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【浦和レッズ】アジア主要タイトル完全制覇のGK西川周作が諦めていない場所

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
第98回 天皇杯で優勝し、歓喜する西川周作(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

■正守護神としてリーグ、リーグカップ、天皇杯、ACLを制覇

 2018年12月9日は西川周作にとって記念すべき1日となった。浦和レッズはこの日、ベガルタ仙台との天皇杯決勝を1-0で制し、12大会ぶり3度目(前身の三菱重工時代を含めると7度目)の天皇杯優勝を果たした。

 大分トリニータ時代の2008年にヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)優勝を飾り、サンフレッチェ広島で2012、2013年にリーグ連覇を達成した。

 浦和に来てからは2016年にルヴァンカップ、2017年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)、そして2018年度天皇杯と、3年連続でビッグタイトルを獲得。2018年はアジア主要タイトル“コンプリート”を果たすメモリアルイヤーとなったのだ。

「天皇杯は個人的には獲れていませんでしたから、うれしいですね。チームとして毎年何かしらのタイトルを獲っているということは、レッズの強みだと思います」

 天皇杯準決勝と決勝の前、西川は特別なパワーを授かったことを感じていた。オリヴェイラ監督の呼びかけに応じて、大原での前日トレーニングに大勢のファン・サポーターが足を運び、選手を鼓舞した。数々の横断幕が所狭しと掲げられ、腹の底からのエールが響き渡る様子は、試合のボルテージに匹敵するほどだった。

「レッズに来てあんな光景を見たのは初めて。サポーターの皆さんが雰囲気を作ってくれたことで、僕たちはピッチの上で結果を残さなければならないという、良いプレッシャーを与えてもらいました」

■浦和レッズを丸ごと知ろうとした

 2014年1月。リーグ連覇を達成したばかりの広島から浦和に完全移籍で加入した。大分県で生まれ育ち、広島県での4年間を経て埼玉県に居を移した。

 サッカーに集中しているとはいえ、環境の変化は明らか。そこで西川がとった行動は「浦和レッズを丸ごと知る」ということだった。特に、2014年に前編、2015年に後編が公開された映画『We are REDS!THE MOVIE』を劇場で何度も鑑賞した。

「レッズでプレーするからにはチームのこともクラブのこともファン・サポーターのことも知りたいですからね。熱さがすごく伝わってきて、見て本当に良かった」

 こうして迎えた浦和での5年目。熱いサポーターの後押しもあって2018年の天皇杯は6試合1失点で頂点に立った。西川は天皇杯決勝の後、このように話した。

「ホームの埼玉スタジアムで優勝して来季のACLの舞台に戻ることができて、うれしい」

■衰えぬ、日本代表への思い

 2019年1月には日本代表が出場するアジアカップがUAEで開催された。2011年カタール大会、2015年オーストラリア大会と、2大会連続で出場していた西川は招集されなかった。

 西川が抱く日本代表への思い、2014年ブラジル大会に招集されたもののまだピッチに立ったことのないワールドカップへの思いは、人一倍強い。2019年は自身にとって浦和で初となるリーグタイトルと、ACL再制覇が大きなターゲット。特にリーグ優勝を達成すれば、浦和での主要タイトル完全制覇となる。それらに向かってハイパフォーマンスを続けていくことで再び日本代表へ返り咲くという情熱も燃やし続けている。

 2019年の目標を西川に尋ねると、明確な答えが返ってきた。

ベストイレブンに入る。フル出場で出る。そのためにキャンプはまずケガをしない。そのためには小さなところにこだわっていく。そういう意識でやります」

 2012年、2013年に広島でリーグ連覇を達成したときの指揮官である森保一監督率いる日本代表への思いにも言及した。

森保さんとまた一緒にやりたい。全然諦めていません

 口調に熱が帯びる。日本代表に再び呼ばれるためには何が必要か。

「まずは目に見える結果を出し続けることが一番近道だと思う」と西川は言う。そして、昨年12月のJリーグアウォーズで、森保監督から「天皇杯を無失点で終わって良かったな」と言われたことを振り返りながら、「GKとしてゼロの試合を多くすれば評価されると思う。ゼロなら勝ちか引き分けですから。森保さんは、GKの役割として、そこを一番求めているのではないかと思います」と続けた。

 無失点でチームを勝利に導き、タイトルをもたらす。そして、日の丸のユニフォームに袖を通す。それは飽くなき向上心を持つ浦和の背番号1にとって、サッカー人生の目標の両輪。ぶれない心がきょうも西川を輝かせる。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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