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ヤンキースの「プランB」は成功なのか。ベリンジャーでなくタッカーを獲得すべきではなかったのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
コディ・ベリンジャー Jun 2, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今月中旬、2人の外野手が立て続けにトレードで動いた。カイル・タッカーがヒューストン・アストロズからシカゴ・カブスへ移り、その4日後、コディ・ベリンジャーはカブスからニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。

 タッカーのトレードが決まる前に、ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンやMLB.comのマーク・フェインサンドは、ヤンキースが手に入れようとしている外野手として、2人の名前を挙げていた。ホアン・ソトを呼び戻せなかったことに対する「プランB」といったところだ。ヤンキースからFAになったソトは、ニューヨーク・メッツと15年7億6500万ドル(2025~39年)の契約を交わした。

 タッカーとベリンジャーを比べると、近年のスタッツは、タッカーが上だ。例えば、ここ2シーズンに、タッカーは打率.286と出塁率.382、52本塁打、OPS.921、ベリンジャーは打率.286と出塁率.340、44本塁打、OPS.815を記録している。

 トレードの順序からすると、ヤンキースはタッカーを逃し、そこからベリンジャーに転じたのかもしれない。ただ、ヤンキースの優先順位は、最初からタッカーよりもベリンジャーのほうが上だったような気もする。

 2人とも、外野3ポジションと一塁を守ったことがあるが、タッカーは、そのほとんどがライトかレフトだ。センターと一塁は、合計しても通算50イニングに満たない。一方、ベリンジャーは、センターが4015.0イニング、一塁が2481.1イニング、ライトとレフトは計1694.2イニング。4ポジションのどこでも、守ることができる。

 ヤンキースは、一塁手が確定していない。というよりも、一塁手を必要としている。現時点では、ベン・ライスDJ・ラメイヒューが候補だろうが、2024年は2人合わせて117試合で9本のホームランしか打っておらず、出塁率はどちらも.270に届かなかった。

 ベリンジャーを獲得したので、ヤンキースは、一塁手を手に入れられなかった場合、代わりに外野手を加え、ベリンジャーに一塁を守らせることもできる。ターゲットが一塁手から一塁手と外野手に広がったことで、補強はしやすくなった。

 また、ヤンキースは、アーロン・ジャッジをセンターからライトへ移すつもりらしい。MLB.comのブライアン・ホックによると、ライトを守っていたソトのメッツ入団が決まった後に、ブライアン・キャッシュマンGMがそう語ったという。

 ベリンジャーに続き、一塁手を得ることができれば、ジャッジを除くセンターのレギュラー候補は、ジェイソン・ドミンゲスからベリンジャーとドミンゲスの2人に増える。ジャズ・チザムJr.トレント・グリシャムもセンターを守ることができるものの、チザムJr.は二塁ないし三塁のレギュラー候補だ。グリシャムは、好守ながら、OPSはここ3シーズンとも.680を下回っていて、レギュラーを務めるには物足りない。

 ドミンゲスは、来年2月で22歳と若く、メジャーリーグ出場は2023~24年の計26試合に過ぎない。センターではなくレフトを守らせ、守備の負担を軽減することで、トップ・プロスペクトがブレイクする可能性は高まるのではないだろうか。

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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