今年は記録的短時間大雨情報の発表が多い 温暖型の閉塞をした低気圧が接近し、北日本は再び大雨
記録的短時間大雨情報
太平洋高気圧の勢力が少し後退したため、北日本に大雨を降らせた前線が南下し、前線上の日本海で低気圧が発生しています(タイトル画像参照)。
この低気圧と前線に向かって南から暖かく湿った空気が流入し、北陸から西日本の日本海側を中心に、広い範囲で非常に強い雨が降っています(タイトル画像)。
京都府では8月17日22時30分に亀岡市付近で約90ミリ、大阪府では8月17日22時40分に茨木市付近で約100ミリの猛烈な雨を観測し、気象庁はともに記録的短時間大雨情報を発表し、警戒を呼びかけています。
気象庁では、大雨警報発表中に、数年に一度程度しか発生しないような激しい短時間の大雨がアメダス等の雨量計で観測した場合や、気象レーダーと地上の雨量計を組み合わせた分析(解析雨量)した場合に記録的短時間大雨情報を発表します。
記録的短時間大雨情報の発表基準は、地域によって異なりますが、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることを知らせ、より一層の警戒を呼びかけるために発表するものです。
平成25年(2013年)から令和3年(2021年)までの9年間の記録的短時間大雨情報の平均発表回数は80.1回で、月別には7月~9月が多くなっています(図1)。
今年、令和4年(2022年)は、記録的短時間大雨情報の発表回数が例年の倍以上となっています。
つまり、これまで経験したことがない雨が降りやすい年といえるでしょう。
低気圧の閉塞
前線上の日本海で発生した低気圧は、東側に温暖前線、西側に寒冷前線を伴っていますが、寒冷前線の進行速度が温暖前線の進行速度より速いために、次第に追いつきます。
そして、閉塞した低気圧となって東北地方を通過する見込みです(図2)。
閉塞した低気圧には2種類あり、一つは、寒冷型の閉塞で、追いついた寒冷前線の後ろ側にある寒気が、先行していた温暖前線の前方にある寒気よりも冷たい場合にできます。
この時の寒冷型の閉塞前線が通過すると通過前より寒くなります。
そして、閉塞前線・温暖前線・寒冷前線が、「人」という字になります。
もう一つは、温暖型の閉塞で、追いつかた寒気が、温暖前線に先行していた寒気よりも暖かい場合にでき、この温暖型閉塞前線が通過すると暖かくなります。
そして、閉塞前線・温暖前線・寒冷前線が、「入」という字になります。(図3)。
そして、閉塞前線が寒冷前線と温暖前線に分岐する点を閉塞点といい、特に激しい気象現象を伴います。
日本付近は、大陸から冷たい空気が低気圧の西側に入りこむことが多いので、寒冷型の閉塞が多いのですが、今回の閉塞は温暖型です。
低気圧の進路上に高気圧があり、冷たい空気を送り込んで進行を妨げているからです。
このことは、低気圧の進行速度が遅くなり、降雨時間が長くなることを意味し、東北地方では150ミリを超える雨が降る見込みです(図4)。
土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。また、落雷や竜巻などの激しい突風に注意してください。
タイトル画像、図2の出典:気象庁ホームページ。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図3の出典:饒村曜(平成27年(2015年))、気象予報士完全合格教本、新星出版社。
図4の出典:ウェザーマップ提供。