緊急事態宣言再延長? 東京都、解除目標達成も最悪「ステージ4」維持 数値の目安設けず
東京都が近隣県とともに緊急事態宣言再延長の要請を検討していると報じられている。小池百合子知事が2度目の宣言当初、解除目標として明言した「(新規陽性者)1日500人」は先月に達成し、目標の半分程度にまで減少した。
だが、東京都は現在も、感染状況について最悪のステージ4相当の独自判断を維持したままとなっている。都は独自に発表しているステージ判断について客観的な数値基準を全く設けていなかったことが、都福祉保健局への取材でわかった。
解除後のリバウンドのリスクが指摘されている中、小池知事はメディアに解除の議論を封印するような発言も繰り返しており、自ら解除に言及してリスクを負う状況を避けたいという思惑があるのではないか。
新規陽性者はピーク時の14%
2度目の緊急事態宣言が発令された当初、小池知事は解除目標について問われ、西村康稔コロナ担当相の発言に言及しつつ、新規陽性者数「1日500人」、国の基準で「ステージ(レベル)3」と明言していた(1月8日定例記者会見、冒頭写真)。
昨日の西村担当大臣の国会での説明の際も、東京都でいえば1日500人という数値を挙げられました。まさにそれらのことも念頭に入れながら、この間をしっかり都民の皆さん、事業者の皆さんとともに目指していきたいと考えております。
1日の陽性者数500人というのは、それに従って、ベッド数などもそれに応じて下がってくるわけです。それに対しての対策もそれだけ負荷が下がってくるということですから、レベル3ということ、国が定めているところのレベル3ということは一つの目標になろうかと思います。
7日平均で「1日500人」をクリアしたのは、2月11日。
現在の新規陽性者数は「263.1 人」(7日間平均)で、ピーク時(1861.1人、1月11日)の14%にまで下がっている。
この感染状況は、政府分科会の基準でみると「ステージ2」に相当する。
逼迫していると言われてきた医療体制も、大幅に改善している。入院患者数は1617人で、ピーク時より半減。病床使用率もピーク時の86%から32%まで改善した(重症病床の使用率もほぼ同じ)。陽性率は3.2%(7日平均)で、9〜10月の水準に落ち着いてきている。
この医療体制の状況は、政府分科会の基準でみると「ステージ3」に相当する。
実際、東京都が先週作成した参考資料(2月24日時点)にも、国基準では「ステージ2」〜「ステージ3」に相当すると明記されている。
菅義偉首相は当初、「ステージ3」を目標にすると言明。首相の会見に同席した政府分科会の尾身茂会長も、次のように述べていた。
(尾身茂会長)
今の1か月の件ですけれども、もうこれは私どもは当然のことですけれども、1か月の間で感染を下火にして、ステージ3に近付きたいと思っています。…(略)…
確かに1か月未満にステージ3に近付けるということは、そう簡単ではありませんが、私は今、申し上げた4つの条件を満たすために、日本の社会を構成するみんながしっかりと頑張れば、1か月以内でも私はステージ3に行くことは可能だと思っています。(1月7日、首相官邸での記者会見)
東京都独自判断「ステージ4」 その根拠は?
他方、東京都は独自に、感染状況、医療体制状況を4つのステージで評価しているが、現在も「感染が拡大していると思われる」「体制が逼迫していると思われる」という最悪のステージ4相当の判断を維持したままだ。
このステージ判断は、東京都が専門家に委嘱して毎週開催している「東京都モニタリング会議」が出しているもので、次のような分類・定義となっている。
いずれも「〜と思われる」という曖昧な表現が入っているうえ、判断要素について「いくつかのモニタリング項目を組み合わせ、地域別の状況等も踏まえ総合的に分析」などと書かれているだけだ。具体的な目安・基準がどこにも記されていない。
東京都の担当者「ステージ変更の数値の目安はない」
これについて、東京都モニタリング会議を担当している都福祉保健局の防疫情報管理課長は、取材に対し「東京都のステージ判断は具体的な数値の目安、基準を設けていない。どのステージに当たるかは、それぞれのモニタリング項目をみて、専門家が総合的に判断することになっている」と説明し、政府分科会のようなステージごとの目安となる数値基準が存在しないことを認めた。
政府の基準でみるとステージ2・3相当に改善しているのに、東京都がステージ判断を変えていない点について、同課長は「まだ第2波のピークとほぼ同数であること」も根拠の一つと指摘しつつ、都として客観的な判断基準はなく、専門家の総合判断に任せていると強調した。なお、現在は、第2波のピーク(7日平均で約346人)も下回っている。
同会議の代表的な専門家メンバーは、感染状況については国立国際医療研究センターの大曲貴夫氏、医療体制状況については東京医師会副会長の猪口正孝氏。同会議の模様は録画で公開されているが、具体的な判断基準についての言及は見られない。
延長後は「解除」議論を封印、メディアへの牽制も
小池知事は、延長が決まった2月2日の会見で「新規陽性者を前週比7割の減少ペースを維持し、3月初旬に1日当たり140人以下」という、かなりハードルの高い目安を突然発表した。これを新たな解除基準とすると明言したわけではないが、以後、当初の「1日500人」の目標には全く触れなくなった。
それどころか、2月に入ると、解除の目安について記者の質問を拒否したり、解除に関する報道を抑えるよう要求したりするかのような発言もしていた。
2月10日の記者団とのやりとり
記者「緊急事態宣言の解除のタイミングについてお伺いしたいんですけども?」
小池知事「解除の話はちょっともう少し先にしてくれませんか。まだこの最中なんですから。よろしくお願いしますよ」
記者「(感染者数)どこまで下げるべきとお考えでしょうか?」
小池知事「できるだけ下げるんです。はい」
(FNNニュースより)
2月26日の記者団とのやりとり
小池知事「むしろメディアのみなさんへのご協力なんですが、『解除』という2文字が飛び交えば飛び交うほど、首都圏の解除が遠のくという恐れを抱いております。ご協力をお願いします」
(NHKニュースより)
小池知事はこれまで、昨年春の緊急事態宣言の発出、1月の発出時・延長時と毎度、アクセルを踏む側として、慎重姿勢の政府と対峙しながら主導権をとる姿勢をアピールしてきた。
他方、自ら解除のタイミングについて積極的に言及したことは一度もない。
解除後に感染者が増加した場合、解除のタイミングが早すぎたといったメディア等の批判の矛先が自分に来ることをおそれ、リスクのある判断を先送りしている可能性がある。東京都モニタリング会議の専門家による「ステージ4」の判断維持も、そうした小池知事の姿勢と歩調を合わせているのかのように見えなくもないのだが。