たとえば、『子どもが蚊に刺されるととても腫れるのですが、なにかの病気なのでしょうか』と尋ねられることもよくあります。
小さい子どもは蚊に刺された後に、大人に比べ強く腫れることが多いのです。
なぜなのでしょうか。
今回は、その理由を簡単に解説をしてみたいと思います。
蚊に刺されたときの反応は2種類ある
蚊は、2016年の全国調査では44種類もいた(実際には100種類以上と考えられています)と報告されています[1]。
そのなかには人間を刺して血を吸う蚊がいて、その吸血時に蚊の唾液腺に含まれるタンパク質が皮膚に注入されて、『アレルギー性の炎症』が起こります。
蚊に刺された時の反応は、大きく2つに分類できます。
1つ目は、即時型という『すぐ起こる反応』で、もう1つが遅延型といって『遅れて起こる反応』です。
即時型反応は、刺されたあと20分程度でかゆくなったり赤くなったり膨らんだりする症状を最も強く起こしてきます。普通は、1~2時間ぐらいで収まってきます。
遅延型反応は、刺されたあと1日から1日半程度でもっとも強くなり、かゆみや赤みだけでなく、硬く熱を伴うような腫れが起こってきます。そして治るまでに数日から1週間程度かかります[2]。
蚊に刺されたときの反応は、年齢によって起こりやすさが異なります
生まれたばかりの赤ちゃんは、蚊に刺された時の反応をあまり起こしません。そして年齢が上がってきて乳幼児期になってくると遅延型反応が起こるようになってきます。
ですので、乳幼児期、たとえば1歳から2歳の子どもは、刺されてから数時間から2日後ぐらいまでに強く腫れやすいということになります。
そして小学校に入学する頃になってくると、遅延型と即時型、その両方が起こるようになってきます。
お年寄りになる頃には、即時型も遅延型も両方とも反応が起こりにくくなってきます。すなわち、おとなになってくると即時型が中心になって、子どもほどは強く腫れるひとが少なくなってくるということですね。
簡単にまとめるとこんな感じです。
保護者さんは、自分自身が蚊に刺された時の反応と子どもの様子を比べて見るものです。ですので、ご自身に比べて、蚊に刺されたときに強く長く腫れる1歳、2歳の子どもさんを見てびっくりされるのですね。
なお、蚊に刺されたときの即時型、遅延型反応は、刺された回数に影響を受けます。ですので、これらの反応はもともとの体質であったり、それまで蚊に刺された頻度によっても、症状の現れ方に差が出てきます[3]。
年齢だけでなく、個人差があるということです。
『本物の蚊のアレルギー』とは?
最初に、蚊に刺されたときの反応はアレルギー性の炎症とお話をしました。しかし、一般的な経過、すなわち、蚊に刺されて腫れたであるとか、症状が数日続くなどであれば蚊のアレルギーとは言いません。
まれに、蚊に刺されると発熱やじんま疹など全身の症状が起きるという『スキーター症候群』や、強いアレルギー症状であるアナフィラキシーを起こす場合があり、これらを『蚊アレルギー』と呼ぶとされています[4]。
また、これまで数百人程度の報告しかないとされているさらに極めて稀な『慢性EBウイルス感染症』という重篤な蚊のアレルギーと関係している病気があります。
『慢性EBウイルス感染症』を起こす方は、蚊に刺されたあとに39度以上発熱が数日間続き、リンパ節が強く腫れたり、刺されたところが水ぶくれになって大きなカサブタができ、カサブタが取れても深く掘れたような跡がのこってしまうような症状を起こします[5]。
子どもが蚊に刺されて強く腫れた、というケースの多くは遅延型反応
しかし、これらの重症の蚊のアレルギーは決して多い病気ではありません。
蚊のアレルギーという病名は、普段あまりつかいませんし、小さいときの蚊に刺されたときの腫れは、だんだん軽くなることが多いですよとお話しすると保護者さんも安心されることが多いです。
では、蚊に刺されると強く腫れる子どもには、どのように対応すると良いでしょうか。
まずは、腫れやすい方は虫除けで刺されること自体を予防しておいたほうが良いですよね。以前、Yahoo!個人でも記事を公開していますので[6]、参考にしていただければと思いますが、その記事でご紹介した表を再掲します。
そして、刺された場合は、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を内服したりすると症状が軽くなります。ドラッグストアでも購入することができる製品もありますので、薬剤師さんにご相談ください。
お子さんが蚊にさされて腫れることを心配されている方もいらっしゃるかもしれません。
でも今は外来が混み合っているので、受診もためらわれますよね。
この記事がなにかの参考になれば嬉しく思います。
【参考文献】
[1]Medical Entomology and Zoology 2016; 67:1-12.
[2]チャイルドヘルス 20(6): 469-469, 2017.
[3]Ann Allergy Asthma Immunol 1996; 77:238-44.
[4]Journal of Allergy and Clinical Immunology 2011; 127:852-4. e23.
[5]Allergol Int 2021; 70:430-8.