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シリア政府が設置した新型コロナ感染防止用の隔離施設の不衛生さを親政府系サイトが指摘し、反体制派が拡散

青山弘之東京外国語大学 教授
ダマスカス郊外県の隔離施設(Snack Syrians、2020年3月19日)

シリア政府が設置した隔離施設

国営のシリア・アラブ通信(SANA)のサフィーラ・イスマーイール特派員は18日、新型コロナウィルス感染防止策として、ダマスカス郊外県のドゥワイル地区(首都ダマスカス県南のムカイラビーヤ市近郊)に設置された隔離施設を訪問取材した。

隔離施設には、新型コロナウィルスの感染者が確認されている諸外国から帰国したシリア人が収容されているが、イスマーイール特派員によると、施設に収容されている市民の間から、医療サービス、予防策、暖房設備に対する苦情が寄せられているという。

とりわけ、予防策に関しては、施設内での移動制限を強化するよう要望が出ているという。

SANA、2020年3月18日
SANA、2020年3月18日
SANA、2020年3月18日
SANA、2020年3月18日

インターネット上では、Snack Syriansをはじめとする政府支持者のサイトが、隔離施設の写真をアップするなどして、不衛生さを指摘、反体制系メディアがこれを拡散していた。

Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日
Snack Syrians、2020年3月18日

なお、シリア保健省など衛生当局によると、政府支配地域では新型コロナウィルスの感染が疑われる事例が複数件確認されているが、検査結果はいずれも陰性だという。

また、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局支配地域、トルコの占領下にある北部のいわゆる「ユーフラテスの盾」地域、「オリーブの枝」地域、「平和の盾」地域、そしてシリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が主導する反体制派地域(イドリブ県)でも、新型コロナウィルスの感染者は確認されていないという。

難民の帰還再開

シリアの難民と国内避難民(IDPs)の帰還を調整しているロシア合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターは17日に難民156人が新たに帰国したと発表した。

難民の帰国が再開されるのは2日ぶり。

156人(うち女性47人、子供80人)はいずれもレバノンからの帰国者。ヨルダンからの帰国はなかった。

これにより、シリア南部(ダルアー県、クナイトラ県、スワイダー県)での戦闘がほぼ収束した2018年7月18日以降に帰国したシリア難民は577,521人、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民は806,801人となった。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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