総裁選・野党新党代表戦方式を、リアル選挙のスタンダードに。投票率向上のためには候補者の議論の場を。
情報量が莫大な2つの選挙
いま、日本で、2つの大きな選挙が行われている。
それは、自由民主党総裁選挙と、野党の新党代表選挙。そして、大きな選挙なのに、一般市民は投票することができない。だけど、日々候補者の情報がマスメディアやインターネットで飛び交っている。
政策はもちろん、人柄・家族関係・生い立ちなど実に多様な報道が行われている。候補者自身の発信も多い。特設HPを作り、動画を作り、あまりSNSを活用してなかった政治家もどんどん更新をしている。なによりも、候補者間の討論の機会が多い。共同記者会見・ニュース番組への生出演・党主催の討論会・ネット討論会・若者との対話など実に多様だ。
この状況を見て、感じるのは、「これぐらいの情報量が実際の選挙でもあれば」ということだ。
合流新党代表選 泉氏と枝野氏が会見 党運営への考え方など訴え
候補者のことがよくわからないから投票できない現役世代
明るい選挙推進協会の、前回衆議院議員選挙の調査の中に「世代別の棄権理由」というものがある。
選択肢の一つとして「 政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」があり、10代から60代のでは約20%主の方が、この選択肢を選んでいる。対して、70代以上は5.8%。
また、他の選択肢には、 「自分のように政治のことがわからない者は 投票しない方がいいと思ったから 」というものがあり、18歳~20歳代の20%がこの回答を選んでいる。
情報がないから選べないから投票できない。これが日本の選挙の現状だ。
情報がないと選べない
国政選挙の際、たしかに各政党の比較・党首討論などはメディアなどでも、それなりの時間を割いて報じられる。候補者自身の情報発信も2013年のインターネット選挙運動解禁からしばらくたち、HP・SNS・動画などはかなり浸透してきた。
しかし、それでも少ないのが、各選挙区での候補者間での討論の機会である。筆者も長年関わらせていただいてきたが、選挙前に各地の経済団体や市民有志などの手で、「公開討論会」なるものが企画されている。しかし、選挙区によっては主催者側の不在や、立候補予定者の不参加などで開催されない地域も多い。また、公開討論会を主催しても見る人の数がかなり限られている現状がある。会場にわざわざ足を運ぶ人や動画を見返す人は、関係者か選挙への強い関心を持っている人に限られているといえる。
最低限、各選挙区での候補者間での公開討論会を絶対に行うこと。そして、マスメディアも協力し、働いている現役世代でも見やすい夜の時間に放送をすることもセットで行ってはどうだろうか?
また、討論会を行う場に工夫の余地がある。高校や大学の授業の中、駅前など屋外で多くの通行人がいる場所など、多くの人に見てもらうための試行錯誤を続けたい。
候補者や陣営の発信ももちろん大事ではある、でも、やっぱりかなり作られた内容のものになる。用意された内容・写真・映像の鎧を着た発信ではやはり候補者の実際の姿が隠れてしまうことも否めない。
アメリカ大統領選挙のテレビ討論会とまでの丁々発止のやり取りにはならないかもしれない。それでも、候補者同士が互いの鎧を削り合い、そして同時に自身の本当の姿を見せる討論の機会を増やすことは必要なことである。
インターネット投票解禁は手段。内容としての選挙の情報の充実を
筆者はインターネット投票解禁賛成派である。時間をかけずに投票できること。場所・時間にとらわれず投票できること。様々な利便性がある。インターネットが生活の中に当たり前にある今の時代で、ネット投票解禁の議論すらしっかりされているとは言えない状況は非常に悔しい。
ただ、一方ではネット投票を解禁すればオールOKというものではない。いくら簡単に投票できるようになっても、「投票しよう」という意思が0であれば投票しない。本稿で述べたように、「情報がなく投票しない」人が多くいる現状を見据え、政治行政・メディア・候補者側でタッグを組んで解決策を講じて行く必要があると感じる。そして、そのためのヒントが今行われている自民党総裁選・野党新党代表選にある。
※主権者教育の充実・選挙以外の政治参加の機会の拡充など、民主主義を豊かにしていくために行うことはたくさんある。
※筆者が2017年衆議院選挙の際に、コーディネーターをした東京第7区の公開討論会の動画再生数は200回にも満たない。 同じく司会を務めた2016年都知事選挙の公開討論会でも再生回数は約3500回
※地方議会議員選挙は、国政選挙よりも情報を得ることが難しいことに関してはこちらの記事を参照ください。