東京都が痴漢撲滅キャンペーンを開始!アクティブ・バイスタンダーの役割とは #NoMoreChikan
長年続いてきた日本の痴漢問題。
近年、本気で痴漢をなくそうと、行政が力を入れ始めている。
日本若者協議会が行なっている痴漢対策の強化を求める署名には、約3万人の賛同が集まっている。
本気の痴漢対策を求めます!来学期からは#NoMoreChikan
https://www.change.org/NoMoreChikan
政府では、女性政策に関する政府の重点方針をまとめた「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」に、「痴漢撲滅パッケージ」(仮称)の策定がはいり、検討が進められている。
関連記事:「痴漢撲滅パッケージ」の令和4年度策定が「女性版骨太の方針2022」に! #NoMoreChikan(室橋祐貴)
令和3年度には、内閣府による痴漢被害に関する実態調査も行われ、6月に結果が公表された。
回答のポイント
〇対象者6,224人のうち1,644人(26.4%)、約4人に1人が何らかの性暴力被害にあったことがあると回答した。
〇性暴力被害の分類別にみると、言葉による性暴力被害が17.8%と最も高く、次いで身体接触を伴う性暴力被害が12.4%、情報ツールを用いた性暴力被害が9.7%と続く。性交を伴う性暴力被害は4.1%となっている。
性交を伴う性暴力被害の特徴
〇加害者として、学校の関係者(教職員、先輩、同級生等)、(元)交際相手、インターネット上で知り合った人、知らない人等を挙げるケースが多い。
〇性暴力被害をどこにも相談をしなかったケースが半数を超え、相談できたケースにおいても相談までに時間を要することが多い。
〇全ての性暴力被害分類の中で最も被害からの回復状況が芳しくない。
身体接触を伴う性暴力被害の特徴
〇まったく知らない人や学校の関係者(教職員、先輩、同級生等)が加害者であることが多く、異性及び社会的地位が上位の者による加害が多い。
〇公共交通機関、路上、学校等で被害にあうケースが多く、1回限りの被害が多い。
〇性暴力被害にあった際の状況として、突然に襲いかかられた、自分に行われていることがよくわからなかった、驚き・恐怖等で体が動かなかった、電車内で逃げられなかった等との回答が多い。
関連記事:痴漢など若年層の性暴力被害に関する実態調査を内閣府が初めて実施。その結果は?(室橋祐貴)
東京都では「東京都男女平等参画推進総合計画」に痴漢対策
一方、東京都でも着々と対策が進んでいる。
令和3年度末に改訂された「東京都男女平等参画推進総合計画」(計画期間:令和4年度から令和8年度まで)には、痴漢対策に取り組む旨を明記。
2022年9月14日には、日本若者協議会が東京都議会に提出した陳情、「都営地下鉄の全路線・全編成への女性専用車両の導入に関する陳情」が、公営企業委員会で審議され、全会派一致で趣旨採択された。
そして、2023年1月18日からは、都営大江戸線に女性専用車両が導入される予定となっている。
2005年に都営新宿線に導入されて以来、都営地下鉄に新たに女性専用車両が導入されるのは、18年ぶりだ。
受験シーズンに合わせて、東京都では、1月11日から3月10日まで痴漢撲滅キャンペーンが実施される。
キャンペーン内容は、新たな痴漢撲滅ポスターの掲出、ホームページにおいて「都営交通の痴漢対策の取組」や「痴漢を目撃したときの3つの行動」を掲載。
痴漢対策動画を新たに作成し、駅改札や車内の液晶ポスターで放映するなどの取り組みを行う。
新しいポスターは、東京都立大学の学生と意見交換を行い、その中の意見を取り入れて作成したという。
これまで、「痴漢は犯罪です」「許さない」というような加害者向けのポスターは多くあったが、第三者が具体的にかつ容易に取れる行動をここまで明確に示したポスターは初めてかもしれない。
アクティブ・バイスタンダー(行動する第三者)の役割
いじめ・性暴力・ハラスメントなどに遭遇したときに、積極的にアクションできる第三者のことを「アクティブ・バイスタンダー」という。
痴漢被害であれば、上記ポスターにあるような、声がけや通報などの行動がそれにあたる。
愛知県鉄道警察隊の痴漢・盗撮撃退パンフレットでは、第三者からの声掛けで、痴漢は100%犯行を断念すると書かれている。
これまでは、被害者に自衛を求めたり、加害者に対して犯罪行為であると働きかけるポスターが多かったが、性暴力がしにくい社会にしていくためには、アクティブ・バイスタンダーが増えることが重要となる。
アクティブ・バイスタンダーができることとしては、「5D(Distract:注意をそらす、Delegate:第三者に助けを求める、Document:証拠を残す、Delay:後からの対応、Direct:直接介入する)」がよく知られている。
Distract:注意をそらす
被害にあっている人の知人のふりをしたり、関係ない話を始めることで、事件が起きるのを防いだり、加害者の邪魔をしたりする。
Delegate:第三者に助けを求める
自分で率先して行動を起こすことが難しいとき、警察や友人など、自分以外の第三者に助けや周囲に協力を求める。
Document:証拠を残す
その場を撮影・録音、メモを書くなどして、時間や場所が特定できるよう証拠を残す。
Delay:後からの対応
その場で行動を起こせなくても、後から被害者に何かサポートができることがないかと声をかけ、気持ちを聞いて寄り添うなどの行動をすること。
Direct:直接介入する
