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甲子園が一番泣いた一日   コロナ辞退と豪雨のダブルパンチに見舞われる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
雨に泣かされた夏の甲子園で、ついにコロナによる出場辞退が発生した(筆者撮影)

 雨の中、強行された大阪桐蔭と東海大菅生(東東京)の好カードは、降雨コールドで大阪桐蔭が勝ち、陰鬱な気持ちで引き揚げた矢先、最悪の事態が発生した。選手のコロナ感染による出場辞退である。

13人が感染した宮崎商

 宮崎商では、選手1人が14日に発熱し、その後のPCR検査でコロナ陽性が判明。さらにチーム内でほかに4人が感染していることがわかり、保健所の判断を待っていた。17日の高野連の会見ではその数が一気に増え、宿舎にいた35人のうち、計13人の感染確認と8人の濃厚接触が認定されたという。17人の感染者が出た神奈川大会での東海大相模同様、とても試合どころではない。

対戦相手の智弁和歌山は不戦勝に

 宮崎商は、この日の順延を受けて19日に智弁和歌山と対戦することになっていたが、大会前の規定で、不測の事態になっても代替校はない。したがって、智弁和歌山の不戦勝が決まった。「49校全てが完走」はもろくも崩れ去り、大会前の一番の願いは叶えられなかった。

コロナに長雨のダブルパンチ

 当初の予定なら、宮崎商の初戦は14日だったが、たび重なる順延が感染を拡大させた可能性もある。宿舎にいる時間が長く、屋外練習も限られていたはずで、選手たちが狭い空間にとどまることが多かったと想像できるからだ。コロナでストレスを抱えて大会に臨む選手たちに、長雨がダブルパンチを浴びせたようなものだ。

試合に勝っても毎回の検査

 1回戦に快勝した東北学院(宮城)は、初戦突破後の検査で1人の感染確認はあったが、今のところ、拡大には至っていないようである。「集団感染」でなければ、保健所の判断次第で試合はできるので、無事に2回戦を迎えられるよう願っている。また、試合に勝っても、全員の検査は毎回ある。どのチームの関係者も、祈るような気持ちで検査結果を聞いているのだろうと考えただけで、胸が締めつけられる。

これだけ甲子園が泣いた日はあったか

 17日の試合は、勝っても喜べず、負けたチームはやりきれなさだけが残る後味の悪い決着だった。それに輪をかけるコロナ禍で、甲子園がこれだけ泣いた日はあっただろうか。甲子園に似合う感動の涙だったら、いくら流したっていい。負けて泣くのも、全力を尽くしたからこそである。しかしこの日の涙には、虚しさしかない。2021年8月17日、甲子園が一番泣いた日。もうこれ以上、子どもたちを泣かせないでほしい。

以下、加筆部分 

 この記事掲載の数時間後、東北学院の辞退も発表された。主催者サイドは、集団感染に当たらないとしていたが、学校側からの「試合をすることで、感染した選手が特定され、将来に影響を及ぼす可能性がある」という申し出を受け入れたという。2回戦の相手の松商学園(長野)は不戦勝となった。2校の出場辞退というまさかの展開は、大会そのものの「完走」にも少なからず影響を及ぼしそうだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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