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政治が水族館から学ぶこと。市民の先入観を壊し本質を伝えるのか。

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上
(写真:アフロ)

実は水族館に行くのが好きである。

といっても年に何回か行く程度だけど、行くと丸1日いても全く飽きない。

よくガイドブックなんかには午前中水族館→午後から別の観光地とか書いてあるけどとんでもない。もったいなさすぎる。

各生き物の動きはいくら見てもあきないし、なにより各おり・水槽にはってある生き物の説明をきちんと読むだけでも半日はかかるんじゃないかな!?

そして、最近思うのが、自分がやっている「若者と政治をつなぐ」をコンセプトにしている活動(NPO法人YouthCreate代表として)が水族館から学ぶことが多い事。

<水族館ガール>という小説のシリーズから多くを学ぶ。

水族館ガール4の本の表紙
水族館ガール4の本の表紙

水族館ガールという小説があり、現在第4作まで出ている。

NHKでもドラマ化されたので知っている人もいるかもしれないが、タイトル通り水族館で働く女性の奮闘記を書いた物語だ。

主人公はもともと水族館なんて関心がなく、市役所からの出向で水族館行きが決まり、なにがなんだかわからない状況で奮闘するというもの。

水族館のバックヤードや各生き物のことに加え、この物語から学んだのは

「専門家が素人に対して行うコミュニケーションの2つの難しさ」だ。

この2つの壁についてラッコに関する章の物語から”ネタばれ”にならないように気をつけながら紹介する。

難しさ1:先入観の壁

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主人公がラッコのショーの際に

「ほら、全然、かわいくない」

と言ったことにベテラン職員が凍り付く。なぜなら、これまでは

「ラッコはかわいいよ。見に来てね」

という人集めの手法だったからだそうな。

しかし、ラッコは「動くぬいぐるみ」ではなく、生き抜くために活動している1つの「ケモノ」なのである。

映像などで「動くぬいぐるみ」的なかわいいシーンのみを知っている観客の思いを壊さない展示やショーをこれまでやっていたそうだ。

しかし、観客に近い主人公がラッコを学ぶ途上で自身がもっている「ぬいぐるみ」という先入観が変わっていく。

その過程のままをショーの中で観客に伝えていく。とすると、きれいに驚きとともに観客が、ラッコの実態を知っていくわけだ。

「知らない人に珍しいものを見せる」ではなく「知っている人にどう見せるか」を実際の水族館でも試行錯誤をしているのだろう。

難しさ2:本質の壁

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水族館は”研究機能”も担っている。

ただ、展示して観客に見せるだけではなく、大自然の中だと知り切れない水族(生き物)の生態を知り、繁殖の方法をさぐったりしている。水族館ときけば誰もがイメージするイルカショーだって、研究の1つだったりする。

イルカ同士の水中でのコミュニケーションの方法や、イルカの運動機能の研究の観察の側面もある。

しかし、観客にとっては本質である研究はどうでもよく、いかに楽しんで見れるかということが大事なのだろう。

政治への先入観と本質ではない関心

そろそろ本論へ。”政治”と聞いて何のイメージもわかない人はいない。

大人だけでなく中高生もそう。中高の出前授業に行き、政治のイメージを聞くと、

「難しそう」「悪い人」「おじさん」といった声が多く聞こえる。

もちろん、「国のための仕事」「僕らのために働いている」といった意見もあるが、正直少数派である。

また、これらの先入観は、本質である政策議論や立法過程とは違う部分からのイメージでしかないとも言える。政治家のスキャンダルや、政局のごたごたにのニュースは見るけれど、政策の細かい解説のニュースは見ていないという人。あるいは、選挙の際に各立候補者の政策内容・実現性やこれまでの活動内容などではなく、なんとなくの政党名や経歴、さらには”よく駅で見かけるから”という理由で投票先を決める人もいるのではと思う。

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「政策で見てほしい」「政治に関心を持ってほしい」と政治に関わる人はよく言う。

気持ちはわかるがその思いだけでは何も伝わらない。ただ、政策について詳しく書いたチラシやHPを作ればみんなに伝わるわけではない。

専門用語や立法過程を知らない人からみればチンプンカンプン。そもそも、政治家のHPなんて見に行かない。

「政治は身近なんだよ」って言われても「あ、そう」としか思ってもらえないだろう。

政治と若者(市民)つなぐために

どうすれば”先入観”と”本質ではないところへの関心”を意識しつつ、実際の本質を伝えていくのか。

学校やイベントなどの際に、若い世代と、政治家の交流の場を作るときにいきなり政策議論なんて入らない。

まずは参加者が、先入観があり、少しは関心のある話から進行していく。

「街頭演説ってうるさいって思っちゃうんですが、やってる方はどんな気持ちですか?」「政治家やってて何が楽しいんですか?やりがいなんですか?」「裏金や賄賂の話ってどれぐらい来るんですか?」「高校時代から政治家になろうって決めてたんですか?」

そんな話から入る。

また、”専門家”である政治家が当たり前に思っていることは、みんなに当たり前ではないことが多々ある。

「3月議会は来年度に向けての大事な議会で」

って言われても、3月議会で予算の話が審議されることを知らない。そもそも、多くの地方議会が主に年4回議会を開催していることを知らない。

「議運でのやり取りの結果、採決を取ることに」って言われてもギウン(議運)って何か知らない。

政治家にとって当たり前のことを、みんなに当たり前ではないということを意識して話す。あるいは、政治を知っている人が適宜、翻訳しながら伝える必要がある。

その翻訳機能を幣団体YouthCreateのような、政治と若者(市民)をつなぐ立場がしっかりと果たさなければならないと感じる。

水族館に学びながら引きつづき頑張っていきます。

そもそも、みんなに政治のことを知ってもらおうと思っていない政治家が多すぎて、内輪や支持者だけしかみていない人が多すぎるのが問題なのだが・・・

でも、早稲田大学の北川先生の言葉である”市民起点”を目指している政治家・議会も増えてはいる。そのような方々に敬意を示しながら、政治の外にある自分の立場でできる事を考え、

そして自分自身が政治の専門家ではない人の当たり前を忘れないように、これからも頑張ります。

※水族館の本当の研究ではなく、水族館ガールという小説からの考察です。

政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙に立候補し敗れる。元岡山大学非常勤講師。元グローバルシェイパー東京代表。元中野区社会福祉評議会評議員

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