トランプの宿敵コメディアン「僕を刑務所に入れるならテイラー・スウィフトと一緒にして」
大統領選挙の結果が判明して以来、ハリウッドは押しつぶされそうな重いムードに包まれている。マイケル・ムーアやロブ・ライナーのような、積極的にトランプ批判、民主党支持の声を上げてきたセレブのソーシャルメディアも、選挙当日の朝を最後に更新されていない。
だが、平日深夜のトーク番組「Jimmy Kimmel Live!」を持つコメディアン、ジミー・キンメルは、選挙の翌日である現地時間6日、番組でこのテーマを取り上げ、思うところをはっきりと語った。
容赦なくテレビで自分を批判するキンメルをトランプは毛嫌いし、「全然面白くない」など、以前から公に悪口を言ってきている。そんな宿敵がまた大統領になるとあり、キンメルは、「ひとつだけお願いしたいのは、僕を刑務所に入れるならテイラー・スウィフトと一緒にしてということ。僕はブレスレットを作るのが上手いですし、彼女と気が合うと思うので」と、ブラックなジョークを飛ばした。
「僕たちには検察官と犯罪人の選択肢がありました。そして国民はアメリカの大統領に犯罪者を選んだのです。この国の半分以上が、自分に恩赦を与えるつもりでいる犯罪者に票を入れたのですよ」と、いつもの明るい調子で語り、笑いを取ったキンメル。しかし、「昨夜はひどい夜でした。女性たちにとって、子供たちにとって、この国が機能するように一生懸命働いている移民の人たちにとって、健康保険にとって、環境にとって、科学にとって、ジャーナリズムにとって、司法にとって、言論の自由にとって、ひどい夜でした。貧乏な人、ミドルクラス、年金頼りの高齢者、ウクライナ、NATO、真実、民主主義、良識にとっても、ひどい夜でした」と言う時の彼は、必死で涙をこらえていた。
トランプに票を入れた人にとってもひどい夜だった
そんな彼は、「トランプに票を入れなかった人たちにとって、ひどい夜でした。実は、トランプに票を入れた人たちにとってもひどい夜だったのです。その人たちはまだそれに気づいていないだけ」と、トランプを支持した人を批判。さらに、「ですが、プーチンにとってはすばらしい夜でした。ポリオ、イーロン・マスクのような愛らしいビリオネア、残っていたいくばくかの魂を売ってドナルド・トランプに媚びたシリコンバレーの男たちやうじ虫たちにとっても」と、辛辣な言葉を続けた。
開票結果が続々報道されるのを見ながら「パスポートはどこにしまったんだっけ?と思った」と、アメリカを離れたい気分にもなったことも明かすキンメル。この番組では何かポジティブなことも語りたいと思ったというが、「唯一思いついたのは、僕たちは一度これを乗り越えているということでした」。それでも、今回は、前回のトランプ政権時よりもひどいことが待っているだろうと警告。「ですが、長い目で見たら、僕たちの目を覚まさせるためには、これが必要だったのかも。トランプを好きな人たちに、トランプは自分たちのことなどどうでもいいのだと気づいてもらうことが必要だったのかもしれません」と、ここでも手厳しい。
そこでキンメルは、矛先をトランプ自身に向ける。
「戦争を止めるとか、関税を課すとか、インフレを抑えるとか、税金をカットするとか、そういうさまざまな約束を、彼はこれから果たさなければなりません。彼が実際にやってくれることを僕も願います。本気でね。予測できない行動を取る彼が、反対側に手を差し伸べ、何かポジティブなことをしてくれたりすることも願っています。彼への期待度はとても低いんですし、僕たちを感激させるのは可能です」。
続けて彼は、「いえ、これに関して唯一の良いことは、彼が2028年には立候補できないことでしょうか。次の選挙に、共和党はオランウータンを指名したりするのかも。良いんじゃないですか?少なくともそれなら楽しくはありますし」と、犯罪人であることを知っていながら、またもやトランプを党の代表に指名した共和党を揶揄している。
選挙に興味のない人たちも笑いのネタにする
最後にキンメルは、そもそも選挙に興味がない人が多かったことにがっかりしたとして、その日の昼間、街頭にて一般人に声をかけた映像を披露した。
選挙は前日である現地時間の火曜日に終わっているのだが、インタビュアーが「今日は11月6日水曜日。選挙の日ですが、投票に行きますか?」とカマをかけると、声をかけられた男性は、はっきり「イエス」と答えた。次に「ジョー・バイデンにまだ勝ち目はあると思いますか?」と聞かれると、これまた「イエス」と答えている。バイデンがとっくに大統領候補から降りていたことも知らないということだ。
「今日、誰に投票するつもりですか」と聞かれた別の男性は、「カマラ・ハリスだ。僕らは彼女を信じている」と笑顔で返答。別の女性も、「カマラが勝ってくれることを望んでいるわ」と、堂々と述べた。質問されたのは全員若者だったが、彼らは次の大統領が決まって世の中が大騒ぎしていることも知らないということか。キンメルの言うとおり、がっかりしてしまう。
今夜の番組でキンメルがまた何を言うのか楽しみだが、今週土曜日には「Saturday Night Live」がある。タイムリーな事柄を笑いのネタにするこの番組が、大統領選の結果をネタにするのは確実だ。先週の回にはカマラ・ハリス本人がサプライズ出演し、大いに盛り上がったところだが、この暗い展開を彼らがどう扱うのか、非常に興味深い。
いずれにせよ、トランプが再び大統領になったことで、コメディアンには格好のジョークのネタの宝庫ができた。これから起こる恐ろしいことに対しては、確固とした態度で立ち上がるのはもちろんだが、暗い状況を乗り切るには笑いも必要。残念ながら、今、アメリカは、まさにそれを必要としている。