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元幕内・石浦の間垣親方が6月に国技館で引退相撲開催 ケガで長期休養中の弟弟子、炎鵬にエールも

飯塚さきスポーツライター
6月1日に国技館で引退相撲を行う間垣親方(写真:日本相撲協会提供)

172センチと小兵ながら筋肉質な体型で大きな相手にも立ち向かい、土俵を沸かせた元幕内・石浦。昨年5月場所後に引退し、現在は間垣親方として協会の運営や弟弟子たちの指導に当たる。そんな間垣親方が、6月1日(土)に両国国技館で引退相撲を開催予定。断髪式の準備の様子に加え、親方としての現在の生活、さらにはケガで長期休場中の弟弟子・炎鵬への思いも聞いた。

断髪式ではコラボグッズも「凝って作りたい」

――6月1日に引退相撲を開催される間垣親方です。現在、断髪式の準備の様子はいかがですか。

「隠岐の海関(君ヶ濱親方)と豊響関(山科親方)にいろいろと聞いています。最初の頃に『心病んでくるよ』って言われたんですが、始まってみていまその気持ちがすごくよくわかります(苦笑)。お土産は何個作ったほうがいいとか、物販はどんなものがいいとか、細かいことですがアドバイスをもらっています」

――いま言える範囲で、グッズや催し物などどんな計画を立てていますか。

「現役中に着物などをデザインしていただいた方に、Tシャツや反物のデザインをお願いしています。いろんな自分の好きなものとコラボできたらいいなと思っていて、例えば自分は浮世絵が好きなので、僕の写真を見て浮世絵を描いていただいたりもしました。催し物は未定ですが、鳥取城北高校出身力士でのトーナメントなどができたらいいなとは思っています。特にグッズは凝って作りたいと思っているので、楽しみにしていただけたらうれしいです」

自身の似顔絵の浮世絵でデザインした、引退相撲の新しいポスター(写真:筆者撮影)
自身の似顔絵の浮世絵でデザインした、引退相撲の新しいポスター(写真:筆者撮影)

――髷への思いは。

「最初、引退相撲が決まったときには寂しかったんですが、いまはちょっと忙しすぎて、早く終わりたい気持ちも出てきています(笑)。髪型は決まっていないんですが、めちゃくちゃ短くしたいです。ちょんまげをずっと結っていると、長年引っ張られていた髪が立っちゃうらしくて、イガイガ頭になったら嫌だなと、そこは心配しているんですけど、髪を洗った後や汗をかいた後に楽かなと思うので」

炎鵬は「強い男」 親方としての今後は「力士とたくさん会話したい」

――あらためて、引退に際する経緯と心境をお聞かせください。

「2年前の大阪場所で首をケガして、そのケガが治らず、昨年の5月場所後に引退しました。正直に言うと、もう少し続けたかった。その気持ちは、いまもあります。自己最高位(前頭5枚目)で、自分のなかでも手ごたえをつかんだ矢先のケガだったので、いま警備などで花道に立って土俵を見ていると、いいなあ、自分もやりたいなと感じます。しかし、人生いろいろなので、それは仕方ないですね」

――引退して1年弱。親方の業務には慣れましたか。

「年寄総会とかに行くと委縮してしまうというか、なるべく存在を消しています(笑)。そういう場では(親方衆が)一気に集まるので…」

――わあ、それは…ビビりますね。

「そう、そうです、ビビっています。まだ全然慣れていないです」

――生活はどう変わりましたか。

「現役のときは、家族と一緒にいても本場所のことや相撲のことなど、全然違うことを考えていることが多かったんですが、最近はしっかり家族と話せているなと思います」

現役時代の間垣親方。引退した現在は、家族との時間が増えていると穏やかな表情を見せてくれた
現役時代の間垣親方。引退した現在は、家族との時間が増えていると穏やかな表情を見せてくれた写真:長田洋平/アフロスポーツ

――それはいいことですね。炎鵬さんをはじめ、同じようにケガで悩まされている弟弟子たちも多くいます。親方からはどんなアドバイスをされていますか。

「僕と炎鵬のケガは、同じ首なんですけど種類がちょっと違うんです。だから、首をどうこうではなく、頑張ろうっていう気持ちを応援するほうが大きいですね。以前、炎鵬は『次にまた強い衝撃が加わったら命に関わるぞ』と言われたとき、自分も『もういいんじゃないか』って言ったことがあったんです。でも、彼は迷いなく『やります』と。意志が強いなあって、逆にこちらが思いました。本当に強い男ですね、炎鵬は。といっても、番付が下がっていく気持ちは痛いほどよくわかるので、『千秋楽パーティー、出たくないよね』なんて、笑いながら話をします。そのあたりは、同じ経験をしたので」

――いろんなつらい経験をされたからこそ、同じ目線で力士たちに寄り添えるんですね。今後は、どんな親方になっていきたいですか。

「力士とたくさん会話したいです。昔だと、親方の言うことには『ハイ』しか言わないといったイメージでしたが、時代が変わってきているいま、会話は大事だろうと。信頼関係がないと相撲の指導もできないし、少し嫌なことがあっても相談もできないので、とにかく対話をしたい。僕も力士と喋るのが好きなので、親方だけど先輩のような、力士たちと近い存在でありたいなと思っています」

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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