発達した台風20号が沖縄の南海上へ
台風19号と20号の同日発生
台風19号が10月29日3時にフィリピンの東海上で発生しました。
また、21時にカロリン諸島で台風20号が発生し、同じ日に2個の台風が発生しました。
10月になってから、同じ日に台風が2個発生するのは、平成24年(2012年)10月1日に、台風19号と20号の発生以来、8年ぶりのことです。
台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、9回目ですので、7~8年に1回の現象です。
また、10月の台風発生数が平年の約2倍の7個となり、これまで最多だった平成25年(2013年)、平成4年(1992年)、昭和59年(1984年)と並んで、最多タイの記録となりました。
令和2年(2020年)は、7月の台風発生数が統計開始後初のゼロとなるなど、7月までは台風の発生が少なかったのですが、8月以降は、発生ペースがあがっています(表)。
台風の発生した経度
令和2年(2020年)10月に発生した7個の台風のうち、10月5日に日本の南で発生した台風14号を除く、6個の台風は、発生した経度が次第に東に移動しています(図1)。
ひょっとしたら、対流活動の活発な領域が東へ移動する「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」がおきているのかもしれません。
「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」は、昭和47年(1972年)にマッデンRoland A. MaddenとジュリアンPaul R. Julianによって発見された、赤道上の風と気圧に40日から50日の周期性があることです。
おもにインド洋で発生する数千キロメートルスケールの巨大雲群が赤道に沿って毎秒5メートル程度の速度で東へ進み、多くは太平洋の日付変更線付近で雲が消滅する現象です。
この現象に伴う対流活動の活発な領域では、熱帯低気圧の発生が促進されるという研究もあります。
少し古い資料ですが、図2は、筆者が調査した10月の台風の平均経路です。
これによると、10月に南シナ海やフィリピンのすぐ東海上で発生した台風は、ほとんどが西進を続けるため、日本への影響はまずないと考えられます。
しかし、フィリピンの東海上からマリアナ近海で発生した台風は、北上してくる可能性がでてきます。
図2の二重丸付近に達した場合は、多くは西進を続けて日本へはほとんど影響しないものが多いとはいえ、中には北上して沖縄へ接近に、本州の南海上を東進する台風もあります。
台風19号の進路予想
フィリピンの東海上にある台風19号は、フィリピン東海上の台風が発達する目安とされる27度以上の暖かい海域を西進し、10月30日の夕方ごろから、くっきりした小さい眼を持っています。
くっきりした小さい眼を持ったということは、台風19号が最大風速が毎秒55メートル(時速198キロ)以上という猛烈な台風に発達していることを示しています(図3)。
今後、台風19号は西進を続け、フィリピンを通って南シナ海に達する見込みです(図4)。
台風19号は、日本には直接の影響はないと思われますが、フィリピンでは大きな災害が懸念されます。
台風20号の進路予想
マリアナ諸島からフィリピンの東海上に進んでいる台風20号も、27度以上の暖かい海域を西進しながら発達する見込みです。
現在は、台風の眼がはっきりしていませんが、今後は非常に強い台風に発達し、眼を持つと思われる予報です(図5)。
まだ先のことですが、台風予報が発表されている11月4日には、暴風警戒域が沖縄県先島諸島のすぐ近くまで達する予報です。
台風20号が先島諸島を離れて通過した場合でも、非常に強い勢力まで発達していますので、沖縄県では、高波やうねりに警戒が必要となります。
日本列島は、大きな移動性高気圧に覆われ、晩秋の晴天となっている所が多いのですが、日本の南海上では、2個の台風があって、まだ夏が残っています(図6)。
令和2年(2020年)の台風シーズンは続いています。
台風の動向、特に台風20号の動向について、最新情報の入手に努めてください。
タイトル画像、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。
図2の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。
図6、表の出典:気象庁ホームページ。