企業にも「縦割り110番」が必要か? 「縦割り組織」のメリット・デメリット
■「縦割り110番」スタート!
河野行政改革担当大臣が開設した「縦割り110番」が注目を集めている。今月17日、自身のホームページ上に誰でも投稿できるよう開設すると、4,000件を超える意見が殺到した。
「処理能力を超えた」として一時停止するほどまでに、情報や意見が集まったのである。
現在は内閣府のホームページに「規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)」として設置されているのだが、この「縦割り110番」、なぜここまで反響があったのか。
そもそも「縦割り」とは何なのか。
「縦割り組織」にはどんなメリットがあり、デメリットがあるのか。そして一般企業(とくに大企業)にも「縦割り110番」は必要なのか。今回は「縦割り」というキーワードを中心に、現在の企業に必要なことを解説したいと思う。
■「縦割り組織」とは「事業部制組織」のこと?
河野大臣のスピード感ある行動力によって注目が集まる「縦割り110番」。設置されるとすぐさま、役所の規制などの弊害に関する情報や意見が大量に舞い込んだ。
この「縦割り」とは「縦割り組織」のことだが、そもそもどのような組織形態なのだろうか。以下の主な組織形態3つについて、簡単に解説しよう。
1.職能別組織
2.事業部制組織
3.マトリクス組織
まず「職能別組織」である。「営業」「生産」「物流」「人事」「総務」といった職能ごとに組織がある、一般的な組織形態を指す。中小規模の組織であれば、このような職能ごとに組織を分けると機能的になる。
しかし、全国に広がる大規模な組織になると、ここにエリアや、取扱い製品の概念が考慮され、組織形態が複雑になる。
そこで登場するのが、大企業などで多く採用される「事業部制組織」だ。事業部ごとに営業や生産、研究開発といった機能を備える自己完結型の組織を指す。
責任と権限が明確でメリットは大きい。だが「人」や「設備」など経営リソースを重複して保有することにより、無駄も多くなる。「ヨコの連携」も希薄になり、経営効率が悪くなるのだ。
まさに「縦割り組織」の典型例である。
この「縦割り」を解消する目的で考えられた形態が「マトリクス組織」だ。エリアや職能、製品など、ひとりの従業員がタテとヨコの2つの軸で、複数の組織に所属するスタイルである。
「事業部制組織」のように、経営リソースを重複させないというメリットがある。しかし、指揮系統が複数になるため、うまくマネジメントできないと混乱は必至だ。
組織形態にベストはない。その企業の規模や経営体質、経営トップの意向によって変わるからだ。
■お客様に迷惑な「縦割り」
大企業の多くは「事業部制組織」を採用する。だから、企業にも「縦割り」の弊害が出ることは多い。
「縦割り」は、よく官僚的、セクショナリズムと言われる。部署間の協力体制が希薄で、経営効率が悪いのはもちろんのこと、たびたびお客様にも迷惑をかける。
お客様にとって、縦割りは「わかりづらい」のだ。
「それは九州支店が独自に展開しているサービスですので、本社では取り扱っていません」
「そちらのお問合せに関しては、製造事業部のホームページからしていただけませんか」
「そのようなキャンペーンは、情報通信事業部の営業に聞いていただかないと……」
代表電話に連絡をすると、このように言われることがある。そうすると、カチンとくるお客様もいるだろう。
「同じ会社だろっ!」
と言いたくなるのだ。
「それじゃあ、連絡先を教えてくれ」
と言っても、ひどい場合は「ご自身で調べてください」的な返答が戻ってくる場合もある。こうなると、企業ブランドの失墜にもつながりかねない。
■これからの時代の「ブランディング」とは?
そもそも企業ブランディングには、
・エクスターナルブランディング
・インターナルブランディング
の2種類があり、広告や宣伝で価値向上を担うエクスターナルブランディングと異なり、インターナルブランディングは、その企業で働く人の「振る舞い」によって決まる。
近年、企業の理念や提供価値を社員に浸透させるこの内部活動はブランド価値をアップさせると注目されていて、社員教育を徹底させ、インターナルブランディング強化に努める企業は多い。
「縦割り」によって、ブランド価値が毀損することは企業サイドも望まないことだろう。
完璧な組織形態はないし、組織形態を変えれば企業文化や経営体質が変わるというわけでもない。
だから社員教育が重要なのである。重要なことは、時代の変化とともに組織形態を見直し、柔軟に変えていくこと。そして組織形態のデメリットを補うための教育を継続的に実施することだ。
そういう意味で、「縦割り110番」は企業も見習うべき取り組みであろう。