Yahoo!ニュース

金沢にできるZeppでワンマンライヴをしたい――石川県のアイドル・オモテカホ インタビュー

宗像明将音楽評論家
オモテカホ(撮影:山田康太)

東京進出を目指す石川県のアイドル

石川県を拠点に活動するアイドルのオモテカホとの出会いは2018年にさかのぼる。ある日、Twitterでフォローしてきたのが彼女だった。そのしばらく後、富山県を拠点にするアイドルの空野青空の主催イベントが渋谷であり、そこに出演したオモテカホに不意にフロアで話しかけられた。「あたしも東京に進出したいんで」。そう屈託なく笑う彼女の度胸をとても気に入った。ついでに言うなら、その日売られていたやけにセクシーな写真集「twenty one」も素晴らしかったのだが、それについては「若気の至りで」と言葉少なだった。

そんなオモテカホが、ソロとしては初の全国流通盤となるシングル「So good!!」をリリースした。歌うオモテカホも、プロデューサーのHIROYAも、MV監督の山田康太も石川県在住という布陣で制作されている。

オモテカホは、石川県金沢市を拠点にするアイドル・グループのおやゆびプリンセスのメンバーとして2013年にデビュー。2016年のおやゆびプリンセス解散後は、2017年から西金沢少女団にメンバー、そしてプロデューサーとして参加した。平行して、ソロ活動も活発に行い、2019年からは東京での定期公演もスタートしている。本当に東京進出をしているのだ。

デビューから7年目を迎えるオモテカホに、石川県のアイドル・シーンの現状、東京での活動の手応えを聞いた。

オモテカホ(撮影:山田康太)
オモテカホ(撮影:山田康太)

おやゆびプリンセスへの加入、そして解散

――おやゆびプリンセスに入る前は、アイドルになりたいと思っていましたか?

オモテカホ  思ってました。ちっちゃい頃から、ミニモニ。さん、モーニング娘。さん、プッチモニさんがすっごい好きで、大きくなったらアイドルになるもんなんだと思って生きてきたんです。でも、高校生ぐらいになったら、みんな真剣に進路のことを考えたり、将来の夢を考えたりするじゃないですか。そうなったときに、どうしようと思って。はじめ、堀越学園に行こうかと思ってたんですよ。

――堀越学園が芸能界の象徴だと。

オモテカホ  そう、それぐらいしか頭に考えがなくて(笑)。お母さんに堀越学園に行きたいって言ったんですけど、そんなのダメって言われるじゃないですか。そしたら、代わりにお母さんが、おやゆびプリンセスのオーディションを見つけてきてくれたんです。

――ぷにたん(現在はソロ・プロジェクトのキャンディランド教団で活動)や「特務メンバー」であおにゃん(空野青空)もメンバーにいましたね。

オモテカホ  「すごいものやったんやな」って思います。フランスの「Japan Expo」に出たり、オリコンのランキングの上位に入ったり、メジャー・デビューできたり。

――おやゆびプリンセスが解散したときは、どんな気持ちでしたか?

オモテカホ  やっぱり悲しかったです。地元の劇場で解散ライヴをしたんですけど、もう人が入りきらないぐらいで。そこに来れなかった人も含め、おやプリじゃなかったら出会ってなかった人もたくさんいらっしゃると思うし。そういう面では、本当にいろんな経験や出会いをさせてもらった場所だったなって思います。

ソロになって事務所で泣いていた

――おやゆびプリンセスが解散して、最初はどうする気だったんですか?

オモテカホ  働こうかなって、ふわっと考えてました。結婚式場の司会とかできるかなって。

――実際は、おやゆびプリンセス解散後に、石川県の西金沢を拠点にしたニシカネプロジェクトが生まれて、西金沢少女団が結成されます。並行してソロ活動も始まりましたが、「これでいけるな」という感触はありましたか?

オモテカホ  ないです。私、そんなに泣くほうじゃないんですよ。でも、事務所で泣いてました。オリジナル曲が1曲しかない状態でライヴをやってたんですけど、MCも歌もダンスも煽りも全部ひとりでやらなきゃいけないし、そうなったときに自分のスキルの低さがショックだったんです。やっぱり来なくなる人もいらっしゃるじゃないですか。そういうのもいろいろ重なって、しんどかったです。ずーっと成長してない感じとか、そういうのもつらかったです。

――「この活動でやっていける」という確信を得たのはいつごろですか?

オモテカホ  ソロとしては、1年経ったぐらいですね。身近にいるソロのアイドルのあおにゃんは、やっぱりすごいんだなってめちゃくちゃ思ったし、いいところは吸収したいなってすごく思いました。

――ソロと西金沢少女団の比重はどうなっていますか?

オモテカホ  ソロがメインではあるんです。西金沢少女団のほうは、ステージに立っている者としての意見を言わせてもらったり。衣装も実際に着てみて、動きやすさとか、全員がそろって立ったときに見える形とか、いろんな意見は言わせてもらってます。

周囲は出産や結婚が早くて話についていけなくなる

――石川県のアイドル・シーンというのはどんなものですか?

