日本人の「路上飲み」が信じられない 中国の若者があまり「飲み会」をしないワケ
4月25日、東京都など4都府県で緊急事態宣言が出されました。飲食店での酒類の提供が制限されたことにより、コンビニ前や公園などで「路上飲み」をする若者が多く、東京都では路上飲酒を控えるよう、呼びかけを行っています。
しかし、報道によれば「警棒でパンパン叩かれない限り、(飲むのを)止めない」といった男性もいるなど、外で飲みたい若者はなかなか減りそうにありません。
中国でも日本の4都府県で緊急事態宣言が出されたことは報道されましたが、中国のSNSを見たところ、「日本人はそんなに飲みたいのか!」、「きっとストレスがたまっているんですね」、「飲み会は日本の文化だね」といった驚きの声が挙がっていました。
考えてみると、中国の若者が大勢集まって飲み会をしているところはあまり見かけません。むろん、中国の若者もお酒を飲むことは飲むのですが、日本人のような飲み方はしないのです。
中国の大学に日本的なコンパはない
若者といえば、まず大学生ですが、中国の大学にはコンパというものがありません。日本では新入生のためにサークルで開催する新歓コンパを始め、事あるごとにコンパや合コンを開いたり、仲間で飲み会をしたりしますが、中国の大学にはサークルがあまりないため、日本的なコンパも存在しないのです。
むろん、友だちと食事に行く機会は多く、そこでお酒も飲むことはありますが、メインは美味しい食事のほうで、日本人のように長い時間、酔いつぶれるまでお酒を飲むという若者はあまりいません。
女の子ならなおさらで、中には、大学を卒業するまでお酒をほとんど飲んだことがない、という子もいます。お酒に強い弱い、好き嫌いというより、中国の若者の間には、そこまで飲酒をする習慣や飲酒文化がない、といった理由のほうが大きいと思います。
最近は、これまで「勉強第一」といわれた中国でも、勉強しない学生がだんだん増えてきています。しかし、中国の大学生にとって、基本的には勉強することが「本分」なので、日本の学生街のように、大学のすぐ近くにチェーン店の居酒屋が軒を連ねている、といった生活環境ではないことも関係していると思います。
たとえば、北京の名門・清華大学の最寄り駅付近は、学生街といった雰囲気が漂っていますが、大学生向けの安い軽食やスイーツの店はたくさんあるのに、飲酒を目的とした店はほとんどありません。
中国の大学生は、キャンパスのすぐ近くにある学生寮で生活しており、外部のマンションに住んでいる人はごくわずかしかいません。そのため、みんなでキャンパスの外にある居酒屋にわざわざ繰り出す、といったシチュエーションもあまりない。そもそも、「居酒屋」という形態自体、日本から中国に輸入された比較的新しい文化なので、大都市を除き、料理よりも飲酒がメインの店は多くない、といったことも背景にあると思います。
中国にも宴会はあるが……
しかし、社会人になれば、中国でもビジネス上の宴席はたくさん存在します。春節前の忘年会などは日本よりも盛大に行われますし、仕事関係者との重要な宴席では「乾杯、乾杯」の繰り返しで、お酒は中国人にとっても、ビジネスをする上で欠かせないツールです。
ですが、日本の一部の業界や企業で行われている「毎月1回、同じ部署の全員で飲み会」というような慣例がある企業はほとんどなく、中国人は会社の同僚と飲むよりも、早く家に帰ったり、親しい友だちに会いたいというほうが多いのです。
中国人が飲むのは、主にビール、白酒(バイジウ)、老酒(ラオジウ)などが多いですが、最近の若者はワインや日本酒を好みます。カクテルなども好きですし、お酒やお酒を飲む雰囲気自体、嫌いなわけではないのですが、日本人のように二次会にも行くとか、ぐでんぐでんになるまで飲む、といったことはありません。
昨年、日本ではZoom飲み会が流行りましたが、中国では「そこまでして飲みたくない」ということなのか、あまり流行りませんでした。
日本の電車内で見かける酔っぱらいや、ちどり足が不思議
そういえば、以前、来日した中国人留学生が話していた、おもしろいエピソードがあります。
東京の終電に初めて乗ったとき、お酒臭い会社員の男性が大勢乗っていて、びっくりしたそうなんです。電車を降りたあと「ちどり足」で歩いている人も見かけて、「これが日本語学校で勉強した、あの“ちどり足”というものか!」と思ったと話していました。
中国でも飲み過ぎて酔っぱらう人は当然いるのですが、中国で酔っぱらった人はたいていタクシーで家に帰るため、夜遅く、電車内で酔っぱらいを見かけることはありません。
北京や上海などの大都市では、地下鉄の終電時刻が早いのですが(路線によって異なりますが、たいてい夜10時~11時台)、夜10時過ぎに乗っている人は1つの車両に数人くらいで、ガラガラです。
夜遅くまで仕事をしているホワイトカラーの人は自分の車やタクシーで帰宅するか、ブルーカラーの人はバス(地下鉄より路線が多く料金も安い)や徒歩で帰宅するため、日本のように「お酒を飲んでいて遅くなり、急いで満員の終電に乗って帰る会社員」は皆無といってもいいほど、いないのです。
ですから、路上飲みをすること自体もそうですし、路上飲みをして遅くなり、終電を逃して駅前にしゃがみこんでいる若者、というのは、中国人の目にはなかなか理解しがたい、不思議な存在に見えるようです。