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自然災害で家族と住まいに大きな被害、公的支援制度の役割は?

浅田里花ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)
日本の各地を襲う自然災害、住んでいる地域のリスクを知っておくことが大切です。(提供:アフロ)

◆「ハザードマップ」で地域のリスクを確認

 6月にあった大阪での強い地震の記憶もまだ新しいうちに、西日本では記録的豪雨に襲われ、まだ被害の全容が確認できない状況です。被災された皆さまには心からのお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方々には謹んで哀悼の意を表します。

 日本にかぎらず、どんなに科学や文明が進んだ先進国であっても、私たち人間は自然の猛威の前にはなすすべがありません。国や自治体がさらに防災対策の充実を図ってくれることを期待しますが、生活者ももっと防災意識を持つことが大切です。人間が大自然をコントロールすることはできないという前提に立って、「公」も「個」もそれぞれができる最大の防災対策を講じることでしか、被害を最小限に抑える方法はないでしょう。

 「個」ができることとして、まずは、自分が住んでいる場所の災害リスクを確認することをお勧めします。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」を活用し、住所地を入力して表示してみましょう。洪水、土砂災害、津波のリスクがある地域のほか、主要な活断層帯のある地域や、液状化リスクがわかる明治期の低湿地なども確認できます。

https://disaportal.gsi.go.jp/index.html

 また、各市町村が作成したハザードマップへのリンクもあります。これらは、印刷されたものが自治体の窓口で用意されており、地域の避難所などについても情報が記載されています。高齢の家族がいるご家庭などは、印刷物をトイレなどの壁に貼っておくといいのではないでしょうか。

 今日たまたま区役所に出かけたのですが、総合案内所でハザードマップをもらっている人がいました。担当の方に聞いてみると、もらいに来る人が増えているそう。おそらく全国的に防災意識が高まっているものと思われます。

 ハザードマップから、もし、住んでいる地域に何らかのリスク、たとえば洪水のリスクが確認できたら、注意報や警報が出たときには自分のことだと受け止め、指示に従って危険を回避するようにしましょう。今まで大丈夫だったからといって、今後も大丈夫とは限りません。

◆死亡、重度の障害状態になった場合の支援

 それでも自然災害の被害に見舞われてしまうことはあり得ます。地震や津波、暴風、今回のような大雨による洪水など、大規模な自然災害によって経済的な被害を受けた場合、公的な支援は期待できるのでしょうか。

 まず行われる支援としては、「災害救助法」による1.避難所、応急仮設住宅の設置、2.食品、飲料水の給与、3.被服、寝具等の給与、4.医療、助産、5.被災者の救出、6.住宅の応急修理、7.学用品の給与、8.埋葬、9.死体の捜索及び処理、10.住居またはその周辺の土石等の障害物の除去、があります。これらにかかる経費は、国と都道府県が負担することになっています。避難所で配られる食糧や水、毛布などの支援については、お金の心配をしなくていいのです。

 不運にも身体への被害があった場合、「災害弔慰金の支給等に関する法律」により「災害弔慰金」や「災害障害見舞金」が支援の役割を果たします。「1市町村において住居が5世帯以上滅失した」「都道府県内において災害救助法が適用された市町村が1以上ある」などの大きな自然災害に見舞われた場合に適用され、死亡の場合には「災害弔慰金」、両眼失明・両上肢ひじ関節以上切断・常時要介護状態など心身に重度の障害が残った場合には「災害障害見舞金」が支給されます。

 支給額は市町村(特別区を含む)条例の定める金額で、「災害弔慰金」については生計維持者の死亡の場合は上限が500万円、その他の家族の死亡の場合は250万円となっています。受けとれる人は、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母。そのいずれもいない場合にかぎり、同居あるいは生計を同じくしていた兄弟姉妹も認められます。

 「災害障害見舞金」の支給額は、生計維持者の場合は上限が250万円、その他の家族の場合は125万円。重度の障害になった本人が受け取れます。

◆住まいへの支援は大きくない

 家が倒壊した、土砂に埋まった、水没したなど住まいに被害があった場合の公的支援制度には、「被災者生活再建支援制度」があります。「1市町村で10世帯以上の住宅全壊被害が発生」「1都道府県で100世帯以上の住宅全壊被害が発生」などの災害の場合が対象です。

 その災害により、1.住宅が「全壊」した世帯、2.住宅が半壊または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯、3.災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯、4.住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)に、支援金が支給されます。

 支援金には、「住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)」と、「住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金)」があり、その合計がもらえます。

 ただし、それほど金額は大きくなく、「基礎支援金」が50万円(大規模半壊)か100万円(全壊、解体、長期避難)、「加算支援金」が50万円(公営住宅以外の賃借)、100万円(補修)、200万円(建設・購入)となっています。つまり、家が全壊して建て直す場合であっても、受け取れるのは最大で300万円ということ。家を再建するにはとても足りません。

 家や家財などの私的財産を守るのは自己責任の範疇で、公的な支援はそぐわないとされているため、家を再建できるような給付は期待できません。

 自己責任で守るには、どうしても建物と家財の損害を補償する「火災保険」、「地震保険」への加入が不可欠です。「火災保険」は火災だけでなく、水災や暴風の災害などもカバーすることも忘れないようにしましょう。

ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)

㈱生活設計塾クルー取締役、個人事務所リアサイト代表、東洋大学社会学部 非常勤講師。同志社大学文学部卒業後、大手証券会社、独立系FP会社を経て現職。一人ひとり・家庭ごとに合った資産設計、保障設計、リタイア前後の生活設計等のコンサルティングのほか、新聞・雑誌等への原稿執筆、セミナー講師などを行う。著書に『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えて下さい』、『住宅・教育・老後のお金に強くなる!』、『お金はこうして殖やしなさい』(共著)など。生活を守り続けるにはマネーリテラシーを磨くことが大切。その手伝いとなる情報を発信していきたい。

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