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長女に13年、長男に8年。相手の男より稼ぐハル・ベリーが養育費の交渉に費やした年月と多額の支払い

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
共同親権を持つふたりの子供の養育費を払うハル・ベリー(写真:REX/アフロ)

 ハル・ベリー(57)が、またひとつ、長く苦しい争いを終えた。2015年に離婚を決めた3番目の夫でフランス人俳優のオリヴィエ・マルティネスと、親権と養育費の件でついに合意したのだ。

 ベリーとマルティネスの出会いは、2012年の映画「ダーク・タイド」。2015年10月、たった2年間の結婚に終止符を打つことをベリーとマルティネスが発表した時、離婚がこれほど難航すると誰も思っていなかった。2度の離婚を経験している上、結婚はしなかったが一緒に娘を授かった元パートナー、ガブリエル・オーブリーと親権および養育費についてさんざん揉めたベリーは、マルティネスと結婚するに当たり、しっかりした婚前契約(pre-nup)を結んだとされていたからだ。当時3歳になったばかりだったひとり息子マテオ君の親権は当然共同だろうし、どちらもちゃんと収入のある有名俳優だ。

 だが、ベリーの総資産が9,000万ドルと推定されるのに対し、マルティネスは3,000 万ドル。その差もあり、この元夫妻は、養育費の細かい金額や、誰が何を払うのかについて、その後8年も争っていたのである。ようやく出た結論は、マルティネスに有利なものだ。親権に関しては共同で、平等。マテオ君は月曜から水曜までベリーと、水曜から金曜までをマルティネスと過ごす。週末は交代で、学校が休みになる時は調整をする。

 しかし、お金の面では、収入の多いベリーが圧倒的に責任を持たされることになった。ベリーはマルティネスに毎月8,000ドル(約116万円)の養育費を支払うほか、私立校の学費、習い事や遊びにかかるお金、健康保険など、マテオ君に関するすべての経費を持つ。さらに、ベリーが1年に200万ドルを超える収入を得た場合、その4.3%をマルティネスに払うことも決められた。200万ドルぴったりだった場合、マルティネスは8万6,000ドル(約1,245万円)をもらえることになる。

ハル・ベリーとオリヴィエ・マルティネスは息子マテオ君を授かった
ハル・ベリーとオリヴィエ・マルティネスは息子マテオ君を授かった写真:ロイター/アフロ

 これは、今年5月にオーブリーとの間で新たに決められた養育費の条件にならったものと思われる。

 ベリーと10歳下のカナダ人モデル、オーブリーの出会いのきっかけは、2005年11月、ヴェルサーチの写真撮影。離婚に懲りていたベリーは、結婚しないまま、オーブリーとの間にひとり娘ナーラちゃんを授かる。だが、2010年に破局すると、ベリーがすぐにマルティネスとつきあい始めたこともあり、泥沼の争いが始まった。ベリーはパパラッチに悩まされることのないフランスで、マルティネス、ナーラちゃんとの新生活を希望するも、ロサンゼルスに住むオーブリーは、娘に会えなくなると大反対。裁判所はオーブリーに同意し、ベリーとマルティネスの計画は頓挫した。そんなこともあってマルティネスとオーブリーはお互いを嫌い合い、暴力沙汰にもなっている。

 2012年、ようやくベリーとオーブリーは共同親権に関しての細かい条件に合意。その1年半後に裁判所が言い渡した養育費の取り決めは、ベリーが毎月オーブリーに1万6,000ドルを払うというものだった。しかも、過去を遡った分として11万5,000ドルと、オーブリーの弁護士代30万ドルも支払うようにも言い渡されている。ナーラちゃんが通う私立校の学費はベリーが持つが、健康保険はふたりで折半することになった。

ハル・ベリーとモデルのガブリエル・オーブリーは写真撮影で出会った
ハル・ベリーとモデルのガブリエル・オーブリーは写真撮影で出会った写真:ロイター/アフロ

 この条件に不満なベリーは再度の交渉を要求し、2021年、月々の支払いを8,000ドルに減額してもらうことに成功。その代わり、健康保険はすべて持ち、1年の収入が195万ドルを超える場合、その4.3%をオーブリーに支払うことに同意している。しかし、今年5月には、4.3%の支払いの対象となる年収の上限を450万ドルとするという新たな合意を取り付けることに成功した。ベリーのギャラは映画1本あたり1,000万ドル前後と言われているが、実際にそのギャラで1年に1本映画に出た場合、ギャラのおよそ半分に対してだけ、4.3%の支払いが発生することになる。

養育費を自分の贅沢のために悪用している

 これと同じ上限の条件はおそらくマルティネスに対してもつけられていると思われるが、それでもこれから毎月ふたり分払っていくのは、楽ではない。ナーラちゃんは現在15歳、マテオ君は9歳で、まだ数年ある。

