ヤンキースの「プランB」は成功なのか。ベリンジャーでなくタッカーを獲得すべきではなかったのか
今月中旬、2人の外野手が立て続けにトレードで動いた。カイル・タッカーがヒューストン・アストロズからシカゴ・カブスへ移り、その4日後、コディ・ベリンジャーはカブスからニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。
タッカーのトレードが決まる前に、ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンやMLB.comのマーク・フェインサンドは、ヤンキースが手に入れようとしている外野手として、2人の名前を挙げていた。ホアン・ソトを呼び戻せなかったことに対する「プランB」といったところだ。ヤンキースからFAになったソトは、ニューヨーク・メッツと15年7億6500万ドル(2025~39年)の契約を交わした。
タッカーとベリンジャーを比べると、近年のスタッツは、タッカーが上だ。例えば、ここ2シーズンに、タッカーは打率.286と出塁率.382、52本塁打、OPS.921、ベリンジャーは打率.286と出塁率.340、44本塁打、OPS.815を記録している。
トレードの順序からすると、ヤンキースはタッカーを逃し、そこからベリンジャーに転じたのかもしれない。ただ、ヤンキースの優先順位は、最初からタッカーよりもベリンジャーのほうが上だったような気もする。
2人とも、外野3ポジションと一塁を守ったことがあるが、タッカーは、そのほとんどがライトかレフトだ。センターと一塁は、合計しても通算50イニングに満たない。一方、ベリンジャーは、センターが4015.0イニング、一塁が2481.1イニング、ライトとレフトは計1694.2イニング。4ポジションのどこでも、守ることができる。
ヤンキースは、一塁手が確定していない。というよりも、一塁手を必要としている。現時点では、ベン・ライスとDJ・ラメイヒューが候補だろうが、2024年は2人合わせて117試合で9本のホームランしか打っておらず、出塁率はどちらも.270に届かなかった。
ベリンジャーを獲得したので、ヤンキースは、一塁手を手に入れられなかった場合、代わりに外野手を加え、ベリンジャーに一塁を守らせることもできる。ターゲットが一塁手から一塁手と外野手に広がったことで、補強はしやすくなった。
また、ヤンキースは、アーロン・ジャッジをセンターからライトへ移すつもりらしい。MLB.comのブライアン・ホックによると、ライトを守っていたソトのメッツ入団が決まった後に、ブライアン・キャッシュマンGMがそう語ったという。
ベリンジャーに続き、一塁手を得ることができれば、ジャッジを除くセンターのレギュラー候補は、ジェイソン・ドミンゲスからベリンジャーとドミンゲスの2人に増える。ジャズ・チザムJr.とトレント・グリシャムもセンターを守ることができるものの、チザムJr.は二塁ないし三塁のレギュラー候補だ。グリシャムは、好守ながら、OPSはここ3シーズンとも.680を下回っていて、レギュラーを務めるには物足りない。
ドミンゲスは、来年2月で22歳と若く、メジャーリーグ出場は2023~24年の計26試合に過ぎない。センターではなくレフトを守らせ、守備の負担を軽減することで、トップ・プロスペクトがブレイクする可能性は高まるのではないだろうか。