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爆弾テロ。東京五輪パラ招致への影響は。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

こんなことがあっていいのか。ボストン・マラソンは、かつて4度取材したことがある。テレビ画面をみれば、メインストーリートの懐かしい風景が崩れていく。8歳の少年が…。平和のシンボルであるスポーツのイベントが爆弾テロの対象となった。

ボストン・マラソン爆破事件は、多くの人々にショックを与えただろう。とくにスポーツイベントに関わるものにとっての衝撃は大きかったに違いない。

記憶によると、ボストン・マラソン取材では、たしかメディアも手荷物検査を受けていた。金属探知機もあった。だが、オリンピックと比べると、緩かった気がする。そりゃそうだ。警備予算の規模はともかく、コースが市街地のストリートやオープンスペースのため、どうしても警備には限界がある。

五輪の警備は、1972年ミュンヘン五輪のパレスチナゲリラ事件以降、どんどん厳しくなってきた。自分も取材した1996年アトランタ五輪の五輪公園爆破事件で、さらに警備が強化された。2001年9月の米中枢同時テロ「9・11」の直後の02年ソルトレークシティー冬季五輪では厳重警備もピークに達した。取材して、そう思った。

だが、その後も警備は五輪の課題として大きくなり続け、昨年のロンドン五輪では、英政府は約3万人の兵士や警官を投入した。警備費は約770億円に達したといわれた。20年東京五輪パラリンピックの招致委員会の開催計画では、東京都や組織委員会などを合わせて約187億円の警備費を見積もっている。

東京五輪パラリンピック招致委が、国際オリンピック委員会(IOC)に出した立候補ファイルを調べる。「大会の安全、セキュリティ」の項目を開くと、「官民の調和のとれたセキュリティ対策」とあり、公的機関には警察庁や警視庁、防衛省・自衛隊などが羅列してある。大会の開催期間中のセキュリティ活動に投入される人員は5万850人(現時点での見積もり)。内訳が、警察官が2万1千人、民間警備員1万4千人などとなっている。

3月のIOCの評価委員会の東京視察の際には、東京の警備専門家がきめ細かくプランを説明した。

これで2020年五輪パラリンピック開催地を決定する際、テロ対策やセキュリティも大きなテーマとなるだろう。ちなみに昨年5月の五輪開催地1次選考の際、「セキュリティ」項目の評価で東京はトップだった。

「犯罪数、治安、テロの可能性」「大規模イベントにおけるセキュリティ組織の活動、技術的・専門的な能力」「セキュリティ等への投資」「競技会場、輸送。オリンピック関連施設等の地理的条件」との細かい判断基準が設けられており、IOCワーキンググループの10点満点の評価で東京は「最高が9、最低は7」だった。マドリードは「最高が8、最低は7」、イスタンブールは「最高が7、最低は6」となっていた。

つまり、東京は相対的にテロが起きる危険性が少ないとみられている。今回のボストン・マラソンのテロ事件で、スポーツの大規模イベントを運営する団体は警備計画の練り直しを求められることになる。

スポーツイベントの警備はどう変わっていくのか。とくに五輪は。こういった経緯を踏まえ、東京五輪パラ招致委は警備計画の強化を図り、より「安全、安心」をアピールしていくことになる。

【「スポーツ屋台村」(五輪&ラグビー)より】

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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