ノルウェー先住民と若者の抗議、省庁封鎖で法的闘争に
昨年2月と3月にオスロで省庁の入り口を占拠し封鎖した、「フォーセン闘争」と呼ばれる20人の活動家が裁判にかけられることになった。
フォーセン闘争とは
「フォーセン闘争」とは、先住民族サーミ人とノルウェーの若者らで構成される活動家グループによるもので、風力発電所の建設を許可した国に対して風車の撤去を求める抗議活動である。
風車が建設されたフォーセン地域はサーミ人のトナカイ放牧地でもある。
2010年、ノルウェー政府はフォーセン地域における2つの大規模な風力発電開発を認可した。この地域はトナカイ放牧地区の冬期放牧地域でもある。
2021年、ノルウェー最高裁は、風力発電開発の許可は、国連市民的及び政治的権利規約第27条に基づくトナカイ放牧を営むサーミ人の文化行使の権利を侵害するものであり、無効であるとの判決を下した。
しかし、最高裁は、「風力発電所が具体的にどうなるか」撤去されるべきか)を明言せず、国は「対話で解決したい」と操業を継続した。
国の人権侵害・風車の操業継続が2年目に突入し、大規模な抗議活動へ
2023年、「国は人権違反を継続している」として、サーミ人やノルウェーの若者らは省庁封鎖などの大規模な抗議活動を続けた。
抗議活動は様々な形で行われ、サーミ人のひとりは、5週間にわたりノルウェー国会議事堂前にサーミ人の移動式住居「ラヴヴォ」で寝泊まりすることで抗議の意思を見せた。他にも省庁や風力発電所を運営する企業の封鎖、首都での大通りを封鎖、国会内の広場で座り込み抗議、王宮前広場で座り込み抗議などを行った。
省庁封鎖をした20人が裁判で争うことに
今回、罰金の支払いを拒否して裁判で争うことになったのは、これらすべての抗議活動が対象ではなく、2~3月に省庁を去るよう警察の命令に従わなかった罪で起訴された20人だ。
14人は昨年2月に石油・エネルギー省を占拠し、残りの6人は昨年3月に財務省の入り口を封鎖した。オスロ検察官は、警察のアドバイスに反して罰金を課すことを決定した。
活動家たちは3,000~5,000クローネ(4万2千円~7万円)の罰金を科されたが、「人権違反をしているのは国だ」と支払いを拒否し、裁判で争う意思を昨年の時点で表明していた。
被告には若いサーミ人の活動家やノルウェー最大規模の自然青年団体「Natur og Ungdom」のサポーターが含まれている。
裁判の焦点は
裁判は3月11日にオスロ地方裁判所で開かれる予定。
裁判では、「活動家が警察の命令に従うべきだったか、また、最高裁判決を追認しなかった政府への抗議が許されるかどうかが審議されることになる」と現地メディアは報じている。
また、「デモに対する警察の介入の合法性と必要性」も裁判のテーマとなる。
最悪の場合、最大3ヶ月の懲役に処される可能性がある。
保護されるべき先住民の抗議活動に「罰金を科すべきか」(入植者がさらに「罰を与えるのか」)は注目されていた
昨年は他にも多くの抗議運動が行われたが、これらの運動に関してはまだ誰も罰金を科されておらず、将来的に罰金や起訴される可能性も低いとされている。
理由としては、警察が6月と10月のアクション中に活動家を逮捕せず、抗議方法は「模範的だった」を称賛したからだ。
「裁判を楽しみにしている」
自然青年団体のリーダー、ギーティス・ブレジャヴィチョスさん(23)は、人権侵害を行った政府に対して抗議した活動家を告発することを「恥だ」と述べている。
サーミ人であるエッラ・マリエ・ハエッタ・イーサクセンさんも被告の一人で、「このような裁判にかけられることは荒唐無稽だ」「裁判に臨むことは苦々しいが、私たちの主張を裁判所で述べることを楽しみにしている」とSNSなどで語っている。
Photo&Text: Asaki Abumi