なぜレアルは苦しんでいるのか?モドリッチ、クロース、チュアメニ…最後のピースとアンチェロッティの算段
不安定なシーズンが、続いている。
レアル・マドリーはリーガエスパニョーラ第28節、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでビジャレアルに敗れた。コパ・デル・レイ準決勝でバルセロナを下して決勝進出を決めた後の手痛い黒星だった。
現地時間12日にはチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグのチェルシー戦が控えている。カルロ・アンチェロッティ監督のチームは、立て直しを図る必要がある。
「1272試合で指揮を執ったあと、誰かに何かを証明しなければという強迫観念はない。それは周知の通りだ」
「先日のバルセロナとのゲームの前に、偶然、自分の指揮してきた試合数をチェックしていた。もうすぐ1300試合に到達するのではないかと思っていたからだ。その数字を達成したら、少しお祝いをしなければいけない」
これはアンチェロッティ監督の言葉だ。
■チームビルディングに腐心
経験豊富な指揮官は今季、苦しみながらチームを作ってきた。
マドリーはこの夏、カゼミロを放出した。移籍金7000万ユーロ(約84億円)のオファーが届き、マンチェスター・ユナイテッドがカゼミロを確保。ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミロのチャンピオンズリーグ4度優勝に大きく貢献した盤石の中盤が、突如として崩された。
代役として、オウレリエン・チュアメニが選ばれた。正確に言えば、カゼミロの売却の前に、マドリーは移籍金8000万ユーロ(約98億円)でモナコからのチュアメニ獲得を決めていた。いずれにせよ、チュアメニ、モドリッチ、クロースの「TMK」が新たにマドリーの中盤でトライアングルを形成するとみられていた。
アンチェロッティ監督がモドリッチとクロースを外すのは考え難い。
奇しくも、この2選手がマドリーでコンビを組むようになった2014−15シーズン、チームを率いていたのはアンチェロッティ監督だった。
第一次アンチェロッティ政権(2013年―2015年)から、クロースが加入した2014年夏以降、アンチェロッティ監督のモドリッチとクロースへの信頼は絶大だった。
■最後のピース
残りの1枠にチュアメニを嵌める。だが、事はそう簡単には進まなかった。
移籍一年目のチュアメニには、適応に時間が必要だった。そもそも、アンカータイプの選手ではない。モナコやフランス代表で頭角を現してきたのは、ダブルボランチの一角でプレーしてきたからだ。
また、今季はシーズン途中にカタール・ワールドカップがあり、疲労が蓄積していた。負傷があり、アンチェロッティ監督が常にチュアメニを起用することはできなかった。
アンチェロッティ監督は、チュアメニ、クロース、エドゥアルド・カマヴィンガといった選手をアンカーのポジションで試してきた。だが、「しっくりきた」という選手は、ついぞ現れていない。
今季のマドリーは格下相手の取りこぼしが多い。それがラ・リーガにおいて第27節消化時点で首位バルセロナと勝ち点12差という大きな違いを生んだ。アンカーのポジションが定まらないというのが、安定感の欠如につながった。
■真価が問われるビッグマッチ
だがレアル・マドリーは、レアル・マドリーである。
チャンピオンズリーグのベスト8の試合が近づいている。相手はチェルシーだが、彼らもまたフランク・ランパード監督の復帰が決まったばかりで、決して良い状態とは言えない。
「決戦が近づいた時、マドリーは血の匂いを感じ取る」(スペイン『エル・パイス』)と現地メディアで形容されるように、マドリーはファイナルあるいは決勝トーナメントでの試合に強い。それは先のコパ準決勝セカンドレグ(〇4−0/アウェー)で再び証明された。
マドリーはアンチェロッティ監督と2024年夏まで契約を結んでいる。だがオサスナとの決勝を残しているコパで、優勝をしたとして、コパのタイトルでアンチェロッティ監督の続投が決定するかは非常に際どいところだ。
となると、やはり重要なのはチャンピオンズリーグのタイトルだ。無論、容易ではない。だが「勝利のDNA」が、レアル・マドリーに常に挑戦を要求している。