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ようやく目覚めたアジアの虎。東京五輪サッカー韓国代表のグループ1位通過の実力は本物か!?

金明昱スポーツライター
ホンジュラス戦でハットトリックを決めたファン・ウィジョ(写真:ロイター/アフロ)

「韓国の虎よ、狩りを始めよ」

 東京五輪サッカーのグループBに入った韓国代表の初戦の相手、ニュージーランド戦の応援スローガンがこれだ。

 インパクトのあるフレーズだが、逆に“狩られた”のは韓国のほうだった。

 韓国は格下と思われていたニュージーランドの高さと堅守に苦戦を強いられ、後半31分にFWウッドに先制点を決められると、そのまま逃げ切られた。ボール支配率では62対38、シュート数も12対2と試合内容で圧倒しつつも、決定力不足に泣いた。

 オーバーエイジ枠のFWファン・ウィジョ(ボルドー)も沈黙し、出鼻をくじかれた形で迎えたルーマニア戦。グループリーグ突破のためにも勝利が必須の状況のなか、結果は4-0での圧勝。

 エースでもあるMFイ・ガンイン(バレンシア)を大胆にもスタメンから外し、序盤から猛烈なプレスで襲い掛かった。初戦とは打って変わって、出足の鋭さが増すと、何度もチャンスが訪れる。

 1点目は相手のオウンゴールを誘い込むことに成功。後半には相手が2枚目の警告で退場して有利な展開になると、後半にはMFイ・ドンジュン(蔚山現代)のミドルシュートが相手にあたってゴール。

 終盤には途中出場したイ・ガンインがPKと流れの中からミドルシュートを決めて勝利した。

 数字の上では“圧勝“。ただ、内容はそこまで良かったとは言い難い。というのも流れのなかで生まれたゴールが最後のイ・ガインインのゴールしかなく、頼みの綱でもあるファン・ウィジョもここまで不発であることも不安要素だった。

日韓戦で知られたイ・ドンジュンの存在感

 そんな中で迎えた最終節のホンジュラス戦。ルーマニア戦同様に前半からプレスをかけて、相手に主導権を握らせなかった韓国は、前半に2本のPK獲得に成功。1本目をファン・ウィジョ、2本目はウォン・ドゥジェ(蔚山現代)が決めた。

 その後、38分に相手DFが警告2枚目を受けて退場して数的優位に立った。

 前半早々にPKを手に入れ、相手に退場者まで出させたのはFWイ・ドンジュンの殊勲。彼の積極的なプレーから生まれたものだった。

 イ・ドンジュンといえば、日本のファンには嫌な記憶があるかもしれない。今年3月の日韓戦で冨安健洋に肘打ち行為をしたことで有名になってしまった選手だ。

 ホンジュラス戦ではスピードに乗ったドリブルで何度も右サイドを突破し、ペナルティエリア内にも果敢に侵入して相手のファウルを誘い、1本目のPKを獲得。相手DFの退場もゴール前でのイ・ドンジュンの突破を阻止したのがきっかけだった。

 その後は完全に流れが韓国に傾くと、前半アディショナルタイムにファン・ウィジョが、右からのクロスをGKがはじいたこぼれ球を押し込んでゴール。

 3-0で折り返した後半は、48分にキム・ジンヤがペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。これをファン・ウィジョが決めてハットトリックを達成した。

 さらに64分に右からのグラウンダーをファーサイドから走りこんだキム・ジンヤがダイレクトで右隅に流し込むと、82分には途中出場したイ・ガンインが、ペナルティエリアの外から左足を振りぬいてゴール右隅に決めた。

流れの中からのゴールに光明

 ホンジュラスが不用意なファウルで自滅した感じもあるが、相手の嫌がるプレーで、きっちりと流れの中からゴールを奪えたのは収穫だ。

 ストライカーでもあるファン・ウィジョのゴールが生まれたことも、チームにいい雰囲気をもたらしている。

 バラバラだったパズルのピースがようやく噛み合ってきたわけだが、忘れてならないのはルーマニア戦もホンジュラス戦も、一人の退場者がいたこと。数的優位の状況ならなおさら、負けることは許されない。勝って当然だからだ。

 アジアの虎はようやく本格的な狩りを始めた――と言っていいだろう。ニュージーランド戦で敗れたことで目が覚めたのであれば、それは怪我の功名だ。

 準々決勝(31日)の韓国の相手は強豪・メキシコ。勝利すれば、ブラジル対エジプトの勝者と準決勝で戦う。ちなみに日韓戦の実現には、両国ともに決勝まで勝ち進まなくてはならない。いずれにしても韓国はメダル獲得まで険しい道のりが続く。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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