直接介入して加害者に注意をする方法。ただ、加害者の敵意がこちら側に向いてしまう可能性があるので、バイスタンダーの安全が確保されていることを確認することが大切。
他にも、再犯率を減らしていくための加害者治療や、そもそも加害者を生まないための包括的性教育の実施など、やるべきことは多くあるが、着実に一歩ずつ改善することで、痴漢を撲滅させることも可能であろう。
日本若者協議会が提言している痴漢対策
(1)痴漢事件の実態調査を行う
現在痴漢についての十分な実態調査が行われていません。そのため、痴漢についての実態調査を行うことを求めます。
(2)痴漢報告後のプロセスを見直す
痴漢を報告した後のプロセスは被害者の時間や労力が費やされます。それに加え、被害者が被害現場で写真に写らないといけなかったり、取り調べで被害者の信用性を問われたりするなど、痴漢報告後のプロセスは二次被害となっている部分があります。そのため、痴漢報告後のプロセスを見直すとともに一般人にプロセスを公開することを求めます。
(3)ワンストップ支援センターの増設と周知を行う
日本の各都道府県には性暴力や性犯罪について電話相談ができるワンストップ支援センターがありますが、この施設は十分認知されていないため、ワンストップ支援センターの周知に力を入れてほしいです。また、国連の規定では人口5万人あたり一箇所の性犯罪・性暴力被害者支援センターを必要としていますが、日本ではセンターの数が足りていません。そのため、ワンストップ支援センターの数を増やすことを求めます。
(4)痴漢事件の迷惑防止条例での取り締まりを見直す
痴漢被害は各都道府県の迷惑防止条例または強制わいせつ罪によって取り締まられていますが、二つの境界が曖昧なのに加え迷惑防止条例は各都道府県によって異なるため、取り締まりや統計が統一していません。他にも迷惑防止条例で取り締まる場合の罰則が軽く、迷惑防止条例で取り締まられる場合は加害者が性犯罪再発防止プログラムを受講できないことが問題としてあげられます。そのため、執行猶予を含む罰金刑の段階で加害者に治療命令を出すなど、迷惑防止条例での対応を見直すことを求めます。また、実際は被害者にトラウマを残すなど重い性犯罪であるにもかかわらず、メディアに娯楽として消費されてきた背景から、「痴漢」という名称が軽い印象を与えるため、現在盗撮が「撮影罪」として新たに創設することを検討されているように、痴漢を「電車内性犯罪」に変えることを求めます。
(5)性犯罪についての充実した教育を行う
痴漢の被害にあった人からは「何をすればいいのかわからなかった」という声が多くあげられます。加害者を生まないためにも、被害者を生まないためにも、性犯罪の教育が必要です。痴漢にあったらどうすればいいか、痴漢を目撃したらどうすればいいかなど、痴漢を含めた性犯罪の教育を教育現場で行うことを求めます。
(6)学校での痴漢ルールを作成する
通学中に痴漢の被害に遭ったことによって学校に遅刻した場合、被害者が遅刻や欠席扱いになるかどうかは各学校の判断によって異なります。また、教師に痴漢の相談をしたら不適切な発言が返ってきた体験をした被害者もいました。そのため、痴漢被害が理由での遅刻・欠席の免除や痴漢について相談できる場所を用意するなど、学校での痴漢に対するルールを作成することを求めます。
(7)痴漢の加害者が早期に長期で再発防止プログラムを受けられるようにする
痴漢は再犯率が多く、加害者は痴漢依存症のケースが多いため、再犯防止プログラムを早い段階から長期で受ける必要があります。しかし現状は、痴漢の加害者の多くは捕まっても再犯防止プログラムを受けずに痴漢を繰り返しています。実刑となった加害者が早期に長期で性犯罪再発防止指導R3をしっかりと受けられるようにすることを求めます。
(8)女性専用車両を増やす
女性専用車両に乗らないと安心して目的地まで行けない女性が多数いる中、女性専用車両の数が少なく、一握りの車線にしか設置されていません。女性の安心した交通移動のために女性専用列車の増設を求めます。また防犯カメラの増設も求めます。現在一部鉄道会社等でアプリの開発が進んでいますが、電車内で被害にあった際に、被害者がスマホで通報したら「*両目から痴漢被害の通報がありました」といったアナウンスを車内で行うようして欲しいです。
(9)省庁横断型の連絡協議会の設置
痴漢の問題は法務省、警察庁、国土交通省、文部科学省など様々な省庁に担当部署がまたがっており、また民間の鉄道会社などとの連携も欠かせません。そのため、関係省庁や民間企業などが連携し、痴漢による性暴力をなくすための取り組みを進める連絡協議会の設置を求めます。
(10)性被害を受けた時の対応をまとめた資料(学校安全参考資料)を各家庭に配る
現状、痴漢被害を受けた時に、友人、母親等に話をして「私の代わりにたくさん怒ってくれて救われた」「一緒に警察に行ってくれた」という肯定的な経験になっている人は少なく、その多くが「どうすることもできないから忘れろ」「よくあることだから諦めろ」と言われたり、「触れられるうちが華」「尻ぐらいいいだろ」「その程度で騒ぐな」など軽視、矮小化されたり、嘲笑されたりしています。こうした現状を踏まえると、家族の理解を深める必要や、家庭で相談しやすくする施策が必要です。しかし、文科省が作成している「文部科学省×学校安全」というサイトや「生命の安全教育」教材には、電車やバス内の痴漢犯罪に関する具体的な対応策等については掲載されていません。そのため、性被害を受けた時にどうすればいいのかをまとめた資料を上記サイトや教材に掲載した上で、学校を通じて各家庭に配布することを求めます。