オモテカホ  他に、ぷにたん、亜人傭兵団Acht-Achtさん、JUMPIN'さん、ほくりくアイドル部さんがいます。北陸はアイドルが少ないし、昔からそういうエンターテインメントができにくいところはあって。石川県で知ってもらうには、東京で実績を作ってからのほうが受け入れられやすい気がするんです。あおにゃんが東京で活動してるのを見ると、うらやましいなって思います。やっぱり東京だと見てもらえる現場の数も多いし。

――ふだんは夜行バスで東京へ来ているそうですが、大変じゃないですか?

オモテカホ  大変です。でも、ライヴが楽しいから。私、歌うことがほんとに好きなんです。おやゆびプリンセスを辞めるときは、もう別にいいかって思ったりもしたけど、やっぱり歌が好きだから。これからアイドルっていう形じゃなくても、一生歌っていきたいなって思うし。

――中学、高校が一緒だった子たちの環境の変化を見ながら、「自分がアイドルをやっていて大丈夫なのかな」と不安になることはありませんか?

オモテカホ  不安はないけど、みんな出産とか結婚とかけっこう早いんです。周りの友達が出産したり結婚したりしたら、うらやましいとは思わないけど、話についていけなくなっちゃうんです。どこの病院がいいとか、どこの保育園がいいとか、どこの先生がいいとか、そういう話についていけなくなっちゃうのが寂しいです。

――それでもアイドルをやることに迷いはない?

オモテカホ   なんとも思わないです。特に結婚したいっていうのは今ないので。

――アイドルを辞めたいと思うことはないんですか?

オモテカホ  いや、何回も思いますよ。「歌うことが嫌いだからやめたい」とかじゃなくて、「考えることが嫌いだからやめたい」って思っちゃうんです。

――思考を放棄しようとしていますね……。

オモテカホ  ライヴがどうしたら良くなるかとか、そういうことは考えるんですけど、将来は……。石川県にZeppができるんで、そのZepp金沢でワンマンライヴをするのが目標なんですけど、そこに対して何をすればいいのかって言われたら……。

オモテカホ(撮影:山田康太)
オモテカホ(撮影:山田康太)

こんなに自分の顔が出てくるのは恥ずかしい

――大丈夫ですよ! そんななか、7年目にして初めてソロの全国流通盤のシングル「So good!!」が出ますね。作曲のHIROYAさんは石川県の方なんですか?

オモテカホ  兵庫県から石川県に引っ越してきた人なんですけど、その後関西でまた活動してから石川県に戻ってきて、事務所の中に作業部屋があるんです。レコーディング・ブースも作ったんです。

――MVの撮影は、アーティスト写真や写真集も撮っている山田康太さんですね。ディスクユニオンのdoles Uから全国流通するから、今までとクリエーターを変えるという発想はなかったんですか?

オモテカホ  なかったです。山田さんは、おやゆびプリンセスのときから5、6年撮ってもらっているので、他の人は考えたことがないです。

―― HIROYAさんとは、「こういう曲にしたい」と話しましたか?

オモテカホ  しました。それは伊勢さん(伊勢保彦。オモテカホのマネージャー)を含めた3人で話します。今回の「So good!!」のイメージは、あたしも作詞してるんですけど、やっぱり「いいね!」っていう言葉だったり、ステージから見える景色だったりとか。

――驚いたのは、MVのロケ地が神奈川県の横浜と鎌倉だったことです。やっぱり青空は石川県と違いますか?

オモテカホ  違います。関東のほうはやっぱりカラッと晴れてる。

――MVができあがって、自分で見た感想はいかがでしたか?

オモテカホ  ライヴ映像はいくつか撮ってもらったんですけど、ミュージック・ヴィデオはソロでは初めてなんですよ。こんなに自分の顔が何個も出てくるのって恥ずかしいなと思って(笑)。

――今年から東京定期主催ライヴ「SHINJUKU EXPEDITION」も始まりましたね。

オモテカホ  始めるまでは不安しかなかったんです。1月から始まったとき、6月までの予定を全部公開したら、お休みを合わせてくださる人もいらっしゃって、地元から遠征してくれる人もいらっしゃるから、それはすっごい嬉しいです。ゲストの方も、私が親しくしてる方ばっかりなので、ファンの人が「このゲストさん良かった」って言ってくださるのもすごい嬉しいし、ゲストさんのおかげもあってですけど、ちょっとずつ動員も増えてきてるので、始めて良かったなって思ってます。

――シングルも出して、今後の目標はあるでしょうか?

オモテカホ  目標枚数が自分の中にはあるんです。「オモテカホってこれぐらい売れるんだ」って思ってもらえる、最初の大切な1枚目だと思うので、ぜひ聴いていただきたいなと思います。

――石川県での活動についてはどうでしょうか?

オモテカホ  石川県のイベントだと、「加賀温泉郷フェス」や、中田ヤスタカさんも出たアソビシステムさんの「OTONOKO」にも出たんです。地元なので、どんどん呼ばれたいなって思うし、そこも目標です。

オモテカホ(撮影:山田康太)
オモテカホ(撮影:山田康太)
音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

宗像明将の最近の記事