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大相撲初場所を制した横綱・照ノ富士 大関昇進確実の琴ノ若ら若手を退け見せつけた強さ

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
9度目の優勝を果たし、賜杯を受け取る照ノ富士(写真:日刊スポーツ/アフロ)

「終わってみれば照ノ富士」。この言葉を、再度久しぶりに口にすることになるとは、場所が始まるときには筆者も想像していなかった。気力と精神力の横綱が、その強さをあらためて見せつけた復活の場所となった。

本割を制した照ノ富士と琴ノ若が共に堂々の13勝

大相撲初場所千秋楽。2敗でトップを走るのは、横綱・照ノ富士と関脇・琴ノ若の2人。琴ノ若は勝ち越しをかける翔猿と対戦したが、冷静に相手を捕まえ、危なげなく勝利。2敗のまま、横綱の結果を待つ。

一方の照ノ富士は、3敗で2人を追いかける大関・霧島を迎え撃つ。綱取りのかかる場所だけに期待されていた霧島。しかし、立ち合いから横綱に左を差されて抱えられ、そのまま軽々と土俵外へ持っていかれてしまった。

まだ一度も勝ったことのない横綱に、またも跳ね返された霧島。綱取りは白紙に戻ってしまったが、持ち前の真面目さと向上心の高さで、きっとまた近くチャンスが巡ってくるに違いない。

優勝決定戦で「格の違い」見せつけた横綱

ドラマの行方は優勝決定戦に委ねられた。本割では横綱が勝っていたが、琴ノ若にも十分勝機はあると思われた。常に冷静な横綱と、気迫にあふれた表情の琴ノ若。緊張の糸が張り詰める。

立ち合い。琴ノ若が一瞬もろ差しになり右下手をつかむが、横綱は構わず攻め寄る。琴ノ若が回り込んだところで、照ノ富士がうまく左を下手に巻き返した!そこから腰を寄せて、寄り切り。休場明け、堂々の「復活優勝」の瞬間だった。

常々「若手の活躍に期待している。次の横綱、大関が早く誕生してほしい」と願う照ノ富士。だが、その本心とは裏腹に、まだまだ彼らの最後の壁になれる、なっていくのだという事実と心意気を見せつける結果となった今場所。若手の台頭が注目される昨今の角界だが、その看板として重責を担う横綱が、番付の重みをあらためて示してくれたことに、心からの賞賛を送りたいと思う。

琴ノ若は大関昇進濃厚 若手力士たちもさらなる飛躍へ

一方、決定戦で惜しくも横綱に跳ね返された琴ノ若。場所前に応えていただいたインタビューでは「優勝を目指したい」と明言していたが、その目標をかなえることができずに悔しそうな表情を浮かべた。しかし、堂々の13勝で初の技能賞を手にし、場所後の大関昇進が濃厚に。来場所以降は番付をひとつ上げて、さらなる躍進が期待される。

最後まで優勝を争った琴ノ若、そして霧島に加え、新入幕でその存在感を存分に示して敢闘賞を受賞した大の里、新十両ながら初日から9連勝して十両優勝を果たした尊富士など、若手力士たちの活躍も目立った今場所。来場所以降への期待がふくらむよい場所だったのではないだろうか。初場所の余韻は長いが、2024年はまだ始まったばかりだ。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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