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6年先までスケジュールが一杯。70歳目前のデンゼル・ワシントンが仕事に求めるもの

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
L.A.で会見に応じたデンゼル・ワシントン(筆者撮影)

 来月28日に70歳の誕生日を迎えるデンゼル・ワシントンが、まだまだ仕事への意欲に燃えている。現地時間18日、ロサンゼルスのホテルで記者会見に応じた彼は、「この先、8年とは言わないが、6年先まではスケジュールが埋まっている」と明かした。

 すでに2度オスカーを受賞し、「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」でもまた候補入りがささやかれているワシントンは、誰もが一度は組みたいと願う実力派スター。だが、彼は自分からも積極的に好きな映画監督にアプローチしているのだという。

「スティーブ・マックイーン、ライアン・クーグラーなどの監督と話をしているよ。今の僕は、監督で決める。最高の人たちと仕事をしたいんだ。スティーブやライアンがどんなものを書いたとしても、僕はやる。組みたいと言ってくれる優れた映画監督と約束するのさ。組んでくれるかどうかわからない人とも話をするけれどね。たとえば、ポール・トーマス・アンダーソン。『あなたの映画がとても好きです。次に何を考えているんですか?』と電話をしたよ。その会話が何かにつながるのかどうかはわからないけれど、僕はとにかくすばらしい監督と仕事をしたいんだ」

 ワシントン自身も、何度か監督をしている。だが、監督としての自分の力量については非常に謙虚。前述した監督に加え、「グラディエーター〜」のリドリー・スコットや、ワシントンが製作し、今月Netflixで配信される「ピアノ・レッスン」を監督した息子マルコム・ワシントンのことは“フィルムメーカー”と尊敬を込めて呼ぶ一方、自身については“映画を作る人”と差別化する。

「優れた監督は、パイロットのようなもの。信頼できるパイロットとなら、安心して飛行できる。僕は客席に座りながら高いところまで行くんだ。リドリーは、他の誰とも違う形で飛行機を操縦する。“映画を作る人”と“フィルムメーカー”は同じではない。僕はいくつかの映画を監督したが、違いをしっかり感じるよ。リドリーは巨匠。僕の息子もフィルムメーカーだ。僕は、自分が監督する映画に俳優として出たくないね」

 そう語るワシントンが今、キャリアのこの段階で意識しているのは、「お返し」をすること。

「学ぶ、得る、お返しをするという段階があると、誰かが言っていた。僕は今、お返しの段階にいる。自分がいただいた恵みを返す時だ。お金という意味ではないよ。それは以前からずっとやってきている。僕が言うのは、自ら経験したこと、あるいは自らの経験に欠如していることを、他人の手助けに使うということさ。僕は、ひどい映画に出たこともある。それは楽しくない。みんなに優れた仕事をして欲しいんだ」

 次の仕事は、来年2月に始まるブロードウェイ劇「オセロ」。また、黒澤明の「天国と地獄」をスパイク・リー監督でリメイクした「High and Low」も控える。映画ファンには嬉しいことに、彼はこれからもすばらしい形でサプライズを提供してくれそうだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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