 オーブリーとの再交渉が成功する前の2021年2月、ベリーはインスタグラムに、「これを払うために毎日すごく大変なのよ。間違っている。強奪だわ」、「私は養育費を10年以上払ってきている。男性であれ、女性であれ、子供を養育するのに必要な額以上を払わされるのは間違っている。手助けを必要とする親(男性であれ、女性であれ)がいるのはわかるけれど、今の時代、男性も女性も、自分の子供を経済的に支えられるように一生懸命働く努力をするべきよ」、「今の法律は、人が子供を利用して、自分の身の丈以上の生活を送り、子供が必要とする以上のものをもらえるようになっている。それはおかしい。悪用がたくさん起きている。法律は古くて、今の世の中に合っていない。これは私の意見だけれど、私は毎日を生きていて、とても大変だと感じているわ。法のシステムに利用されていると感じている男性たちの気持ちがよくわかる」と本音を書き込んでいる。コメント欄でのほかの人々とのやりとりの中で書かれたこれらの発言は、すでに削除されている。

2009年、ナーラちゃんを連れて外出するハル・ベリーとガブリエル・オーブリー
2009年、ナーラちゃんを連れて外出するハル・ベリーとガブリエル・オーブリー写真:Splash/アフロ

 養育費の名目でもらったお金で元配偶者が贅沢をすることへの懸念は、つい最近、ケビン・コスナーも訴えたばかりだ。5月に離婚申請をしたコスナーの妻で元ハンドバッグデザイナーのクリスティーン・バウムガートナーは、3人の子供の養育費としてコスナーに月24万8,000ドルを要求したが、コスナーは「子供とまるで関係のない、服、ジュエリー、美容など自分のことに大金を使うクリスティーンは、養育に必要な金額を極端に多く見積もっている」と反論した。

 最終的に、裁判所は、月12万9,755ドルの養育費の支払いをコスナーに命じている。バウムガートナーが求めた金額の半分だが、コスナーが考えていた金額よりずいぶん多い。養育費は、親の破局によって子供たちが生活レベルを大きく下げることを強いられないようにということも考慮されて決められる。

不倫をされても”慰謝料”は取れない

 ベリーは、子供のいなかった最初の2回の離婚でも苦労をした。最初の夫でメジャーリーグ選手のデビッド・ジャスティスとの離婚で、ベリーはジャスティスに対する接近禁止命令を申請。離婚後、ベリーは自殺をしようとするも、母を悲しませたくないと、ぎりぎりで思いとどまったと語っている。ミュージシャンのエリック・ベネットと再婚する時には婚前契約(pre-nup)を交わしていたにもかかわらず、離婚においてベネットは元配偶者サポートを要求してきた。結局、ベリーは払わずに済んでいる。

婚前契約をしていたにもかかわらず、離婚においてエリック・ベネットは元配偶者サポートを要求してきた
婚前契約をしていたにもかかわらず、離婚においてエリック・ベネットは元配偶者サポートを要求してきた写真:ロイター/アフロ

 ベリーは、結婚中、ベネットが27回も不倫をしたと訴えているが、ベネットは不貞をした事実は認めながらも、「27回というのは大きな誇張」だと反論している。カリフォルニア州では、日本と違って離婚においてどちらが有責かは関係なく、相手が不倫をしたとしても“慰謝料”は発生しない。ベネットとの婚前契約が具体的にどんな内容だったのかはわからないが、ベリーは彼と結婚していた2001年から2005年の間に「チョコレート」でオスカー主演女優賞を受賞し、「ソードフィッシュ」、「X-MEN 2」、「007/ダイ・アナザー・デイ」などハリウッドの娯楽大作に出演したので、ベリーは彼にいくらか払うことになったと思われる。

今年3月、放送映画批評家協会賞(Critics Choice Awards)授賞式に出席したハル・ベリーとヴァン・ハント
今年3月、放送映画批評家協会賞(Critics Choice Awards)授賞式に出席したハル・ベリーとヴァン・ハント写真:REX/アフロ

 そんなベリーは、2020年から、ミュージシャンのヴァン・ハントと交際を始めた。ベリーのインスタグラムには、ふたりの仲良しショットがたくさん投稿されている。昨年3月、「Us Weekly」は、ふたりは婚約について話し合っていると報道した。ハントに会う前、ベリーは「もう二度と結婚しない」と友人に宣言していたそうだが、これを最後の結婚にすることを考えているのだそうだ。それから1年半近くが過ぎたが、今のところ、まだふたりの婚約のニュースはない。ハントの総資産は200万ドルと推定されている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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